環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第1章>第3節 オゾン層保護対策等

第3節 オゾン層保護対策等

1 国際的な枠組みの下での取組

オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、オゾン層保護法を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施等を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金等を使用した二国間協力事業、開発途上国の関係者を集めたフロン等の対策に関する関係国会議等を実施しました。

国際会議等において、ノンフロン技術やフロン排出抑制法など、日本の技術・制度・取組を紹介しました。

2 オゾン層破壊物質の排出の抑制

我が国では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-1)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。HCFCについては2020年をもって生産・消費が全廃されることとなっています。

図1-3-1 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理等の適正な管理を進めています。

3 フロン類の管理の適正化

我が国では、主要なオゾン層破壊物質の生産は、大幅に削減されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充填されたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFCも同様に協力な温室効果ガスとして京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン排出抑制法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、破壊業者等により適正処理されることとなっています。2017年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-1図1-3-2のとおりです。

表1-3-1 家電リサイクル法に基づく再商品化によるフロン類の回収量・破壊量(2017年度)
図1-3-2 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(2017年度)

フロン排出抑制法には、冷媒フロン類に関して、業務用冷凍空調機器の使用時漏えい対策、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が規定されています。これらに基づき、都道府県の法施行強化、関係省庁・関係業界団体による周知など、フロン類の管理の適正化について、一層の徹底を図っています。

しかしながら、機器廃棄時の冷媒回収率は、10年以上3割程度に低迷しており、直近でも4割弱に止まっています。こうした状況を踏まえ、産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会フロン類等対策WG及び中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会の合同会議において、廃棄時回収率の向上対策について議論が行われ、2019年2月に「フロン類の廃棄時回収率向上に向けた対策の方向性について」が取りまとめられました。同報告書を踏まえ、2019年3月にフロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律の一部を改正する法律案を国会に提出しました。