第3章 循環型社会の形成に向けた各主体の取組


第1節 国民、民間団体等の取組事例


1.先進的な取組を行っている民間団体の表彰

現在、様々な取組が進められていますが、ここでは、NGO等民間団体レベルにおける取組の例を見てみましょう。
民間団体のNPO持続可能な社会をつくる元気ネット(元気なごみ仲間の会)は、平成13年度から「市民が創る環境のまち『元気大賞』」を創設し、全国各地域で先進な取組を行っている団体を表彰しています。
平成17年度に表彰された先進的な取組の例は以下のとおりです。
1) 「環境」をテーマにした、愛・地球博へのアクセスとして、藤が丘駅より会場までのおよそ7Kmを自転車という交通手段の有効性をアピール。レンタサイクルステーションの設置や自転車マップ愛・地球博バージョンの作成を行い、二酸化炭素の削減と、自転車乗りの視点でまちづくりを進める「市民・自転車フォーラム」
2) 平成12年より、横浜市内の小学生を対象に、リサイクル・環境問題について体験したことや考えたことを絵日記として表現する「環境絵日記」を募集して、その表彰式と子どもたちによる環境会議を開催。小学生に環境問題に対する動機付けを行う「横浜市資源リサイクル事業協同組合」
3) 学校や地域でのシンポジウムや勉強会を継続的に開催し、海から食卓までを一つの流れとしてとらえる活動。女性漁業者から浜の現状や浜を守る活動などの話を聞いたり、持参の魚、貝、海藻を調理して味わうなど「浜のかあさんと語ろう会」の実施や、小学生を対象とした、こどもとサカナ体験ツアー、こども・海とサカナのフォーラム、海彦クラブレターの制作など子ども食環境プログラムを実施し、食卓から地球を見直すサイクルの構築と子ども達への魚教育・都市と漁村を結ぶ活動を行っている「海の幸に感謝する会『ウーマンズフォーラム魚』」
4) 広島県内のプレジャーボート実態調査の実施、広島港湾地区内緑地のごみの放置など、環境実態の巡視・美化・清掃活動の実施。一般家庭から排出される、生ごみ及び木質系廃棄物の分別回収を行いコンポスト化(堆肥化)して無料配布を行いつつ、更に生ごみ+木質系廃棄物のメタン発酵によるエネルギー捕集までを行う計画の策定、児童・生徒に対してソーラーカーを使用した環境学習会の開催。瀬戸内海地域を主体として行政、事業者、住民の架け橋となり、循環型社会の実現化及び拡大・拡充普及啓発を行う「特定非営利活動法人広島県環境保全創生委員会」
5) 旅館から発生する生ごみを肥料(堆肥)にして農地還元し、生産された農産物は食材として旅館で利用するとともに、生ごみから養殖漁業用飼料を作る研究を推進。また、コージェネレーション発電機を導入し、館内総電力使用料の約70%を発電、発電の際、排出される排ガスの熱を利用し給湯。さらに、厨房から出る廃天ぷら油を精製して、軽油代替燃料を送迎バスの燃料として利用し、地域内での循環システムの構築を目指す「戸田家」

2.環境省「循環型社会形成推進基本計画で期待されるNPO・NGOの取組についてのアンケート」

1) 環境保全活動を行うNPO・NGOを対象(メールアドレスが確認できる1,614団体を対象に、平成17年9月9日~9月25日に実施し、398団体(回答率25%)の回答。)に、「循環型社会形成推進基本計画で期待されるNPO・NGOの取組についてのアンケート」を実施しました。これによれば、「循環型社会形成に関する活動を行っている」と答えた団体は78%に達し、その活動内容は、「環境教育や環境学習」(52%)、「クリーンアップなど美化清掃活動」(28%)、「調査研究」、「情報の提供・普及啓発」(共に26%)となっています。

3-1-1図	NPO・NGOの循環型社会の形成に関する活動の有無

3-1-2図	循環型社会の形成に関するNPO・NGOの活動内容

2) 循環型社会形成の活動を行っている団体で活動の連携相手としては、「地方公共団体」(76%)、「NGO・NPO」(75%)、「事業者・事業者団体」(57%)次いで「有識者・専門家」(56%)となっています。

3-1-3図	循環型社会の形成に関する活動でのNPO・NGOの連携相手

3) 循環型社会形成に関する活動を充実させるために必要なものとして、「活動資金の確保」(60%)、「スタッフの確保」(46%)を揚げており、国に期待する支援策としても「資金の援助」(57%)、「情報交換の場や機会の提供」(37%)、「資金、拠点、人材等に関する情報整備と情報提供」(34%)となっています。

3-1-4図	循環型社会の形成に関する活動を充実させるために必要なもの

これらの調査からは、NPO・NGOは、循環型社会形成のための地域の環境保全の実践活動や環境教育の担い手として大きな役割を果たすことが期待されているところですが、必要な情報が十分に伝達、活用されているとは言い難い状況にあります。こうした情報は、様々な主体との連携の基本となるものであり、関係主体はNPO・NGOの実情をよく把握しながらきめ細かな情報発信を行う必要があることが課題となっています。

コラム 18 福祉施設との協働による3Rの取組

全国各地で様々な3Rの取組が行われていますが、ここでは福祉施設との協働による取組例を紹介します。
○山形県新庄市における食品トレーリサイクル事業
スーパーマーケットの店頭で使用済みトレーを回収し、同じ容器として再生するシステムで、トレーの回収から運搬、再生には福祉施設が大きな役割を果たしています。
スーパーの店頭で回収されたトレーは、心身障害者小規模作業所によって収集・分別され、同市内にある障害者授産施設に運ばれます。同施設では、再生トレー製造原料である再生ペレットに加工されます。この再生ペレットは、特殊なリサイクルトレーを製造しているプラスチック製食品容器製造会社に全量買い取られ、表面のフィルムをはがして汚れを除去し、本体を焼却することなくリサイクルできる特殊なトレーとして再生されます。この特殊なトレーが市内のスーパーマーケットなどに出荷され、循環のサイクルが完成します。新庄市は市民への普及啓発に当たるとともに、関係者間の連絡調整や指導・助言等を行っています。

コラム18	トレイ分別の様子


コラム18	ペレット加工の工程

○福島県いわき市における古着リサイクル事業
スーパーマーケットなどに設置されたリサイクルボックスを通じて回収された古着を直営店等で販売したり、障害者小規模作業所と連携してウエス(工業用ぞうきん)などに再生加工する取組で、NPO法人が行っている活動です。
そのまま古着として販売することが難しい製品を同法人の関連施設である障害者小規模作業所において、工場用の油ふきに使うウエスに加工したり、ウール製品をリサイクルしやすい状態に下処理したうえで、リサイクル工場に売り渡すなどの取組を行っています。
○鳥取県米子市を中心としたペットボトルキャップのリサイクル事業
平成17年度のエコ・コミュニティ事業のひとつです。ペットボトルのキャップを県内の学校や公民館などの公共施設等を通じて、廃プラスチック再生品製造販売会社が回収し、社会福祉法人が選別・洗浄作業を実施します。選別されたキャップを同社が公園のベンチなどの景観製品に再生します。


コラム 19 地域のお祭りで3R!

町内会や文化祭等で、たくさんの露店や屋台等がでていますと、ついつい焼きそばとかおでんとかに手が出てしまいます。でもその店の横には大量に使い捨て容器の山、という光景を目にしたことがありませんか。確かに自分たちで運営するとしたら食器とかコップを洗うのは面倒なのはわかりますが、ごみが大量にでて、折角の楽しいイベントが台無しになりかねません。
今、各地のお祭りやイベントでは、リユースカップやリユース食器を使った取組が進んでいます。例えばリユースカップはポリプロピレン製のものが一般的で洗浄することで何度でも使える容器です。
新潟県での例を紹介しましょう。サッカーチームのアルビレックス新潟では、NGO、チーム、スポンサー企業、地方公共団体の多くの関係者が一体となって、ホームである新潟スタジアムにおけるリユースカップの使用を中心としたごみ削減の取組を行っています。スタジアムにおけるごみの削減はイベントでは使い捨て容器が当たり前という常識を変える一助となりました。県内各地ではリユースカップなどを使ったイベントが拡がっています。
「蒲原まつり」は新潟市内の「蒲原神社」の境内でたくさんの露店がたち並ぶ昔からのお祭りです。昨年6月のお祭りでは、地元PTAが「ごみの持ち帰りキャンペーン」を呼びかけるとともに、生ビール販売の出店者が、リユースカップを使用しました。
平成17年1月、新発田市で開催された「城下町しばた雑煮合戦」では、13,000食の雑煮をリサイクル可能な特殊なトレー(表面のフィルムをはがして汚れを除去し、本体を焼却することなくリサイクルできるトレー)で販売しました。

コラム19	しばた雑煮合戦:リユース食器のフィルムはがし風景

昨年11月行われた「十日町地域震災復興記念ライブ」では、アフリカンパーカッションのライブをメインに屋台等がでたイベントで、飲食店舗の約1/3がリユース食器を使用しました。

コラム19	十日町地域震災復興記念ライブ:リユース食器洗浄風景

これらは一例ですが、全国各地でNPOを中心にリユースカップ等を使った3Rの取組が行われています。リユースカップ等の導入には、食べ残しの処理や洗浄などの手間がどうしてもかかりますが、ごみの出ないイベントは主催者や来場者にとっても気持ちのいいものだと気づかされるばかりでなく、地域の各主体が協力してその実情にあったごみ削減を考えていく良い機会になると思います。



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