第3節 循環型社会の形成と地球環境問題


1. 廃棄物と地球温暖化対策


(1) 廃棄物と地球温暖化
地球温暖化の原因となる温室効果ガスは、私たちの日常生活や様々な事業活動に伴って排出されます。製品の製造にかかわる産業部門、流通にかかわる運輸部門、製品を使用する業務その他・家庭部門、焼却等を行う廃棄物部門等において二酸化炭素等の温室効果ガスが排出されます。
廃棄物分野においては、廃プラスチックや廃油といった化石系資源に由来する廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出が大きな割合を占めていますが、その他にも、食品廃棄物、紙類等のバイオマス系廃棄物を新エネルギーとして利活用したり焼却処理したりすることなく直接埋め立てた場合、二酸化炭素よりも地球温暖化係数の大きなメタンが発生します。また、燃焼温度の低い焼却炉からは一酸化二窒素が発生します。
平成16年度の廃棄物分野における温室効果ガス排出量は3,590万t(二酸化炭素換算)で、日本の温室効果ガス総排出量(同13.6億t)の2.6%を占めています。

(2) 廃棄物等に起因する温室効果ガスの排出削減
温室効果ガスの排出量を削減するためには、各部門間の関係を踏まえて、効果的な対策を立案していく必要があります。廃棄物の発生抑制や再使用、再生利用及び熱回収といった循環資源の利用を促進することは、一般に化石系資源の消費量の減少及び廃棄物の発生量の減少をもたらすものと言えます(2-3-1図)。
最も効果が大きいのは、発生抑制です。廃棄物発生量の減少は、焼却・埋立てに伴う温室効果ガスの発生量を減少させることに寄与します。再使用は、製品として使用される期間が延長するので、やはり、大きな効果が期待できます。
再生利用の推進は、焼却される廃棄物や直接埋め立てられる廃棄物の量を減らすとともに、化石系資源の新たな利用が再生資源に置き換えられることによって地球温暖化対策に貢献します。特に再生利用に伴って新たな化石系資源の節約が見込まれる場合や、廃アルミニウムの再精錬のようにエネルギー消費量が減少する場合に大きな効果が見込まれます。また、高炉スラグをセメント原料として再生利用する場合は資源が節約され、石灰の分解による二酸化炭素発生を抑制すると共に、セメント製造時のエネルギー消費量が減少され、大きな効果が得られます。ほかには廃プラスチックをコークスの代替として製鉄用の高炉の還元剤として利用することも、一般的には効果があるものと考えられます。家畜排せつ物等のたい肥化や新エネルギーとしての利活用は、焼却量や直接埋立量を削減することから、廃棄物部門の地球温暖化対策としても有効ですが、こうしたバイオマス系廃棄物をたい肥化して肥料として使用し、農地に有機物として蓄積する炭素量を増加させることによって、農地土壌から発生する二酸化炭素排出量を削減する効果も期待されています。
焼却時に発電等を行う熱回収は、燃やさざるを得ない廃棄物の排熱を有効利用する限りにおいては、その推進により、発電等に必要な重油、石炭等の化石燃料の消費量の削減に寄与します。
このように、資源が廃棄物となることを抑制し、廃棄物になったものは、再使用・再生利用により、余すことなく利用し、それでもなお、焼却処理や埋立処分をせざるを得ない可燃性の廃棄物については、その廃棄物が持っているエネルギーを有効に利用することが地球温暖化対策の面でも重要です。

2-3-1図	廃棄物の排出量削減と温室効果ガス排出量の関係


(3) 地球温暖化対策における廃棄物の取扱い
地球温暖化対策のための国際枠組である京都議定書が平成17年2月16日に発効したことを受け、平成17年4月28日、「京都議定書目標達成計画」が閣議決定されました。同計画では、廃棄物の発生抑制・再使用・再生利用の推進等によって、廃棄物の焼却や直接埋立て等に起因する温室効果ガスを、平成22年には約610万t(二酸化炭素換算)削減することを見込んでいます。このほか、同計画では新エネルギー対策として、廃棄物熱利用の促進や廃棄物発電の導入促進等の措置を講じることとしているほか、「バイオマス・ニッポン総合戦略」と連携し、バイオマス・廃棄物の熱利用を促進する措置を講じることとしています。
具体的には、太陽光や風力などの新エネルギー発電・熱利用設備は今後とも着実に整備していく必要がありますが、新エネルギーのうち廃棄物に係る発電・熱利用設備の設置及び利用が行われる場合には、循環型社会基本法の基本原則である廃棄物等の発生抑制・再使用・再生利用の進展が阻害されないように行う必要があります。
平成15年度からは、民間事業者が行う地球温暖化対策に資する高効率の廃棄物発電やバイオマス発電・熱利用施設の整備を促進させるため、当該施設の整備に必要な追加費用に対して支援を行っています。また、輸送用燃料などバイオマスエネルギーの利用促進、地域のバイオマスを総合的に利活用するバイオマスタウン構想を加速化する観点等から、「バイオマス・ニッポン総合戦略」を見直し、平成18年3月31日に新たに閣議決定しました。

2. 国際的な取組

平成16年6月のG8シーアイランドサミット(米国)での合意を受け、平成17年4月に「3Rイニシアティブ閣僚会合」(環境大臣主催)が東京で開催され、国際協力の下、3Rの世界的な推進のための取組を一層充実・強化していくことが合意されました。平成17年7月のG8グレンイーグルズサミット(英国)において、小泉総理は3Rを国際的に推進していく旨を発言しました。
我が国は、3Rイニシアティブ閣僚会合において、「3Rを通じた循環型社会の構築を国際的に推進するための日本の行動計画(通称:ゴミゼロ国際化行動計画)」を発表しました。この計画に基づいて、アジア地域の途上国における3R計画/ビジョンの策定支援に着手し、事前調査等を実施しました。
有害廃棄物等の輸出入等の規制を適切に実施するため、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(バーゼル条約)の国内対応法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)の的確かつ円滑な施行を推進しています。そのほか廃棄物処理法の適切な施行及び運用により、廃棄物の輸出入の適正な管理を行っています。
また、有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークを活用し、参加国間で各国の関係制度や不適正事案等に関する活発な情報交換を行っています。さらに、アジア太平洋地域のE-wasteを環境上適正に管理するため、平成17年11月に東京で開催されたワークショップにおいて開始されたバーゼル条約締約国会合が進めるプロジェクトについて、支援を行っています。
また、中央環境審議会において国際循環型社会形成と環境保全に関する専門委員会中間報告が取りまとめられるとともに、国際的な資源循環の在り方について、産業構造審議会等において検討が行われている他、開発途上国の持続可能な発展を支援するために、政府開発援助(ODA)により廃棄物管理に係るマスタープランの作成やごみの分別収集、最終処分場の安全閉鎖など、循環型社会の形成に資する様々な技術協力等を実施しています。
さらに、OECD(経済協力開発機構)で行われている物質フローやEPR(拡大生産者責任)についての検討に積極的に参画するなど、国際機関との連携も進めています。
なお、OECDが取りまとめた各国の廃棄物の発生量の1993年以降最新のデータは2-3-1表のとおりです。

2-3-1表	各国の部門別廃棄物発生量



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