コラム 3 ごみの排出量に係る政府の2つの目標
我々が普段何気なく使っている「ごみの排出量」という言葉。これを正確に定義すると以下のとおりとなります。 ■ごみ排出量:「計画収集量」+「直接搬入量」+「集団回収量」 ■1人1日当たりのごみ排出量:「ごみ総排出量」/「総人口」/365 (注) 計画収集量:市町村、委託業者又は許可業者が、一般廃棄物処理計画に従って、収集したごみ(し尿を除く一般廃棄物。以下同じ)の量 直接搬入量:市町村等の処理施設に事業者等が直接搬入したごみの量 集団回収量:自治会等によって行われた資源ごみの集団回収の量(市町村が用具の貸出、補助金の交付などにより関与したものに限る。) この定義に従って、政府ではごみの排出量に関する2つの目標を掲げ、その達成に鋭意取り組んでいます。 1つ目の目標は、循環型社会形成推進基本法に基づく「循環型社会形成推進基本計画(平成15年3月閣議決定)」に定められた目標です。 本計画では、1人1日当たりに家庭から排出するごみの量及び1日当たりに事業所から排出するごみの量(ごみの排出量:ただし資源回収される物を除く)を平成22年度に平成12年度比で約20%減とすることが目標とされています。 1人1日当たりに家庭から排出するごみの量は、平成12年度に平均約630gであることから、平成22年度に平均約504gにすることが目標となります。 同様に、1日当たりに事業所から排出するごみの量は、平成12年度に平均約10kgであることから、平成22年度に平均約8kgにすることが目標となります。 2つ目の目標は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針(平成13年5月環境省告示)」に定められた目標です。 本方針では、「一般廃棄物については、平成9年度に対し、平成22年度において排出量を約5%削減」することとされています。具体的には、平成22年度の一般廃棄物の排出量の目標は約4,900万tとなります。 本文で述べたように、ごみの排出量に関して2つの政府目標があるのはなぜでしょうか。 廃棄物処理基本方針の目標は、いわゆる「マクロ」な目標です。これは我が国全体で見たときのごみの排出量に着目したものです。一方、循環型社会形成推進基本計画における減量化の目標は、いわゆる「ミクロ」な目標です。つまり、普段生活している住民一人ひとりの視点から策定したものです。 特に一般廃棄物の排出量の抑制については、事業者等の責任はもちろんのこと、我々国民一人ひとりが高い意識を持って積極的に取り組んでいくことが重要です。そのため、循環型社会形成推進基本計画における目標では、排出量の目標を国民一人ひとりが「自分の問題」として考えることができるように、国全体の目標を国民一人ひとりや事業者ベースで換算しています。 したがって、2つの目標は、目標の対象は異なりますが、根本の削減目標量は同じになっています。一人ひとりが自らに課せられた排出量の目標を達成することによって、我が国全体の排出量の目標達成が実現されるのです。 |
コラム 4 ごみ処理の有料化事例
青梅市では、ごみ収集の有料化後、一時減ったごみの量が、また増加しています。一番少ない平成11年度の774gまで、再度100gのごみの減量化を目指して、ごみを減らすこと(リデュース)、ごみになる物は断ること(リフューズ)、物を繰りかえし使うこと(リユース)、そして最後にどうしても使えなくなったらリサイクルするという“ごみ減量の4R”への協力を呼びかけるなど「ごみ減量チャレンジ100」を実施しています。 日野市でも、ごみの有料化後に半減したごみの量が、少しずつ増加しています。特に、不燃ごみの1人当たりの量は、改革後3年目は1年目と比べると13%も増加しています。このため、不燃ごみの中で8割近く(容積率)を占めるプラスチック製の容器・包装類に対する分別収集のモデル実験を一部地域を対象として実施しています。この実験の結果をもとに、プラスチック容器の分別収集を進めるべきかどうかを検討しています。 ![]() ![]() ![]() |
コラム 5 韓国の一回きり製品規制の制度について
1994年、韓国では、過剰包装に対する規制、生ごみリサイクルの義務化、家庭ごみの有料化などとともに、一回用品の使用を規制する「資源の節約と再活用の促進に関する法律」が施行されました。「一回用品」とは、日本で使い捨て用品と呼ばれているもののことで、具体的には、ファストフード店やレストラン等のコップ、皿、割りばし、スプーンや、ホテル等のひげ剃り、歯ブラシ、シャンプーなどが規制の対象となっています。 韓国では、1980年代に入って、急速な経済成長とともに、ごみの適正な処理が深刻な社会問題になってきました。それまで、韓国のごみは8割近くが埋め立て処分されていましたが、既存埋立地のひっ迫、有害物質の流出といった環境汚染が深刻となったため、1990年代に入って、韓国政府は焼却方式の導入を進めようとしました。しかし、住民らの激しい反対運動もあり、焼却施設の建設も困難な状況となったため、韓国政府は政策的なごみの減量化に本格的に取り組むこととなったのです。 当初は一回用品の規制対象が、規模や業種を基準に一部の事業者に限定されていたこと、また、規制内容が一回製品使用の自粛程度の弱い措置にとどまったこと等から期待されていたほどの環境保全の効果を上げることができませんでした。そのため、韓国環境省は何度も法改正を行い、対象事業者を次第に拡大し、規制内容を強化してきました。 また、こういった行政の取組と併せて、企業やNGOもごみの減量化に積極的に取り組んでいます。1997年、ごみ問題に取り組んでいる270もの市民団体が、共に活動を行うために「ごみ問題解決のための全国市民協議会(Korean Zero Waste Movement Network,(KZWMN))」を設立しました。デパート、スーパーマーケットなどの流通業界は、KZWMNの働きかけで2002年5月、23社と韓国環境省の間で「一回用品使用削減のための自発的実践宣言」を結び、これまで法律で20ウォン(約2円)だった一回用プラスチック袋の価格を50ウォン(約5円)とすること、マイバッグ持参を促進するために、現金割引、クーポン提供等の優遇措置を提供すること等の取組を行っています。さらに、2002年10月には、KZWMNのコーディネートにより、ファストフード7社、コーヒーショップチェーン24社と環境省の間で「一回用品使用削減のための自発的協約」が結ばれ、2003年1月より全ての店舗でテイクアウトの一回用コップ等にデポジット(ファストフードは100ウォン(約10円)、コーヒーショップは50ウォン(約5円))を課すこと、店内飲食は一回用品から多回用品(リユースできる用品)に切り替える(ファストフードは100坪以上、コーヒーショップは50坪以上の店舗で必須)こととされています。KZWMNはこれらの取組の履行状況について、ほぼ3か月ごとに大規模な調査を行い監視しています。 このような韓国での「一回用品」の取組については、一般市民の環境意識よりも企業や、制度が先行してしているといった問題点も指摘されていますが、ごみの処分について、安易な埋め立てから脱却し、行政・企業・NGOが協働でごみの減量を進めていく韓国の取組は、循環型社会の構築を目指す日本にもおおいに参考となるでしょう。 |
コラム 6 ボトル to ボトル
食品用として使用したペットボトルをリサイクルして再び食品用ペットボトルとして使用する完全循環型リサイクルシステムのことをボトルtoボトル(B to B)と呼びます。使用済みのペットボトルは従来、不純物が混じるため、食品用のペットボトルには使用できず、衣料など別の製品にしかリサイクルできませんでした。 ペットボトルを化学的に分解し、石油から作った化合物と同純度の原料に精製し直すことにより、障害となっていた毒性のある「異物」を完全に取り除くことができ、内閣府の食品安全委員会において、安全性が確認されました。 ボトル to ボトルの流れが確立すると、ペット樹脂の原料となる石油の使用が大幅に削減できます。 しかし、容器包装リサイクル法に基づき市区町村が分別回収を計画しているペットボトル21万2,000tに対し、全国に約70あるリサイクル業者の処理能力は29万2,000tと約8万tが不足しています。 市区町村によるペットボトルの回収率は年々増加し50%ほどとなっていますが、今後より一層の回収率向上の取組が必要となっています。 ![]() |
コラム 7 ごみの掘り起こし
最終処分場に埋められたごみを掘り起こし、焼却や再資源化して減量し、埋め戻す事業が広がっています。 これは、最終処分場の廃棄物の受け入れ可能年数は一般ごみで約13年、産業廃棄物で約4年と限界に近づいている一方、新処分場の建設が難しいためです。 兵庫県高砂市の一般ごみ最終処分場では平成15年4月から、1日最大100tを掘り起こして選別し、可燃ごみ約20tを高温で溶融して15分の1程度のスラグにして埋め戻しています。選別の際に粉塵などが飛び散らないように可動式のテントの中で続けられています。 新潟県巻町など4町村でつくる衛生組合では、平成14年度から年間2,600~2,700tを掘り起こし、処理後に埋め戻しています。同町内の処分場では既に8割が埋まっていますが、今後10年~15年かけて掘り続けて40年以上の延命を図る計画です。 沖縄県与那城町の産業廃棄物処分場では、ごみの種類や有害ガスについて調査の後に掘り起こし、廃プラスチックや木くず、ガラスなどを選別し、洗浄、破砕後に建材や原料などとして利用します。環境省は沖縄県と協同で事業費の大半を補助して、他の地域での活用を図る予定です。 |
コラム 8 名古屋市におけるごみの総合的な対策とその成果~「環境首都なごや」を目指して~
1 ごみ量の増加と「非常事態宣言」 名古屋市のごみ量は、全市を挙げてごみの減量に取り組む以前、20世紀の「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」型の社会を象徴するかのように一貫して右肩上がりで増え続け、平成9年度には年間100万トンの大台を突破し、焼却能力や埋立て容量の限界を迎えつつある状況となっていました。 市では、名古屋港の一部(藤前干潟)を埋め立てるという計画(名古屋港西1区埋立事業)を約20年前から進めていましたが、環境問題に対する意識の高まりを受け、平成11年1月、「快適で清潔な市民生活を確保すること」と、「自然環境を保全すること」との両立をいかに図るべきか、熟慮に熟慮を重ねた末、埋立て事業を中止しました。 翌2月には「ごみ非常事態宣言」を発表し、市のごみ処理の現状を率直に伝えるとともに、市民・事業者・行政の協働のもとでの大幅なごみ減量を訴えました。 2 「ごみ非常事態宣言」後の成果 「ごみ非常事態宣言」以降名古屋市では、プラスチック製容器包装・紙製容器包装などの資源収集を始めとする様々な取組を、市民・事業者の協力、とりわけ保健委員を始めとする地域役員の献身的な尽力により進めてきました。 その結果、平成10年度102万tに達していたごみ量は約4分の3にまで減少し、資源回収量は2倍以上に増加、埋立て量は半分以下に減少という成果を得ることができました。平成16年度のごみ量は73万tで、20年前の水準を下回るまでになっています(図)。 「説明不足など役所に対して不満は多いが、今はともかくごみを減らさなければ。」、「最初は、埋立処分場がもうなくなるというから仕方なしに協力していたが、次第にこれからの時代はこれくらいのことは当然だと思うようになった。」という声に代表されるように、市民・事業者・行政による危機意識の共有が、これらの成果をもたらしたといえます。 1) 地域からの盛り上がり 容器包装の新しい分別についての地域説明会に全世帯の4分の1が参加するなど、市民は新ルールに強い取組意欲を示しました。 こうした中で、保健委員を始めとする地域役員の奮闘はめざましいものでした。集積所での実地指導はもとより、手製の看板やカレンダーを作成したり、間違いやすい点を回覧板で周知するなど市の広報の行き届かない部分を補い、また、分別お助けマンを買って出るグループが現れるなど、様々な取組が地域から起こりました。 2) 分別意識(出口対策)が買い物意識(入口対策)へ波及 アンケート調査によれば、分別収集の実施を通して「不必要な容器包装の多さ」に気づかされ、「エコマーク等を意識するようになった」、「包装のシンプルな商品を選ぶようになった」など、自らの買い物行動が変化したと答えています。「分別」は、単にごみを資源へシフトさせるという「直接効果」だけでなく、買い物に際して「発生抑制」を意識するという「波及効果」を生みました。このことが、総排出量の減少をもたらしたと言えます。 同時に、「市民ばかりでなく、事業者が製造・販売段階から努力すべきだ」と感じる市民も多く、事業者による取組の強化が求められています。 3) 市民自主回収量の増加 名古屋市では古紙類の回収は、従来から行政が収集するのではなく、町内会・子ども会等による地域での自主的な活動として行われてきましたが、この自主回収量も平成10年度の5万tから現在13万5,000tへと約2.7倍に増加し、市の資源収集量の増加よりもごみ減量への貢献度は高くなっています。 ![]() 3 今後の課題 このところ、総排出量は増加傾向です。これまでの市民・事業者との協働による成果を、21世紀の「循環型社会」の実現へと着実に結び付けていくためには、従来の「分別・リサイクル(出口対策)」はもとより、一歩進めて「発生抑制(入口対策)」に取り組むなど、3Rの優先順位を踏まえた取組を進めていくことが重要です。平成14年5月に策定した「第3次一般廃棄物処理基本計画」では、 平成12年度 22年度 ・総排出量(ごみと資源の合計量)を増やさない 108万t → 108万t ・ごみ量を約2割削減(昭和51年度並みに) 79万t → 62万t ・埋立量を約1/10に削減(埋立ゼロへの布石) 16万t → 2万t を目標とし、市民・事業者・行政が適切な役割分担に基づき、主体的かつ協働した行動を進めていくこととしています(環境パートナーシップ)。 1) 発生抑制の取組 発生抑制の取組の第一弾として、平成14年5月に「容器・包装3R推進協議会」と名古屋市で「脱レジ袋宣言」を行い、レジ袋の削減運動を実施しています。 その一環として、削減運動に対する動機付けと実践行動を一層促進するため、平成15年10月から市内共通還元制度「エコクーぴょん」を導入しています。これは、レジ袋や紙袋を断った消費者に参加店ならどこでも同じシールを配付し、それが40枚集まると100円のお買い物券として、どこの参加店でも使用できるものです。 この削減運動を足がかりに、販売店の容器包装、メーカーの容器包装へと、順次取組を広げていきます。 2) リユースの取組 イベントや興行場などでの使い捨ての紙コップなどの使用を抑制し、ごみと二酸化炭素の排出抑制のため、食器洗浄機、乾燥機、カップなどを搭載したトラック「アラウくん」をイベントの主催者に有料で貸し出す「リユースカップ事業」を実施しています(カップだけの貸出しも可)。 3) リサイクルの取組 容器包装の分別収集を進めた結果、現在家庭ごみの約4割を占める生ごみの分別収集・資源化事業に取り組んでいます。現在約7,200世帯を対象に、家庭で分別された生ごみを市が収集し、民間の堆肥化施設で資源化しています。 今後は、ガス化などの他の手法を含め、「都市部に適した生ごみ資源化システム」づくりに向けての検討を進めていきます。 |
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