環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第5章>第2節 化学物質の環境リスクの管理

第2節 化学物質の環境リスクの管理

1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく取組

 化学物質審査規制法に基づき、新規化学物質について、引き続き事前審査等を行います。また、一般化学物質等のスクリーニング評価を引き続き円滑に実施するとともに、優先評価化学物質について、必要に応じて有害性情報の提出を求めることなどにより、環境リスク評価を着実に実施し、環境リスクが認められる場合は第二種特定化学物質に指定するなど、我が国における化学物質対策をより一層推進するとともに、平成21年の法改正時の附則で施行後5年を経過した場合の見直しが規定されていることから、所要の検討を進めます。

2 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律に基づく取組

 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号)に基づく化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)については、地方公共団体と連携しつつ、届出データの集計・公表、個別事業所データの公表及び開示、届出対象外の排出源からの排出量の推計・公表等、同制度を引き続き円滑に運用していきます。また、届出・推計データの多面的利用の検討等を実施し、必要な措置を講じます。

 安全データシート(SDS)制度については、事業者が化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)に対応したSDSの適切な提供を行うよう、引き続き周知を図ります。

3 ダイオキシン類問題への取組

(1)ダイオキシン法等に基づく対策

 平成24年に変更した国の削減計画等に基づき、特定施設に対する規制措置の徹底等を図るとともに、環境中のダイオキシン類の存在状況を常時的確に把握し、環境基準及び規制基準の設定・見直し等の的確な実施を図るため、都道府県等が行う常時監視結果の取りまとめ・公表を引き続き行います。

 一般国民が立ち入ることができ、かつ土壌環境基準を超過した地域に対し、対策地域の指定、対策計画の策定等の必要な措置が早急に講じられるよう、都道府県等に助言します。また、対策計画に基づき都道府県等が実施するダイオキシン類による土壌の汚染の除去等の対策について、都道府県等が負担する経費への助成を引き続き実施します。

 このほか、臭素系ダイオキシン類についても、リスクの適正な把握に向け、その毒性や曝(ばく)露実態に関する知見の収集・整理を行います。さらに、大気、水質等の環境中濃度や、ダイオキシン類を排出する可能性のある施設からの排出実態を把握します。

(2)その他の取組

 ダイオキシン類の各種環境媒体や食物を通じた曝(ばく)露等に関する最新の情報を収集し、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。以下「ダイオキシン法」という。)に基づく耐容一日摂取量を始めとした各種基準等に係る科学的知見の一層の充実を図ります。

 排出インベントリの更新を行い、排出等の実態及び施策の効果を把握するとともに、必要に応じ、ダイオキシン法に基づき適切な措置を講じていきます。

 引き続き、ダイオキシン類の環境測定を伴う請負調査について、測定に係る精度管理を推進するため、受注資格審査を行います。また、ダイオキシン類の測定及び分析技術の向上を図るため、地方公共団体の公的検査機関の技術者に対する研修を進めます。

 環境、人体等におけるダイオキシン類の汚染状況等について、関係府省の連携の下で実態把握を行います。

 ダイオキシン類の継続的な発生抑制のため、廃棄物等の減量化やリサイクル対策を推進するとともに、廃棄物処理の適正な在り方について一層の充実を図るため、必要な措置を講じていきます。

 国民に対して、ダイオキシン問題についての理解と協力を得るため、調査研究や技術開発の成果を公開するなど、関係府省が協力して各種取組を進めます。

4 農薬のリスク対策

 農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき、農薬登録保留基準及び農薬を使用する者が遵守すべき基準等について適宜設定等を行うとともに、必要な基礎的知見の集積を図り、農薬登録保留基準の充実に向け更なる検討を進めます。特に水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準について、引き続き個別農薬ごとの基準値の設定を行います。

 また、農薬の適正かつ安全な使用の徹底を図るための取組を行っていきます。さらに、農薬による生態影響に関する調査、農薬の環境中への残留実態調査、農薬の大気経由による影響に関する調査等の各種調査研究を行います。