環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第9節 原子力の安全の確保

第9節 原子力の安全の確保

1 原子力規制委員会の概要

 原子力規制委員会は、平成23年3月11日に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東京電力福島第一原子力発電所」という。)の重大事故の教訓を踏まえ、従前は関係行政機関が担っていた原子力の規制、核セキュリティに加え、原子力基本法(昭和30年法律第186号)及び原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)の規定に基づく原子力災害対策指針の策定等、原子力防災に関する技術的・専門的立場からの事務を一元的に担う組織として、平成24年9月に設置されました。平成25年4月より、国際約束に基づく保障措置、放射線モニタリング及び放射性同位元素の使用等の規制についての事務も担っています。また、平成26年3月1日には、独立行政法人原子力安全基盤機構(以下「原子力安全基盤機構」という。)が原子力規制委員会に統合され、その業務が移管されました。

 平成26年3月現在の定員は1,025名、平成25年度予算は63,273百万円(補正後)です(なお、内閣府において、別途、原子力防災関連予算33,766百万円(補正後)を計上。ともに復興庁に計上されている東日本大震災復興特別会計を含む)。25年度中に、原子力規制委員会を47回開催し、必要な審議、評価、決定等を行いました。

2 原子力規制行政に対する信頼の確保に向けた取組

(1)原子力規制委員会の体制強化

 原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)附則第6条第4項に基づき、原子力規制委員会全体として専門性を高めていくため、独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律案が平成25年10月に第185回臨時国会に提出され、11月に成立しました(平成25年法律第82号)。26年3月の同法施行に伴い、原子力安全基盤機構が原子力規制委員会に統合され、その業務が移管されました。

 移管された業務の実施に加え、原子力規制委員会での厳格かつ適正な審査・検査や東京電力福島第一原子力発電所対応、原子力防災対策の充実等を確保するため、統合に伴う一時的な業務増へ対応するための定員を一部含め、原子力規制委員会の定員は、全体で545人から1,025人に増員されました。組織についても、[1]原子力規制委員会の管理・運営の統括部門と[2]旧原子力安全基盤機構の安全研究部門を中心とした「技術基盤グループ」から成る「長官官房」、[3]核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号。以下「原子炉等規制法」という。)に基づく審査・検査や東京電力福島第一原子力発電所対応を行う「原子力規制部」、[4]事故時の住民避難やモニタリング体制の整備を進める「放射線防護対策部」、[5]原子力規制人材の育成を行う「原子力安全人材育成センター」が設置されることとなりました(図6-9-1)。

図6-9-1 原子力規制委員会組織図

(2)透明性・中立性の確保、人材育成

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて設置されたとの経緯を踏まえ、国民からの信頼性の向上に向けて、継続的に取り組んでいくことが極めて重要であると認識しています。原子力規制委員会は、原子力利用に対する確かな規制を通じて、人と環境を守るという使命を果たすため、科学的・技術的見地から、公正・中立に、かつ独立して意思決定を行うこと、その際、多様な意見を聴くことによって独善的にならないように留意すること、形式主義を排し、現場を重視する姿勢を貫き、真に実効ある規制を追求すること、意思決定のプロセスを含め、規制に関わる情報の開示を徹底し、透明性を確保することを組織理念として、さまざまな政策課題に取り組んでいます。

 例えば、平成25年7月の実用発電用原子炉の新規制基準の策定や、その後の基準への適合性審査においては、多くの有識者を交えて科学的・技術的な観点から精力的な議論及び審査を進めました。

 中立性の確保については、平成24年9月に独自に定めた原子力規制委員会委員の在任期間中の行動規範や外部有識者の選定に当たっての要件等を遵守しました。また、原子力規制委員会及び各種検討会合等のインターネット動画サイトによる生中継、会議の議事、議事録及び資料の公開、委員3人以上が参加する規制に関わる打合せの概要、被規制者との面談の概要等を原則公開することに加え、行政文書の積極的公開、幅広い報道機関に対する積極的な記者会見(定例は原子力規制委員会委員長/週1回、原子力規制庁定例ブリーフィング/週2回)等を継続し、意思決定過程の透明性の確保に努めました。

 加えて、実効ある規制事務を遂行するためには職員の資質向上を図ることが重要です。原子力規制委員会全体の専門性の向上を着実に実施するため、原子力規制に関する専門研修等に加え、原子力工学の知識の維持・向上のための研修等を実施しました。

(3)国際機関及び諸外国との連携・協力

 国際社会からの信頼確保や連携・協力及び国際社会への情報発信も重要課題です。原子力規制委員会は、平成25年5月及び9月の国際原子力規制者会議(INRA)の主催をはじめとして、各種会議等における意見交換、原子力規制に係る情報交換に関する海外の原子力規制機関等との二国間取極等文書(米国、英国、フランス、カナダ、ロシア、スウェーデン、スペイン及びフィンランド)の締結及び原子力安全条約の履行に係るレビュー等を通じた国際機関や諸外国との連携の強化に加え、諸外国の原子力規制に係る経験や知見を積極的に取り入れるよう努めました。また、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の国際機関や海外の原子力規制機関等に、帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(英語版)や東京電力福島第一原子力発電所近辺の海域モニタリングの結果等について、積極的に情報発信しました。さらに、IAEAの総合的規制評価サービス(IRRS)を、27年末を目処に受け入れることを表明しました。

3 原子力施設等の安全確保に向けた取組

(1)東京電力福島第一原子力発電所の事故後の対応

 平成23年3月11日に深刻な重大事故が発生した東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策については、政府が総力をあげて対策を実施することとなっています。原子力規制委員会としても、「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」等に規制当局として参加し、技術的・専門的な助言を行っています。具体的に、東京電力福島第一原子力発電所の実用発電用原子炉施設については、原子力規制委員会は、原子炉等規制法に基づき、24年11月に「特定原子力施設」に指定するとともに、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)に「措置を講ずべき事項」を示し、当該施設の保安等の措置を実施するための計画(以下「実施計画」という。)の提出を求め、24年12月に東京電力から実施計画を受領しました。

 原子力規制委員会は、「特定原子力施設監視・評価検討会」を設け、「措置を講ずべき事項」に合致しているか等の視点から、現地調査も踏まえながら審査を行い、留意事項を示した上で、平成25年8月に実施計画を認可しました。実施計画を認可した後、これまでに作業の進捗状況に応じ、7件の実施計画の変更を認可しました。また、実施計画の遵守状況の検査として、保安検査を3回、使用前検査を5件、溶接検査を3件実施するなど、東京電力の取組を確認しています。

 留意事項のうち、敷地周辺の放射線防護については、平成26年1月時点においても敷地境界における実効線量の低減が達成されず、今後もさらに増大するおそれがある状況を踏まえ、原子力規制委員会は、26年2月に、東京電力に対して、敷地境界における実効線量を段階的に低減させ、遅くとも28年3月末までに、施設全体からの放射性物質等の追加的放出による敷地境界の実効線量の評価値を1ミリシーベルト/年未満とすることなどを指示しました。

 護岸付近の地下水から放射性物質が検出されたことに端を発する汚染水問題に対しては、地中/海洋への汚染水の拡散範囲の特定、拡散防止策を検討するための「汚染水対策検討ワーキンググループ」及び東京電力福島第一原子力発電所事故に関連した海洋モニタリングの現状を踏まえ、そのあり方について検討を行う「海洋モニタリングに関する検討会」を立ち上げ、継続して議論しました。

 これまでもリスクの高さを指摘してきた高濃度汚染水が滞留している海水配管トレンチについて、「汚染水対策検討ワーキングループ」においてタービン建屋との止水や濃度低減の取組等の対策の進捗を確認しました。

 リスクの高さが指摘されてきた4号機使用済燃料プールについては、当初の計画を前倒しして燃料の取り出しが開始され、原子力規制委員会においては、東京電力の作業の進捗を確認しています。取り出し作業の開始にあたって東京電力から提出された実施計画について、時宜に即して審査や検査が行われたとして、IAEAからも良好事例として評価されました。

 その他、汚染水の漏えいが続き、東京電力福島第一原子力発電所における現場管理能力が著しく低下しているとの懸念から、原子力規制委員会委員長は、平成25年10月及び26年3月に東京電力代表執行役社長に対し、作業員の環境やサイト内の放射線対策など、環境を整備することや、燃料取り出しを注意して進めること等を求めました。また、原子力規制委員会では、汚染水対策をはじめとする現地の監視体制の強化を図るため、5月までに福島第一原子力規制事務所の原子力保安検査官計2名を増員するなど、東京電力福島第一原子力発電所全体のリスク低減に向け、継続して取り組みました。

 平成25年11月には、住民の帰還に当たり、基本的な考え方を提示しました。個人が受ける被ばく線量に着目し、住民の帰還に向けて被ばく線量低減や健康不安対策等、数々の取組や対策を提起しました。

(2)東京電力福島第一原子力発電所事故に係る放射線モニタリング

 東京電力福島第一原子力発電所の事故に係る放射線モニタリングについては、関係府省や福島県等が連携して「総合モニタリング計画」に沿って陸域や海域等のモニタリングを実施し、解析結果を、毎週、公表しています。海域のモニタリングについては、「海洋モニタリングに関する検討会」を立ち上げ、モニタリング強化の検討等を行いました。また、平成25年11月には、IAEAの海洋モニタリングの専門家による視察を受け入れ、原子力規制委員会と日本の関係機関は放射線レベルを監視するための包括的なモニタリングプログラムを策定していること等の評価がなされました。

(3)原子炉等規制法に基づく規制基準等の見直し

 原子力規制委員会は、発電用原子炉については平成25年7月に、核燃料施設等については12月に、重大事故(シビアアクシデント)対策の強化や、最新の技術的知見を取り入れ既設の施設にも新規制基準への適合を義務づける制度(バックフィット制度)の導入等と併せて新たな基準を策定・施行しました。

 発電用原子炉については検討チームを立ち上げ、設計基準の強化やシビアアクシデント対策等に関する基準や地震及び津波に対する設計基準等について議論を行いました。その際には、国会事故調査委員会報告書などで、これまでに明らかにされた情報を踏まえ、海外の規制基準も確認しながら、世界で最も厳しい水準の新規制基準を策定しました。新基準では、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、地震や津波に耐える性能の強化に加え、巨大地震や大津波により、万一過酷事故が発生した場合に対する十分な準備を取り入れています。

 核燃料施設等については、取り扱う核燃料物質等の形態や施設の構造が多種多様であることから、それらの特徴を踏まえて、施設ごとに基準を策定することとし、それぞれの施設に応じた基準等について検討しました。基準の策定に当たっては、IAEAの安全要件等に示された考え方を取り入れたほか、各国の規制基準を参考にしました。

(4)適合性審査の実施

 原子力規制委員会では、発電用原子炉及び核燃料施設等に係る新規制基準に基づき、適合性審査を開始しました。

 発電用原子炉については、現在すべての運転が停止している中で、これまでに8事業者から10原子力発電所(17プラント)について申請が行われている状況にあります。こうした中、原子力規制委員会においては、これまでに申請がなされたものについて、100回の審査会合、8回の現地調査の実施に加え、申請書の記載内容に関して事実確認をするための事務的なヒアリングを順次行い、適合性審査を進めました。

 審査においては、設置変更許可、工事計画認可及び保安規定変更認可に係る申請書について、新規制基準への適合性を確認する作業を進めています。具体的には、基準地震動や基準津波の評価、それらに対する耐震・耐津波設計方針の確認、シビアアクシデント等の発生及び拡大防止に必要な設備、手順、体制、訓練等の確認や有効性評価、内部溢水、内部火災、竜巻に関する影響評価や対策等について確認を行っています。

 また、核燃料施設等についても、8施設より申請があり、新規制基準に基づく適合性審査を進めました。加えて、六ふっ化ウランを正圧で扱う燃料加工施設及び中高出力試験研究炉に係る現状確認を進めました。

(5)原子力発電所敷地内破砕帯の調査

 旧原子力安全・保安院での検討において、発電所敷地内の破砕帯の追加調査が必要とされた6つの発電所について、関係学会から推薦を受けた有識者で構成する会合を開催し、現地調査と評価を実施しています。平成24年度からの関西電力大飯発電所、日本原子力発電敦賀発電所及び東北電力東通原子力発電所に続き、25年度は日本原子力研究開発機構高速増殖原型炉もんじゅ、関西電力美浜発電所及び北陸電力志賀原子力発電所について有識者会合による現地調査と評価を開始し、20回の評価会合等と8回の現地調査等を実施しました。

 敦賀発電所については、平成25年5月に原子炉建屋直下を通る破砕帯が「耐震設計上考慮する活断層」であるとの評価を取りまとめました。その後、事業者から追加調査結果が提出され、評価の見直しの要否について有識者会合で議論を行っています。大飯発電所については、26年2月に安全上重要な施設の直下を通る破砕帯について、「将来活動する可能性のある断層等」ではないとの評価を取りまとめました。

(6)全国の原子力施設の検査等の状況

 原子力規制委員会では、原子炉サイト近傍に原子力規制事務所(全22か所)を設置し、原子力保安検査官を配置して、日々の保安規定の遵守状況の確認や施設定期検査の立会い等を行っています。

 原子力施設の規制への適合性を確認するために、原子炉等規制法(平成25年7月7日までは電気事業法(昭和39年法律第170号))に基づき、商業用の原子力発電所16施設で施設定期検査を実施しています。また、原子炉等規制法に基づき、15施設(試験研究用原子炉施設全4施設、加工施設全6施設、研究開発段階炉[廃止措置中]全1施設、実用発電用原子炉[廃止措置中]1施設、再処理施設1施設、廃棄物管理施設全2施設)で施設定期検査を実施しました。また、同法に基づき、保安規定遵守状況を確認する検査(保安検査)を、62施設(加工施設全6施設、試験研究用原子炉全6施設、試験研究用原子炉[廃止措置中]全8施設、実用発電用原子炉全17施設、実用発電用原子炉[廃止措置中]全2施設、研究開発段階炉[建設中]全1施設、研究開発段階炉[廃止措置中]全1施設、再処理施設全2施設、廃棄物管理施設全2施設、廃棄物埋設施設全2施設、核燃料物質使用施設全15施設)について行いました。

 また、原子炉等規制法に基づき報告のあった事故・故障等は6件(特定原子力施設5件、加工施設1件)でした。

(7)放射性同位元素等による放射線障害の防止

 原子力規制委員会では、放射性同位元素等の放射線利用による放射線障害を防止するため、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律に基づき、許可使用者等(平成26年3月末現在の事業所数7,751)について、放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性汚染物の廃棄その他の取扱に関する規制を行っています。25年度内に、39件の新規使用許可、426件の許可使用に係る変更許可、204件の立入検査等を行いました。

 また、当該法律に基づき報告のあった事故・故障等は4件でした。

4 危機管理体制の整備のための取組

(1)原子力災害対策の体制整備

 東京電力福島第一原子力発電所事故の経験と教訓を踏まえた新たな原子力災害対策を構築するため、平成24年9月の原子力規制委員会の設置に合わせ、原子力基本法、原子力災害対策特別措置法等の関連法令が改正され、政府の新たな原子力災害対策の枠組みが構築されました(図6-9-2)。政府全体の原子力防災対策を推進するための機関として、内閣に「原子力防災会議」が設置され、原子力規制委員会委員長が会議の副議長に位置づけられています。また、大量の放射性物質の放出等、原子力緊急事態が発生した場合に設置される「原子力災害対策本部」においては、原子力規制委員会委員長がその副本部長に位置付けられ、原子力施設に係る技術的・専門的事項の判断については、原子力規制委員会が一義的に担当することとされています。

図6-9-2 原子力防災体制

 原子力災害対策特別措置法では、原子力規制委員会は、事業者、国、地方自治体等による原子力災害対策の円滑な実施を確保するため、原子力災害対策指針を定めることとされています。原子力規制委員会においては、平成24年10月に同指針を策定した後も検討を重ね、数次の改定を行いました。25年6月の改定では、緊急時モニタリングの実施体制や運用方法、安定ヨウ素剤の事前配布の方法等について具体化しました。また、9月の改定では、緊急時における防護措置の実施の判断基準となるEAL(緊急時活動レベル)の枠組みについて、新規制基準を踏まえたものに改定しました。

 これらの指針の改定に示された対応の実行性を高めるため、平成26年1月には、防災基本計画の原子力災害対策編が修正されました。

(2)緊急時対応への取組

 平成24年9月19日の平成24年度第1回原子力規制委員会において、警戒事象(原子力発電所立地市町村における震度5弱以上の地震の発生等)が発生した際に、ERC(緊急時対応センター)の立上げや現地原子力規制事務所長等が緊急時対策所に参集する等の原子力規制委員会の対応について定めた、「原子力規制委員会初動対応マニュアル」が決定されています。また、緊急時における情報連絡を円滑かつ確実なものとするため、国、地方公共団体、事業者における各拠点が接続されたテレビ会議システム、衛星回線を活用した通信システムなどが整備されています。

 平成25年10月11日及び12日に鹿児島県九州電力株式会社川内原子力発電所を対象として行われた、国、原子力事業者、地方公共団体等が一体となって実施する原子力総合防災訓練に、原子力規制委員会としても参加しました。

 また、原子力事業者の防災訓練は原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力規制委員会にその結果を報告することとなっています。現地の原子力規制事務所に駐在する原子力防災専門官等により訓練を現場で確認するとともに、原子力規制委員会はこの訓練について評価を行うため、原子力事業者訓練報告会を開催し、原子力事業者の訓練についての評価を行いました。

(3)環境モニタリング

 原子力発電施設等の周辺地域における放射線の影響及び全国の環境放射能水準を調査するため、全国47都道府県における環境放射能水準調査や、原子力発電所等周辺海域(全16海域)における海水等の放射能調査、原子力発電施設等の立地・隣接道府県(24道府県)が実施する放射能調査等の支援を実施しました。この他、米国原子力艦寄港に係る放射能調査を着実に実施しました。

5 核セキュリティ及び保障措置に係る取組

(1)核セキュリティに係る取組

 核セキュリティにおける主要課題への対応に関しては、平成25年7月より、核セキュリティに関する検討会において、輸送における核セキュリティ、個人の信頼性確認制度といった個別課題の具体的検討を進めるため、それぞれの課題を取り扱うワーキンググループを開催して検討を行っています。

 国際的要請への対応としては、平成26年1月、IAEAに対し国際核セキュリティ諮問サービス(IPPAS)のミッション受入れの正式要請を行いました。

 また、平成17年に、IAEAにおいて開催された条約改正案の審議のための会議において採択された核物質防護条約の改正の締結のため、平成26年2月、核物質防護条約の国内担保法である「放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案」を第186回国会に提出しました。

 許認可等については、82件の核物質防護規定の変更の認可、59件の核物質防護規定の遵守状況の検査を行いました。また、平成25年度の核物質防護検査では、独立行政法人日本原子力研究開発機構敦賀本部高速増殖炉研究開発センターにおいて核物質防護規定遵守義務違反が認められ、11月、同機構に対して文書により厳重に注意するとともに、再発防止を求めることとしました。

(2)保障措置に係る取組

 原子力規制委員会は、日・IAEA保障措置協定に基づき、我が国の核物質が核兵器などに転用されていないことの確認をIAEAから受けるために必要な、[1]原子力施設や大学などが保有する全ての核物質の在庫量の報告の取りまとめとIAEAへの申告及び、[2]報告に誤りがないことを確認する保障措置検査を実施しています。2013年(平成25年)7月にIAEAより公表された、「2012年版保障措置声明」においては、我が国は例年と同様に「全ての核物質が平和的利用の範囲にあると見なされる(拡大結論)」との評価がなされています。