環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第1章>第2節 地球温暖化防止に向けた国内対策

第2節 地球温暖化防止に向けた国内対策

 今後、京都議定書目標達成計画に規定された対策・施策について、各部門において各主体が全力で取り組むことにより、森林吸収量の目標である1,300万炭素トン(基準年総排出量比3.8%)の確保、京都メカニズムの活用(同比1.6%)と併せて、京都議定書第一約束期間の削減約束を達成することとしています。

 そのほか、地域の自然的社会的条件に応じた地球温暖化対策を推進するため、地方公共団体実行計画の策定・実施を支援します。

 また、地球温暖化を防止するためには、地球規模での温室効果ガスの更なる長期的・継続的かつ大幅な削減が必要です。そのため、地球温暖化対策基本法案では、わが国は、1990年比で、2020年(平成32年)までに温室効果ガス排出量の25%削減の達成を目指すとの中期目標を、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として掲げるとともに、2050年(平成62年)までに温室効果ガス排出量の80%削減の達成を目指すとの長期目標を掲げ、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を少なくとも半減するとの目標をすべての国と共有するよう努めることとしています。

 その後、平成24年4月に閣議決定された第4次環境基本計画においては、「産業革命以前と比べ世界平均気温の上昇を2℃以内にとどめるために温室効果ガス排出量を大幅に削減する必要があることを認識し、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減するとの目標をすべての国と共有するよう努める。また、長期的な目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す。」、「わが国は、すべての主要国家が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として2020年までに1990年比で25%の温室効果ガスを排出削減するとの中期目標を掲げている。」と記載されています。

 また、平成23年6月には、革新的エネルギー・環境戦略を政府一丸となって策定するため、「エネルギー・環境会議」(以下、「同会議」という)が設置されました。さらに、同年10月には、2013 年以降の地球温暖化対策の国内対策についても、同会議を中心にエネルギー政策と表裏一体で検討されることとされています。

 同年12月に同会議にて決定された「基本方針~エネルギー・環境戦略に関する選択肢の提示に向けて~」では、平成24年をめどに、戦略の選択肢を提示し、国民的議論を経た後、夏をめどにエネルギー・環境戦略を策定することとされました。同会議に提示される原子力政策・エネルギーミックス・地球温暖化対策の選択肢の原案については、原子力委員会、総合資源エネルギー調査会、中央環境審議会等の関係会議体にて策定することとしています。

1 温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 低炭素都市づくり関連施策の集中投入、低炭素都市推進協議会等を通じた成果の情報共有等により、施策の効果の最大化を図るとともに、「環境モデル都市」や、新成長戦略に基づき選定を進めてきた「環境未来都市」における取組を各府省の連携・協力のもと促進するなど、低炭素都市づくりを推進します。

 具体的には、より実効的な地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定・実施を支援するための土地利用・交通、地区・街区に関する都市・地域の低炭素化手法の検討や、それらの検討を踏まえた策定マニュアルの改訂を行います。さらに、技術は確立されているが、効果検証がなされていない先進的施策の検証の実施や、再生可能エネルギー等を活用した自立・分散型エネルギーシステムの導入等による「災害に強く環境負荷の小さい地域づくり」の推進を行います。また、地域主導による、地域の特性を生かした再生可能エネルギー導入の実現に向けたモデル的な取組への支援を実施します。ICTの活用や系統安定化対策によって、再生可能エネルギーを導入した次世代エネルギーシステムを確立します。また、バイオマスタウンの認定や、低炭素都市づくりを支える人材育成等を行います。

イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 産業分野等の事業者が行う省エネ効果の高い設備投資に対する補助については、平成24年度も引き続き節電効果の高い事業についての重点支援を行うとともに、各省庁と連携して事業の周知に努める等なお一層の普及に努めます。自主行動計画については、京都議定書目標達成計画において示された観点も踏まえ、政府による自主行動計画の厳格な評価・検証を行います。また、産業界における2013年度以降の自主的取組についても、引き続き推進していきます。

 中小企業における排出削減対策の強化のため、中小企業の排出削減設備導入における資金面の公的支援の一層の充実や、大企業等の技術・資金等を提供して中小企業等(いずれの自主行動計画にも参加していない企業として、中堅企業・大企業も含む。)が行った温室効果ガス排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、自主行動計画等の目標達成のために活用する国内クレジット制度を引き続き推進します。また、2013年度以降の制度のあり方について、関係省庁で検討を開始します。

 農林水産分野においては、平成19年6月に策定した農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき実施してきたバイオマスの利活用の推進等の地球温暖化防止策、暑さに強い品種の開発や栽培体系の見直し等の地球温暖化適応策、わが国の技術を活用した国際協力を引き続き推進します。さらに、同戦略を平成20年7月に改定し、農山漁村地域に賦存するさまざまな資源やエネルギーの有効活用による低炭素社会実現に向けた農林水産分野の貢献等を実施します。

(イ)業務その他部門の取組

 第180回国会に提出した、エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案における、住宅・建築物における熱の損失を防止するための建築材料等の性能の向上に関する措置、いわゆるトップランナー制度について、同法成立後、規制対象の選定に向けた実態把握及び関連省令等の整備を行います。

 住宅・建築物の省エネ基準について、外壁・窓等の断熱性能に加え、照明・空調・給湯器等の高効率化、太陽光発電等の創エネについても総合的に評価する方向で見直しを行います。また、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及や環境関連投資促進税制の活用により、建築物の省エネ化を促進します。トップランナー基準については、さらに個別機器の効率向上を図るため、対象を拡大するとともに、すでに対象となっている機器の対象範囲の拡大及び基準の強化を図ります。

 政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、環境配慮契約を実施します。

(ウ)家庭部門の取組

 一定の中小規模の住宅・建築物に係る省エネ措置の届出義務等、省エネルギー法改正の内容について前年度に引き続き、周知徹底を行います。また、「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」において、省エネ基準適合義務化等の住宅・建築物の低炭素化に向けた推進方策について、工程表も含めた中間取りまとめ(案)の検討を行い、住宅・建築物における対策の強化を図っていきます。また、消費者等が省エネルギー性能のすぐれた住宅を選択することを可能とするため、住宅等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)や住宅性能表示制度の充実・普及、「住宅事業建築主の判断の基準」に適合していることを表示する住宅省エネラベルの情報提供を実施します。さらに、既存住宅について一定の省エネ改修工事(高断熱窓への取替え等)を行った場合の所得税額の特例措置等を実施し、また、製造事業者等による省エネルギー性能の品質表示制度を円滑に実施するとともに、その省エネルギー効果について各種媒体を活用した周知徹底を行うこととし、住宅リフォーム時に導入可能な各種省エネ対策について普及啓発を行います。また、一定の省エネ基準を満たす住宅の新築・リフォームに対し、様々な商品等と交換できるポイントを発行する住宅エコポイント事業(復興支援・住宅エコポイント)を引き続き実施します。

 加えて、「環境コンシェルジュ制度」の創設に向けて、家庭エコ診断の推進のための基盤整備を引き続き行います。また、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等の活用により、より一層の削減を促進する施策を実施します。

(エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策のみならず、交通流対策、燃料対策、エコドライブなどの自動車利用の効率化対策等も含めた総合的アプローチを推進します。自動車単体対策として、世界最高水準の燃費技術により燃費の一層の改善や、燃費性能のすぐれた自動車やクリーンエネルギー自動車の普及等の対策を推進します。あわせて、環状道路等幹線道路網の整備等の推進により、交通流対策を実施します。また、利用環境改善促進等事業により、バリアフリー化されたまちづくりの一環として、地域公共交通の利用環境改善を促進するために、より制約の少ない交通システムであるLRTの導入等に対して支援します。物流分野に関しては、引き続き、荷主、物流事業者の協働による取組を支援するとともに、自動車輸送から二酸化炭素排出量の少ない内航海運又は鉄道による輸送への転換や、国際貨物の陸上輸送距離の削減にも資する港湾の整備等を推進することにより、物流体系全体のグリーン化を促進します。

 また、国際標準化戦略と船舶の革新的省エネ・低炭素技術の開発及び普及の促進を一体的に行う海洋環境イニシアティブを推進するとともに、内航海運におけるスーパーエコシップ等の省エネ船舶の普及促進等により、海運分野の低炭素化を推進します。

 輸送用燃料については、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律72号)に基づく、非化石エネルギー源の利用に関する石油精製業者の判断の基準(平成22年経済産業省告示242号)が平成22年11月に施行されたことにより、石油精製業者には平成23年度以降各年度の持続可能性基準を満たしたバイオ燃料の利用目標が設定され、平成29年度までに50万kL(原油換算)の導入を目標とするとされました。こうしたことを踏まえ、バイオ燃料を全国的に供給できる体制を構築するための事業を推進していきます。

(オ)エネルギー転換部門の取組

 原子力発電に関しては、東京電力福島第一原子力発電所の事故原因について徹底的な検証を行う必要があります。こうした検討を踏まえつつ、原子力政策を含むエネルギー政策全体についての議論が必要です。また、原子力等のほかのエネルギー源とのバランスやエネルギーセキュリティを踏まえつつ、天然ガスへの転換等その導入及び利用拡大を推進します。再生可能エネルギーの利用を促進するため、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号)に基づき、固定価格買取制度を導入します。また、再生可能エネルギーを利用するための設備の設置の促進、電力系統の整備の促進、規則の適切な見直し等、必要な施策を講じます。また、ガスコージェネレーションや燃料電池、ヒートポンプなど、エネルギー効率を高める設備等の更なる普及も推進していきます。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進による化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減、廃棄物の最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化、下水汚泥の燃焼の高度化等を引き続き推進します。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進

 産業界の計画的な取組の推進、代替物質等の開発等、代替物質を使用した製品等の利用の促進、冷媒として機器に充填されたHFCの法律に基づく回収等の施策を、引き続き実施します。

 具体的には、事業者の先導的な排出抑制の取組に対する支援、冷凍空調機器や断熱材における温室効果の低いガスを用いた技術開発の早急な推進、代替フロンを含有する製品における「見える化」の推進(二酸化炭素換算表示)、特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号)による冷媒フロン類の回収の徹底、冷媒フロン類の使用時排出対策、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)及び使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づくフロン類回収の徹底、発泡断熱材、エアゾールなどのノンフロン化をさらに推進するための普及啓発等に取り組みます。また、代替物質を使用した製品等の利用を促進するため省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入補助等を引き続き行います。

 さらに、フロン類対策への経済的手法の活用に係る検討を進めるとともに、産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会及び中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会において、フロン類の更なる排出抑制に向けた対策強化のあり方について引き続き検討を行います。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 森林吸収量(1990年以降に森林経営活動等が行われた森林の吸収量)については、1,300万炭素トン(基準年度総排出量比約3.8%)の確保のため、平成19年度以降の6年間に、毎年55万haの間伐等の森林整備の実施が必要な状況となっています。

 このため、平成23年度から新たに、面的まとまりをもって計画的な森林施業を行う者に直接支援を行う「森林管理・環境保全直接支払制度」を導入するとともに、森林境界を明確化する取組への助成や「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成20年5月施行)」に基づく措置等を活用し、間伐等の森林整備を引き続き推進します。

 また、森林吸収源対策を含めた緒施策の着実な推進に資するよう、平成25年以降の地球温暖化対策の国内対策の策定に向けて検討する中で、国全体としての財源確保を引き続き検討します。

 また、都市における吸収源対策として、引き続き都市公園整備、道路緑化等による新たな緑化空間を創出し、都市緑化等を推進します。

 さらに、平成20年7月に改定した農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき、農地土壌の温室効果ガスの吸収源としての機能の活用に向けた取組等を実施します。また、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行います。

2 横断的施策

(1)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づき、事業者全体、フランチャイズチェーン全体での事業者による算定・報告が着実かつ適切に実施されるよう、引き続き周知を図るとともに、報告された排出量等を確実に集計し公表します。

(2)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法第21条に基づく排出抑制等指針について、引き続きその他の部門や更なる指針の活用方等についても検討を行うなど、事業者による温室効果ガスの排出抑制等のための取組を推進していきます。

(3)国民運動の展開

 地球温暖化防止のために政府が推進する国民運動を引き続き展開し、クールビズ、ウォームビズなど、オフィスや家庭などにおけるCO2削減の具体的な行動の実践を広く国民の皆様に呼びかけていきます。

(4)「見える化」の推進

 「カーボンフットプリント制度」については、これまでの試行事業の成果を活かして民間事業としてのカーボンフットプリントの自立的な普及・促進を後押しします。国際標準化作業への積極的参加等を引き続き行うとともに、前述した家庭エコ診断等において、「見える化」による温室効果ガスの削減効果の把握を行いつつ、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等の活用により、主に家庭部門等での温室効果ガス削減のための施策を引き続き進めていく予定です。また、事業者におけるサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の算定とともに、わが国の優れた技術や製品等による削減貢献量の算定をさらに推進していく予定です。

(5)税制のグリーン化

 第6章第8節参照。

(6)国内排出量取引制度

 「地球温暖化対策の主要3施策について」(2010年12月28日地球温暖化問題に関する閣僚委員会)に基づき、わが国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組など)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行います。

 また、2008年10月に開始した「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」については、義務的な国内排出量取引制度の基盤となるものではありませんが、排出実態等に関する情報収集、排出量の算定・検証の体制の整備、対象事業者における排出量取引への習熟等の意義があることから、引き続き必要な見直しを行いながら継続します。

 なお、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)や国内クレジット制度については、引き続きその運営を行っていきます。

(7)カーボン・オフセット

 オフセットに関する国内・海外の情報収集や、「カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)」を活用した継続的な普及啓発・相談支援を通じてオフセットの普及促進を促進すると共に排出量の全量をオフセットするカーボン・ニュートラル(炭素中立)の取組についても、試行事業を通じた案件発掘やフォローアップを通じた制度整備等を行い、カーボン・ニュートラル認証制度の普及を図ります。「オフセット・クレジット(J-VER)制度」については、対象となるプロジェクトの拡充やJ-VER認証プロセスの効率化により、J-VER制度の円滑な運営を図るとともに、認証に係る事業者等への支援やクレジットの売り手と買い手のマッチング機会を提供するなど制度活用を促進させるための取組を強化していきます。また、2013年度以降の制度のあり方について、関係省庁で検討を開始します。

 日本カーボンアクション・プラットフォーム(JCAP)のネットワークも活用しつつ、これらを通じてオフセットの取組を社会全体に定着させることで、市民・企業等あらゆる主体における排出削減等の活動を促進し、わが国を低炭素社会にシフトするための基盤づくりに貢献します。

3 基盤的政策

(1)排出量・吸収量算定方法の改善等

 気候変動に関する国際連合枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)を報告します。また、温室効果ガス排出量・吸収量のさらなる精度等の向上に向けた算定方法の改善や情報解析等を行います。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

 地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する技術の高度化及び有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、燃料電池、蓄電池並びに二酸化炭素の回収及び貯留等に関連する技術の開発及び普及を促進します。

 農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を強化します。

 温室効果ガスの排出削減・吸収機能向上技術の開発として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を進め、温室効果ガスの排出削減技術、成長が早い新世代林業種苗の作出による森林再生技術、農地土壌等の吸収機能向上技術の開発を推進します。また、低投入・循環型農業の実現に向けた生産技術体系の開発として、有機資源の循環利用や、微生物を利用した化学肥料・農薬の削減技術、養分利用効率の高い施肥体系、土壌に蓄積された養分を有効活用する管理体系等の確立を推進します。さらに、高精度なレーザー計測技術により、アジア熱帯林の資源量と動態を把握するとともに、土地利用変化予測モデル等の開発を推進します。

 農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した栽培・飼養管理技術や土着天敵を活用した害虫防除システムの開発を推進します。また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種の開発を推進します。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化の実態を解明し、科学的知見を踏まえた一層適切な行政施策を講じるため、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究を総合的に推進します。

 わが国を含む各国の研究機関による「低炭素社会国際研究ネットワーク」を引き続き支援し、国際的に研究を推進します。

 地球温暖化分野の観測にかかわる関係府省・機関が参加する連携拠点の運営や、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)(第6章第3節参照)を用いた全球の温室効果ガス濃度の観測等により、気候変動及びその影響等を把握するための総合的な観測・監視体制を強化します。

4 フロン等対策

 フロン類回収・破壊の一層の徹底を図るため、引き続き特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号)の周知を行い、都道府県による法施行強化等を推進します。

 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号)に基づき、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書に定められたHCFC等のオゾン層破壊物質の生産規制等を着実に実施するとともに、その排出抑制、使用合理化の一層の促進に努めます。また、オゾン量、オゾン層破壊物質の大気中濃度及び太陽紫外線の観測・監視等を実施します。

 開発途上国におけるフロン等対策を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した、オゾン層破壊物質からオゾン層を破壊せずかつ温室効果の低い代替物質への転換支援、研修の受入れ等を引き続き推進するなど、開発途上国への技術協力を行います。さらに、オゾン層保護担当官ネットワーク会合等を活用し、日本の技術・取組等の普及促進による開発途上国における議定書遵守対策の加速化、フロン類の回収・再利用・破壊に係る施策実施の促進を図ります。