環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>刊行に当たって

刊行に当たって


刊行に当たって 環境大臣細野豪志
環境大臣
環境大臣 細野豪志


 東日本大震災という、かつてない災害の発生から、既に一年以上が経過しました。しかし、被災地では今なお大変厳しい状況が続いています。私は、この国難を乗り越えるべく、東日本大震災からの復旧復興と、放射性物質による環境汚染への対処に最優先で取り組んでおります。

 今年の環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書でも、東日本大震災と原子力発電所事故への対応を中心に据えています。目下の最大の課題である除染については、福島を中心に、福島の再生なくして日本の再生なしとの考え方の下、政府として、力の限りを尽くして取り組まねばなりません。また、東日本大震災により、膨大な災害廃棄物が発生しました。被災地の復興の大前提として、この災害廃棄物の迅速な撤去、処理を、全国民が手を携えて進めていく必要があります。

 さらに、原子力安全規制に関しては、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえて、放射線から人の健康と環境を保護するという目的のために、規制制度、防災体制とこれを運用する行政組織について抜本改革が必要です。安全安心への希求に応えるためには、新たな組織の下で一日も早く人と環境を守る制度と体制を整えなければなりません。

 加えて、被災地における本格的な復興にも力を入れてまいります。特に、東北地方の豊かな自然資源や再生可能エネルギーを利用した自立分散型の地域社会づくりを応援するなど、人々が強い絆で結ばれた、災害に強く環境負荷の小さい地域社会づくりを目指します。それは被災地のみならず、東日本大震災を経て、私たちすべてに投げかけられた課題でもあります。

 これらの震災からの復旧・復興の取組は、被災地域に暮らす方々に寄り添いながら、また、知恵を絞りながら進めなければなりません。そして、その過程を、ライフスタイルや社会構造にまで踏み込んだ変革への萌芽とし、将来の安全安心で持続可能な社会の実現につなげていくことが大切です。

 国連持続可能な開発会議(リオ+20)では、持続可能な開発や貧困根絶のためのグリーン経済が大きな議題の一つとなっています。私は、環境の保全は経済成長の阻害要因ではなく、むしろこれからの成長そのものを担う分野であると考えます。我が国は、低炭素技術をはじめ、世界の中でも環境分野における高い技術やシステムを有する国です。特に東日本大震災を経験した我が国だからこそ、そのような技術や経験をしっかりと活かし、世界に貢献していかなければなりません。環境負荷を低減させることが新しい価値と豊かさを生み出す社会を実現し、我が国が世界をリードするグリーン成長国家となるように、この環境白書がささやかな一助となれば幸いです。