刊行に当たって

刊行に当たって 環境大臣松本龍
環境大臣
環境大臣 松本龍


 平成23年3月11日午後2時46分、東北地方太平洋沖地震が発生し、地震、津波、そして原発事故というかつてない複合災害が、東北地方を中心とする東日本を襲いました。

 尊い命を亡くされた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族に対し深く哀悼の意を表したいと思います。さらに、被災された方々に対しまして心よりお見舞いを申し上げます。

 東日本大震災は、被災地に甚大な被害を与えたほか、日本全体にも大きな影響を及ぼしました。私は、3月11日を境に、私たちの暮らしや社会のありよう、さらには価値観や考え方までもが変わっていくことになるのではないかと思っています。震災の惨禍を目の当たりにする中で、私は、自然の猛威を肌で感じると同時に、私たち人間は自然界の一員であり、地球に生かされているとの思いを、以前にも増して強く抱きました。復旧復興に全力で取り組みながら、私たちは、地球と共生する社会を目指していかなければなりません。

 地球との共生を実現するためには、幅広い知恵を結集し、ルールを定め、行動を起こしていくことが必要です。昨年10月には、愛知県名古屋市で「国連地球生きもの会議」(COP10)が開催されました。議論は最終盤まで難航しましたが、各国が痛みを分かち合いながら譲歩、妥協を積み重ねるうちに、「地球益」「人類益」に向けて思いが集まり、生物多様性に関する新たな世界目標(愛知目標)と名古屋議定書への合意に達することができました。また12月には、気候変動枠組条約第16回締約国会議において、先進国と途上国の双方が削減の目標や行動を掲げて取り組むことを盛り込んだカンクン合意を採択することができました。このように国際的なルール作りを進めていくと同時に、国内において持続可能な社会の実現に向けて具体的な行動を起こしていくことが必要です。大量流通・大量消費を見直し、里地・里山などの地域の自然の恵みを活かしていくことや、再生可能エネルギーの活用を進めていくことなどを通じて、持続可能な社会の姿を具体化して行くことが重要だと考えています。

 この地球は、未来の子供たちからの預かりものだと言われます。持続可能で安全・安心な社会を築き、次世代を担う子供たちに自然の恵みを引き継ぐことは、私たち現代の世代の責務です。その思いを皆様と共有し、ともに取り組んでまいりたいと思います。そのために、この白書がいささかなりとも役立てば、大変嬉しく思います。



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