第6節 環境保健対策、公害紛争処理等及び環境犯罪対策
公害に係る健康被害については、予防のための措置を講じ、被害者の発生を未然に防止するとともに、
公害健康被害の補償等に関する法律(以下「公健法」という。)の被認定者に対しては、汚染者負担の原則を踏まえて迅速かつ公正な保護及び健康の確保を図ります。
また、公害紛争処理について、紛争の態様に即した迅速かつ適正な解決を進めます。
1 健康被害の救済及び予防
(1)公害健康被害補償及び予防
ア 公害健康被害の補償等に関する法律の適切な運用
(ア)補償給付等の実施
被認定者に関する補償給付については、労働者の平均賃金の動向等を踏まえて必要な給付額の改定を行うとともに、被認定者の健康の回復等を図るため、公害保健福祉事業を引き続き実施します。
(イ)公害健康被害予防事業の実施
(独)環境再生保全機構(以下「機構」という。)において、公害健康被害予防基金をもとに、調査研究、知識の普及及び研修の各事業を直接行うとともに、地方公共団体等が旧第一種地域等を対象に行う計画作成及び健康相談、健康診査、機能訓練、施設等整備等の各事業に対し助成金の交付を行います。
(ウ)費用負担
旧第一種地域に係る補償給付額(公害保健福祉事業に係る原因者負担分を含む。)の所要額は、平成19年度において約579億円と見込まれており、これらの費用を賄うため、工場・事業場分については汚染負荷量賦課金を徴収し、自動車分については自動車重量税収の一部を引き当てます。
イ 水俣病対策の推進
水俣病対策については、与党(自由民主党及び公明党)の水俣病問題に関するプロジェクトチームと連携して、関係地方公共団体とも協力しながら取組を進めます。また、医療事業等の円滑な実施を図っていきます。さらに、水俣病被害者等の高齢化に対応した医療と地域福祉を連携させた取組等を進めます。
(2)アスベスト(石綿)健康被害の救済
石綿による健康被害については、石綿による健康被害の救済に関する法律に基づき、引き続き、被害者及びその遺族の迅速な救済を図ります。救済給付に必要な費用については、平成19年4月に、事業者からの拠出金の徴収を開始します。また、各都道府県からの拠出も開始されます。
(3)環境保健に関する調査研究
ア 環境保健施策基礎調査等
(ア)大気汚染と呼吸器疾患に係る調査研究
大気汚染と健康状態との関係について引き続き環境保健サーベイランス調査を行います。
幹線道路沿道の局地的大気汚染による健康影響について疫学的な解明を行うため、学童コホート調査及び幼児症例対照調査を継続して着実に実施するとともに、成人を対象とした調査を開始します(そら(SORA)プロジェクト)。
機構においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を引き続き行っていきます。
(イ)新たな環境要因による健康影響に関する調査研究
花粉症に関する取組として、発生源対策、花粉量予測・観測、発症の原因究明、予防及び治療を関係省庁が協力して推進します。環境省では、スギ・ヒノキ花粉総飛散量予測及び花粉終息予測等の公表並びに花粉症と環境因子に関する調査研究を引き続き実施します。また、全国の花粉飛散状況を把握できるよう、
花粉観測システム(愛称:はなこさん)の体制の充実を図るため、花粉自動計測器を順次設置します。
このほか、電磁環境や高温熱環境の健康影響に関する調査研究、本態性多種化学物質過敏症に関連した極微量化学物質の分析法の開発等を進めます。
(ウ)その他
公健法の被認定者の高齢化に伴い生ずる、認定疾病に起因する療養生活上の問題に対応するため、生活機能向上のためのプログラムの開発に努めます。
イ カドミウム環境汚染地域住民健康調査
カドミウム汚染地域住民の保健管理等今後の環境保健対策に資するため、神通川流域住民健康調査を引き続き実施します。
ウ 重金属等の健康影響に関する総合研究
水銀やカドミウムなどの重金属等の健康影響に関して、科学的な知見を得るために調査研究を実施します。
エ 石綿による健康影響に関する調査等
健康リスク調査については、平成19年度に新たに実施する地域を拡大して引き続き実施します(6地域)。また、石綿による健康被害の救済に関する法律に基づく被認定者に関する医学的所見等の解析調査も行います。
2 公害紛争処理等
(1)公害紛争処理
公害等調整委員会においては、国及び都道府県の公害紛争の適切な処理が図られるよう、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議などを通じて、都道府県公害審査会等と積極的に情報交換・意見交換を行うことにより、相互の連携の一層の強化に努めます。
(2)公害苦情処理
地方公共団体の公害苦情処理事務が適切に運営されるよう、苦情の受付及び処理の実態を把握するための「公害苦情調査」を行うとともに、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とする公害苦情相談研究会の開催や問い合わせに対する回答などを通じて、指導などに当たります。
3 環境犯罪対策
産業廃棄物の不法投棄等の悪質な環境破壊行為の取締りを重点として、地域住民の協力を得て違反情報の入手に努めるとともに、環境犯罪に対する取締り体制の整備、強化を図ります。また、関係行政機関、環境保護団体、事業者団体などの連携を強め、広報啓発活動を積極的に推進し、廃棄物の排出事業者などの遵法意識を高めるとともに、広く国民の間に、環境犯罪を許さない意識を醸成します。