むすび 低炭素社会を目指して

これまでに見てきたように、地球温暖化は確実に進行しており、異常高温の発生、強い熱帯低気圧の発生や大雨の発生頻度の増加、海面上昇等様々な影響が出てきています。私たちは、多様な生物に支えられた生態系から、生態系サービスという形で様々な恩恵を受けていますが、地球温暖化は、それらにも重大な影響を及ぼしつつあります。IPCC第4次評価報告書によれば、21世紀の末には、地球温暖化による世界の平均気温の上昇は最大で6.4℃にもなると予測されており、私たちの地球は現在、危機的な状況にあります。
危機を回避するために、私たちは地球温暖化対策を加速する必要があります。政府は、京都議定書目標達成計画の見直しを進めるとともに、国内外挙げて取り組むべき環境政策の方向を明示し、今後の世界の枠組づくりへ我が国として貢献する上での指針である「21世紀環境立国戦略」の取りまとめを行っています。
これらを踏まえた短期・長期両面の広範な努力の結集が必要ですが、ここでは、まずは知ることが重要であると考え、国民一人一人に地球温暖化問題の姿をよりよく知ってもらい、身近な技術による温室効果ガス排出削減の可能性に目を向けてもらうことに焦点を当てて述べてきました。もとより、地球温暖化対策は技術のみならず制度と行動の変革を一体として進めるものであり、技術を社会の隅々まで行き渡らせる社会的仕組みづくり等の制度面での改革や、国民一人一人の意識、ライフスタイル等の転換等の行動面での改革が欠かせません。こうした取組を通じて社会経済システムの変革を起こし、私たちが生活する地域にその姿を具体化するなどして、私たちとその子孫、さらにその生きる基盤である地球を守るため、「低炭素社会」を作り上げていくことが必要です。平成19年5月24日、安倍内閣総理大臣は、地球温暖化問題に対応するために3つの柱からなる戦略を「美しい星50(Cool Earth 50)」というパッケージとして提案しました。これは、「21世紀環境立国戦略」の中核にもなるものです。「低炭素社会」の実現を目指して、今、私たちの取組が始まるのです。
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安倍内閣総理大臣の新提案「美しい星50(Cool Earth 50)」

○「世界全体の排出量を現状から2050年までに半減」という長期目標を世界共通目標として提案。
○その達成のため、「革新的技術の開発」と「低炭素社会づくり」という長期ビジョンを提示。

【提案2):2013年以降の国際枠組み構築に向けた「3原則」の提唱】
○2013年以降の温暖化対策の具体的枠組みを設計するための「3原則」を世界に提案。
(第1)主要排出国が全て参加し、京都議定書を超え、世界全体での排出削減につながること。
(第2)各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること。
(第3)省エネなどの技術を活かし、環境保全と経済発展とを両立すること。
○我が国として志の高い途上国の支援のために新たな「資金メカニズム」を国際協調で構築。
○エネルギー効率の向上の取組を世界に拡大。原子力利用拡大の国際取組や基盤整備の支援。
○公害対策と温暖化対策の一体的取組、排出量取引、経済的インセンティブなどの手法を検討。

【提案3):京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開】
○京都議定書の6%削減目標達成に向けて、京都議定書目標達成計画を見直す。
○政府の率先的取組を進め、自治体や主要な業務部門の行動の加速化を促す。
○「国民運動」を展開し「1人1日1kg」削減のモットーの下で様々な努力や工夫を呼びかけ。
また、国民運動の展開について、新しい提案を公募し、採用する。


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