2 公害紛争処理等
(1)公害紛争の処理状況
公害紛争については、公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)の定めるところにより処理することとされています。公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の4つがあり、裁定には、公害に係る被害についての損害賠償責任の有無及び賠償すべき損害額を判断する責任裁定と、加害行為と被害の発生との間の因果関係の存否について判断する原因裁定の2種類があります。
公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病のような事件)、広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)等について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会等は、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。
近年の社会情勢等の変化に伴って、公害紛争についても、公害の発生源の多様化、国等の公的機関が当事者として含まれる事件や原因究明の困難な事件の増加等、その態様が著しく変化しており、特に廃棄物関係の紛争が増加しています。
ア 公害等調整委員会に係属した事件
平成17年中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は10件で、これらに前年から繰り越された10件を加えた計20件(調停事件3件、責任裁定事件5件、原因裁定事件11件、義務履行勧告事件1件)が17年中に係属しました。その内訳は、表7-8-2のとおりです。このうち17年中に終結した事件は9件で、残り11件が18年に繰り越されました。
終結した主な事件としては、有明海で漁業を営む福岡県外3県の漁民19人及び漁業協同組合連合会(申請人)が、国営諫早湾干拓事業において行われた工事によって漁業被害を受けたとして、原因裁定を求めた『有明海における干拓事業漁業被害原因裁定申請事件』があり、この事件は申請人らからの申請が棄却となりました。
また、新たに受け付けた主な事件としては、川崎市内の土地から、産業廃棄物及び市が処分業者に委託したゴミ焼却灰が発見され、土壌及び地下水の汚染も明らかになったとして、土地の所有者(申請人)はその対策工事を実施したが、土地の前所有者及び市(被申請人)が工事費等の損害賠償の支払を拒否しているため、工事費等の支払を求めている『川崎市における土壌汚染財産被害責任裁定申請事件』があります。
イ 都道府県公害審査会等に係属した事件
平成17年中に都道府県の公害審査会等が受け付けた公害紛争事件は35件で、これに前年から繰り越された42件を加えた計77件(調停事件76件、義務履行勧告申出事件1件)が17年中に係属されました。このうち17年中に終結した事件は34件で、残り43件が18年に繰り越されました。
ウ 公害紛争処理に関する連絡協議
公害紛争の適切な処理を図るため、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等の相互の情報交換・連絡協議に努めました。
(2)公害苦情の処理状況
ア 公害苦情処理制度
公害に関する苦情は、地域住民の生活に密着した問題であり、その適切な処理は、住民の生活環境を保全するためにも、また、将来の公害紛争の未然防止のためにも極めて重要です。
このような観点から、公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるべきものと規定され、さらに、都道府県及び市区町村は、公害苦情相談員を置くことができるとされています。
また、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導及び情報の提供を行っています。
イ 公害苦情の受付状況
平成16年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口で受け付けた苦情件数は、調査開始以来、初めて10万件を超えた前年度(10万323件)より6,002件(6.0%)減少して、9万4,321件となりました。
このうち、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭のいわゆる「典型7公害」の苦情件数は6万5,535件で、前年度に比べて1,662件(2.5%)減少しました。
一方、廃棄物投棄など「典型7公害以外」の苦情件数は2万8,786件で、前年度に比べて4,340件(13.1%)減少しました。種類別に見ると、廃棄物投棄が1万4,113件(「典型7公害以外」の苦情件数の49.0%)で、前年度に比べて1,798件(11.3%)の減少、その他が14,673件で、前年度に比べて2,542件(14.8%)の減少となっています。
ウ 公害苦情の処理状況
平成16年度において、典型7公害の苦情の申立てから処理までに要した期間を見ると、1か月以内に75.6%が処理されています。
エ 公害苦情処理に関する指導等
地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導等を行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談研究会及び公害苦情相談員等ブロック会議を開催しました。