2 閉鎖性海域
(1)富栄養化対策
海域の窒素及びりんに係る排水基準については、閉鎖性が高く富栄養化のおそれのある海域に適用することとされており、現在、88の海域とこれに流入する公共用水域に排水する特定事業場を対象として、排水規制を実施しています。また、海域における全窒素及び全りんの環境基準については、上記の閉鎖性海域を対象に環境基準類型をあてはめる作業が国及び都道府県において行われているところであり、54海域が指定されています。
(2)水質総量規制制度
人口、産業が集中し、汚濁が著しい広域的な閉鎖性海域については、水質汚濁防止法に基づき、当該水域への汚濁負荷量を総合的かつ計画的に削減しようとする水質総量規制を実施しています。東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象に、COD、窒素含有量及びりん含有量を指定項目として、第5次水質総量規制を実施しています。
第5次水質総量規制に係る総量削減基本方針に示される削減目標量の達成のため、地域の実情に応じ、下水道、浄化槽、農業集落排水施設、コミュニティ・プラントなどの整備等による生活排水対策、工場等の総量規制基準の遵守指導による産業排水対策、合流式下水道の改善等によるその他の汚濁発生源に対する諸対策を総合的に推進しました。
また、総量規制の対象の3水域においては、総量規制の水質改善効果を把握するため、当該水域に係る水質、発生負荷量及び負荷削減対策状況等について総合的な調査・解析を行いました(図3-4-3)。
さらに、総合的な水質改善対策を一層推進するため、第6次総量規制の在り方について検討を行い、平成17年5月に中央環境審議会から答申が行われました。答申においては、21年度を目標年度とし、東京湾、伊勢湾及び大阪湾においては水環境改善のために、さらなる負荷削減対策等を実施するとともに、瀬戸内海(大阪湾を除く)においては現状の水質を維持するために従来の各種施策を継続して実施することとされています。
(3)瀬戸内海の環境保全
瀬戸内海においては、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年法律第110号)及び瀬戸内海環境保全基本計画等により、総合的な施策が進められてきています。瀬戸内海沿岸の関係11府県は、海水浴、潮干狩り等海洋性レクリエーションの場として利用されている自然海浜を保全するため、自然海浜保全地区条例等を制定しており、平成17年12月末までに91地区の自然海浜保全地区を指定しています。瀬戸内海における公有水面埋立ての免許又は承認に当たって、関係府県知事は、瀬戸内海の特殊性に十分配慮しなければならないとされています。瀬戸内海環境保全特別措置法施行以降17年11月1日までの間に約4,770件、約12,890ha(うち16年11月2日以降の1年間に39件、76.5ha))の埋立ての免許又は承認がなされています。
(4)有明海及び八代海の環境の保全及び改善
平成14年11月に成立した有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成14年法律第120号)に基づいて策定した基本方針により、国及び関係県が連携・協力を図りながら、貧酸素水塊の影響防止対策、底質改善、藻場の造成等、環境の保全及び改善、水質資源の回復等による漁業の振興を図るための各種施策の推進に取り組みました。また、同法に基づき環境省に設置された「有明海・八代海総合調査評価委員会」において、両海域の再生に係る評価等を行うための検討がなされました。