2 持続可能な社会づくりのために必要なこと
以上のような持続可能なまち、持続可能な社会は、決して簡単に構築されるものではなく、現段階では構想に過ぎません。この実現のために社会の仕組みを改め、同時に、私たちのライフスタイルを変えていかなければなりませんが、多様な取組がうまく組み合わさり、互いに支え合い強め合えば、急速に具体化されていく可能性があります。そして、行政をはじめとした各主体の果たすべき役割はますます大きいものとなってきます。
今後、持続可能な社会づくりのためには、
1)将来の環境の状況を予測し、それに対応するための社会の姿を示した上で、バックキャスティングの考えに基づき、今どのような取組を行っていく必要があるかをビジョンとして提示すること、
2) さらに、さまざまな取組がどのような影響を及ぼすのかを総合的に評価し、あるべき社会の取組の方法を提示すること、
3) そして、持続可能なライフスタイルの実現のため、環境にプラスの効果がある取組や製品などを積極的に評価し、それらが進んで取り入れられるため、インセンティブを与える仕組みを構築していくこと
が求められます。
例えば、東京大学では、東京から排出される温室効果ガスを半分に削減することを目標に技術的な可能性を追求した「THPプロジェクト (Tokyo Half Project)」が実施され、家庭における省エネルギー設計などの建築、太陽電池などの分散エネルギー供給、ロードプライシングなどの交通、そして都市構造の変化などの各取組を連携して導入した場合の都市全体の効果について、対策相互の相殺効果や電力供給との相互作用を考慮に入れた評価を行っています。
また、環境省では、製品の製造・流通から廃棄に至る各ライフサイクルにおける環境評価の検討を実施しており、各ライフサイクルでの環境負荷削減の情報を提供することにより、企業においてはより環境負荷の少ない製品の開発を行い、また、消費者においてはより環境負荷の少ない製品やサービスの選択できるよう取組を進めています。
さらに、(独)国立環境研究所とも連携して、2050年までに脱温暖化を実現するための将来予測とバックキャスティングに基づいた対策を検討する「脱温暖化2050プロジェクト」を実施しており、また、同じく2050年といった超長期の将来展望やそれを踏まえた現在から超長期にわたる対応策やライフスタイルや社会システムの見直しのあり方を明らかにすることを目指した「環境政策の超長期ビジョン」の検討を開始しました。
持続可能な社会のためのさまざまな取組を促進し、その効果を最大化するためには、以上のような長期的視野に立った政策をさらに進めていくことが重要です。