1 健康被害の救済及び予防
(1)公害健康被害補償予防対策等の推進
ア 公害健康被害の補償等に関する法律の実施
(ア)補償給付等の実施
被認定者に関する補償給付については、労働者の平均賃金の動向等を踏まえて必要な給付額の改定を行うとともに、被認定者の健康の回復等を図るため、公害保健福祉事業を引き続き実施していきます。
(イ)健康被害予防事業の実施
独立行政法人環境再生保全機構(以下「機構」という。)において、公害健康被害予防基金を基に、調査研究、知識の普及及び研修の各事業を直接行うとともに、地方公共団体等が旧第一種地域等を対象に行う計画作成、健康相談、健康診査、機能訓練、施設等整備等の各事業に対し助成金の交付を行っていきます。
(ウ)費用負担
旧第一種地域に係る補償給付額(公害保健福祉事業に係る原因者負担分を含む。)の所要額は、平成17年度において約626億円と見込まれており、これらの費用を賄うため、固定発生源分については汚染負荷量賦課金を徴収し、自動車分については、自動車重量税収の一部を引き当てます。
イ 水俣病対策の推進
水俣病については、認定業務を確実に推進するとともに、平成18年に水俣病公式確認から50年という節目の年を迎えるに当たり、7年12月の閣議了解「水俣病対策について」や16年10月の最高裁判決も踏まえ、医療対策等の一層の充実や水俣病発生地域の再生・融和(もやい直し)の促進等を推進するため、関係地方公共団体と協力して下記の施策を実施していきます。
(ア)水俣病総合対策事業等
過去に通常レベルを超えるメチル水銀の暴露を受けた可能性があり、水俣病にもみられる四肢末梢優位の感覚障害を有すると認められる者に医療費、療養手当等を支給する医療事業等を内容とする水俣病総合対策事業について、高齢化の進展やこれまでの事業の実施上明らかになってきた課題等を踏まえ、医療手帳と保健手帳を拡充し、拡充後の保健手帳の申請受付を再開する事業を行います。また、関西訴訟及び熊本水俣病二次訴訟において損害賠償認容判決が確定した原告に対して、医療費(自己負担分)等の支給を実施していきます。
(イ)今後の取組
平成18年の水俣病公式確認50年に向けて、高齢化対応のための保健福祉施策の充実や水俣病被害者に対する社会活動支援等の実施について検討します。また、水俣・芦北地域の振興を引き続き推進・支援していきます。さらに、国立水俣病総合研究センターにおいて水俣病発生地域としての特性を生かした研究等の充実を図るとともに、WHO協力センターとしての活動、海外の水銀汚染に関する調査研究等の国際協力を実施していきます。
(2)環境保健に関する調査研究の充実
環境保健においては、健康被害の未然防止を図ることが重要であり、平成17年度においては以下のような各種調査研究を行っていきます。
ア 環境保健施策基礎調査等
(ア)大気汚染と呼吸器症状に係る調査研究
1)環境保健サーベイランス調査
本調査により、大気汚染と健康状態との関係について引き続き監視を行います。
2)局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査
平成16年度までに実施してきた局地的大気汚染の個人暴露量把握のための試行調査、客観的健康影響評価指標の導入のための調査研究等の結果を踏まえ、大気汚染とぜん息の発症関係を評価するため、17年度から学童を対象とした大規模な追跡(コホート)調査を実施します。
3)その他
ぜん息等の症状悪化要因に関する調査研究を引き続き行っていきます。
なお、機構においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を引き続き行っていきます。
(イ)新たな環境要因による健康影響に関する調査研究
1)花粉症に関する取組
個人暴露歴等に着目した疫学調査を実施し、花粉症飛散量予測値に関する情報提供について検討を行っていきます。また、花粉観測システム(愛称:はなこさん)に関しては、今後、測定器を順次配置し、全国の花粉飛散状況が把握できる体制の確立を目指します。
2)電磁界に関する調査研究
平成17年度中に発表される予定のWHO環境保健基準に沿った調査研究を実施していきます。
(ウ)その他
公健法の被認定者の高齢化に伴い生ずる、認定疾病に起因する療養生活上の問題点等を把握し、施策を検討するため、被認定者や医療関係者等に対する調査結果の解析等を進めます。
イ カドミウム環境汚染地域住民健康調査
カドミウム汚染地域住民の保健管理等今後の環境保健対策に資するため、神通川流域住民健康調査を引き続き実施していきます。
ウ 重金属等の健康影響に関する調査研究
水銀やカドミウムといった重金属等の健康影響に関して、科学的な知見を得るために調査研究を実施していきます。