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第11節 

2 森林の保全と持続可能な経営の推進

(1)問題の概要
 世界の森林は、陸地の3割を占め、面積39億haに及びますが、1990年(平成2年)から2000年(平成12年)にかけて、年平均940万haの割合で減少しました。特に、世界の森林の47%を占め、野生生物種の半数が生息するといわれている熱帯林においては、この間、毎年、本州の面積の3分の2に相当する1,420万haの天然林が失われたと推測されています。近年では、ロシア極東地域における森林の減少も懸念されています(図6-11-1)。



 森林消失の原因として、農地への転用、非伝統的な焼畑移動耕作の増加、過度の薪炭材採取、不適切な商業伐採、過放牧、プランテーション造成、森林火災等が挙げられます。その背景には、人口増加、貧困、土地制度等のさまざまな社会的・経済的要因が絡んでいます。特に近年では、違法伐採が問題となっています。

(2)対策
 平成4年の地球サミットで、森林原則声明及びアジェンダ21が採択され、それ以降、世界の森林保全と持続可能な経営に関する議論が行われています。
 平成13年に設置された「国連森林フォーラム」(UNFF)では、国家森林プログラムの策定等からなるIPFIFF行動提案の実施促進、国際協力の推進、すべての森林に関する法的枠組みの作成等について検討されています。
 平成14年のヨハネスブルグ・サミットにおいて日本とインドネシアが中心となって発足させた「アジア森林パートナーシップ」(AFP)では、アジアの持続可能な森林経営の促進を目的として、違法伐採対策、森林火災予防、荒廃地の復旧と再植林等について検討されています。16年8〜9月に開催された「AFPの強化を図るための地域ワークショップ」では、既存の違法伐採対策イニシアチブ間の調和等に関する作業計画の進ちょく状況が報告されました。また、16年12月に東京で開催されたAFP第4回実施促進会合では、木材の合法性を検証・確認するためのガイドラインの作成、信頼できる合法性確認システムの構築等について協力していくことが合意されました。この会合でオランダ政府など新たに5つのパートナーが加わったことにより、16か国の政府、EC、8国際機関及び9NGO等がAFPに参加しています。
 国際熱帯木材協定(ITTA)に基づき横浜市にその本部が設置されている国際熱帯木材機関(ITTO)においても、熱帯林における持続可能な森林経営等を目的とした活動が行われています。また、現行のITTAは平成18年末に終了するため、新たな協定の採択に向けて、協定改定交渉が行われています。
 また、森林の保全と持続可能な経営を評価するための基準・指標について国際的な取組が進められていますが、日本は、欧州以外の温帯林・北方林を対象とした「モントリオール・プロセス」に参加しています。
 違法伐採問題については、日本とインドネシアとの間で策定・公表した違法伐採対策のための協力に関する「共同発表」・「アクションプラン」に基づいた取組を進めています。また、木材を輸入している諸外国における取組状況等の調査を行っています。平成17年3月には、G8環境・開発大臣会合の議題の一つとして、違法伐採問題が取り上げられました。
 上記の取組のほか、ITTO、国連食糧農業機関(FAO)等の国際機関への拠出、国際協力機構(JICA)等を通じた協力、民間団体の植林活動等への支援、熱帯林における生態系管理に関する研究等を行いました。

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