2 生態的ネットワーク
地域固有の生物相の安定した存続、あるいは減少した生物相の回復を図るためには、十分な規模の保護地域を核としながら、それぞれの生物の生態特性に応じて、生息・生育空間のつながりや適切な配置が確保された生態的ネットワークを形成することが必要です。
生態的ネットワークの必要性は、既に「新・生物多様性国家戦略」(平成14年3月)や「21世紀の国土のグランドデザイン」(10年3月)において位置付けられており、16年5月に取りまとめられた国土審議会調査改革部会報告においても、「国土規模での生態系ネットワークをもとに(中略)新たに「水と緑のネットワーク」構想として展開すべく、その具体的な内容等を含めさらに検討が必要である」とその推進が述べられました。
一方、既に生態的ネットワークの考えを生かした事業制度や構想は展開しつつあります。
森林については、従来の保護林制度に加え、保護地域である保護林同士を連結し、野生動植物の移動経路の確保と生息・生育地を拡大し、分断された個体群の交流を通じた個体群の保全と個体群の遺伝的な多様性を確保する生態的ネットワークを形成する「緑の回廊」の設定を進めています。平成16年4月1日現在、19か所約392千haが設定されています。
平成16年6月に定められた「国土交通省環境行動計画」には、美しくうるおいのある良好な環境を実現するため、公園、下水道、河川、砂防、道路、港湾などの事業間の連携の一層の強化や多様な主体の参画による水と緑のネットワーク形成の推進が記述されています。このため、各事業等による総合的な連携支援体制の整備等を行うこととしています。
また、地方公共団体がビオトープを回復・整備し、既存の生息地等との連携により生物多様性のネットワーク化を推進する事業に対して助成を行いました。平成9〜16年で83地区において整備が行われました。
さらに、農林水産省と国土交通省で、河川や農業用水路などの身近な水域における魚類等の生息環境改善のための事業連携方策を検討し、事業を連携して実施し、効果を高めるための方策の手引きを作成するなど、各省庁間の連携への取組が進められています。さらに、農林水産省、国土交通省及び環境省が連携して、各省庁の施策の連携による総合的なエコロジカルネットワーク形成手法についての検討調査を開始しました(図6-3-2)。