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第8節 

1 健康被害の救済及び予防

(1)公害健康被害補償予防対策等の推進
ア 「公害健康被害の補償等に関する法律」の実施
(ア)補償給付等の実施
 被認定者に関する補償給付については、労働者の平均賃金の動向等を踏まえて必要な給付額の改定を行うとともに、被認定者の健康の回復等を図るため、公害保健福祉事業を引き続き実施していきます。
(イ)健康被害予防事業の実施
 平成16年4月1日より発足する独立行政法人環境再生保全機構(以下「機構」という。)において、公害健康被害補償予防協会より承継する公害健康被害予防基金を基に、調査研究、知識の普及及び研修の各事業を直接行うとともに、地方公共団体等が旧第一種地域等を対象に行う計画作成、健康相談、健康診査、機能訓練、施設等整備等の各事業に対し助成金の交付を行っていきます。
(ウ)費用負担
 旧第一種地域に係る補償給付額(公害保健福祉事業に係る原因者負担分を含む。)の所要額は、平成16年度において約653億円と見込まれており、これらの費用を賄うため、固定発生源分については汚染負荷量賦課金を徴収し、自動車分については、自動車重量税収の一部を引き当てます。
イ 水俣病対策の推進
 水俣病対策については、認定業務を着実に推進するとともに、平成7年12月の閣議了解「水俣病対策について」に基づき、下記の施策を実施します。
(ア)水俣病総合対策事業
 過去に通常レベルを超えるメチル水銀の暴露を受けた可能性があり、水俣病にもみられる四肢末端優位の感覚障害を有すると認められる者に療養費、療養手当等を支給する医療事業等を内容とする水俣病総合対策事業の円滑な実施を図っていきます。
(イ)地域再生・振興施策
 地域再生・振興施策については、国立水俣病総合研究センターにおいて水俣病発生地域としての特性を活かした研究の充実等を図るとともに、水俣・芦北地域の振興を引き続きできる限り推進・支援していきます。
 また、国立水俣病総合研究センターにおいては、WHO指定機関としての活動、海外の水銀汚染に関する調査研究等の国際協力を実施していきます。

(2)環境保健に関する調査研究の充実
 環境保健においては、健康被害の未然防止を図ることが重要であり、平成16年度においては以下のような各種調査研究を行っていきます。
ア 環境保健施策基礎調査等
(ア)大気汚染と呼吸器症状に係る調査研究
1)局地的大気汚染の健康影響に関する調査研究
  平成15年度までに実施してきた局地的大気汚染の個人暴露量把握のための試行調査、客観的健康影響評価指標の導入のための調査研究等の結果を踏まえ、さらに必要な調査研究を推進するとともに、局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査の調査設計を検討します。
2)環境保健サーベイランス調査
  本調査により、大気汚染と健康状態との関係について引き続き監視を行います。また調査精度のさらなる向上を図るため、従来の3歳児調査を継続して実施するとともに、平成16年度からは6歳児を対象とした調査も実施します。
3)その他
  ぜん息等の症状悪化要因に関する調査研究を引き続き行っていきます。
  なお、機構においても、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究を引き続き行っていきます。
(イ)新たな環境要因による健康影響に関する調査研究
1)大気汚染と花粉症の相互作用に関する基礎的研究
  動物実験、疫学調査を引き続き行っていきます。
2)電磁環境の健康影響に関する調査研究
  環境を通じた超低周波の個人暴露量把握等に関する調査研究を引き続き行っていきます。
(ウ)その他
 公健法の被認定者の高齢化に伴い生ずる、認定疾病に起因する療養生活上の問題点等に関する実態調査の解析を進めるとともに、医療関係者等に対する調査も行います。
イ カドミウム環境汚染地域住民健康調査
 カドミウム汚染地域住民の保健管理等今後の環境保健対策に資するため、神通川流域住民健康調査を引き続き実施していきます。
ウ 環境汚染等健康影響基礎調査
 有害重金属の環境汚染等による健康影響を事前に予測し、適切な保健対策を推進するための基礎資料を得ることを目的として、有害重金属の暴露状況等を調査していきます。

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