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第5節 

2 自然的環境の整備

(1)都市における緑地の整備等
 市町村による緑の基本計画の策定を通じた総合的かつ計画的な緑地の保全及び緑化を推進するとともに、公共空間における緑のストックの増加、公共公益施設等における高木植樹の推進を図ります。がけ崩れ対策においては、貴重な緑の空間である斜面環境・景観を保全しつつ安全度を向上するため、既存樹木を活用した緑の斜面工法による斜面整備を推進します。また、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を創出するため、市街地に隣接する山麓斜面にグリーンベルトとして一連の樹林帯の形成等を実施し、無秩序な市街化の防止や都市周辺に広がる緑のビオトープ空間の創出に寄与します。

(2)都市公園等
 都市の防災性の向上、地球環境問題等への対応、豊かな地域づくり等の課題に対応しつつ、都市における緑とオープンスペースを確保し、水・緑豊かで美しい都市生活空間等の形成を実現するため、「都市公園整備事業」の推進を図ります。国営公園については、全国17か所において整備を進めます。都市の景観形成・環境改善及び防災機能向上のため、緑化の必要性が特に高い地区において多様な公園緑地の整備や公共公益施設の緑化等を行う「緑化重点地区総合整備事業」、埋立造成地等において自然的環境の再生や多様な生物の生息生育基盤の確保など環境の向上に資する良好な緑地の整備を行う「自然再生緑地整備事業」等、各種施策に応じた都市公園等の整備を推進します。また、緑の基本計画に位置づけられた水と緑のネットワーク計画に基づき、都市公園の整備、緑地の保全、民有緑地の公開に必要な施設整備を総合的に支援する「緑地環境整備総合支援事業」を実施します。

(3)国民公園及び戦没者墓苑
 皇居外苑、新宿御苑、京都御苑及び千鳥ケ淵戦没者墓苑を広く国民の利用に供するため、引き続き園内の清掃や、芝生、樹木の手入れを行います。また、皇居外苑濠の汚泥しゅんせつ、京都御苑の閑院宮邸改修工事等を行います。

(4)河川環境等の整備
ア 河川とダム
 河川環境に関する基礎情報の収集整備のため、河川並びにダム湖及びその周辺における生物の生息状況の調査を行う「河川水辺の国勢調査」を実施します。また、河川環境に関する専門的知識を有する地域の方々の参加を得て、きめ細かな河川環境の管理に資する「河川環境保全モニター制度」を実施します。また、自然環境に配慮した河川管理の取組として、世界最大規模の実験河川を有する自然共生研究センター等において、河川湖沼の自然環境保全・復元のための研究を実施します。
 河川環境管理基本計画の策定を推進し、自然環境の保全に配慮するとともに、河川の蛇行復元や、乾燥化傾向にある湿地の再生等を行う自然再生事業を実施し、地域住民と連携しながら渡り鳥等の生物の良好な生息・生育環境を有する自然河川や、湿地・干潟などウェットランドの再生を進めていきます。良好な潤いのある水辺空間の保全並びに形成等を図る「河川環境整備事業」等を実施します。治水上の安全性を確保しつつ、多様な河川環境を保全し、環境を改変せざるを得ない場合でも最低限の改変にとどめ、良好な自然環境の復元が可能となるように川づくりを行う「多自然型川づくり」、河川横断施設とその周辺の改良、魚道の設置等により魚類の遡上環境の改善を行う「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」等を実施します。また、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」に基づき、河川環境に配慮した災害復旧を実施します。
 都市再生本部において、第三次決定プロジェクトに位置付けられた「水循環系の再生」については、河川の再生(河岸の再自然化、河畔林の整備、水質の改善等)、市街地の雨水貯留・浸透機能の回復等、各領域の施策を総合的に推進することによりその再生を図ります。
 ダム貯水池において整地、法面保護、緑化対策等を図り、ダム湖の活用、親水性の向上を図る「ダム湖活用環境整備事業」を実施します。また、ダム下流の河川環境の回復を目的とした「ダム水環境改善事業」を実施します。
イ 砂防設備周辺等
 土砂災害の防止の実施に当たり、生物の良好な生息・生育環境を有する渓流・里山の環境等を保全・再生するため、NPO等と連携した山腹工などにより、里地・里山などの多様な自然共生型の砂防事業を推進します。また、土砂災害の防止とあわせて、すぐれた自然環境や社会的環境を持つ地域等の渓流において、自然環境との調和を図り、緑と水辺の空間等の生活環境の整備、または、景観・親水性の向上や生態系の回復等を図り良好な渓流環境を再生や歴史的価値を有する砂防設備の活用を踏まえた周辺環境整備など、個々の渓流の特色を活かした砂防事業を展開します。
 がけ崩れ対策においては、貴重な緑の空間である斜面環境・景観を保全しつつ安全度を向上するため、既存樹木を活用した緑の斜面工法による斜面整備崩壊土砂を捕捉する緩衝樹林帯整備を推進します。
ウ 総合的な土砂災害
 河川環境等の面から土砂移動について配慮が必要であり、山地部から海岸までの土砂の運動領域を「流砂系」という概念で捉え、ダム堆砂の進行、河床低下、海岸侵食等の土砂管理上の問題が顕在化している流砂系において、砂防、ダム、河川、海岸の各領域が連携を図り、土砂の量と質に関するモニタリング等の取組を実施します。

(5)港湾及び漁港・漁場における環境の整備
ア 港湾
 自然環境と調和し、アメニティ豊かな環境と共生する港湾(エコポート)の実現を促進し、自然再生型公共事業として、港湾整備事業から発生する良質土砂等を活用して、多様な生物の生息地である干潟・藻場等の保全・再生・創出を計画的に行います。また、廃棄物処分場跡地等を活用し、臨海部において大規模な緑地の整備を行います。自然砂浜の再生等を行うことにより、良質な水辺・沿岸環境を整備するなど、より幅広くかつ効果的な取組を推進します。これらの実施に当たっては、アダプティブマネジメント(順応的管理手法)を積極的に導入しつつ、事業の計画づくりから維持管理までのさまざまな段階において、地域住民や民間団体等の多様な主体の参画を図るとともに、国土技術政策総合研究所、独立行政法人港湾空港技術研究所等による世界最大規模の干潟実験施設の観測や現存干潟の現地調査等を通じて干潟や生態系の研究と連携して行います。
 平成13年12月に都市再生プロジェクトとして決定された「臨海部における緑の拠点の形成」については、自然と共生する社会の実現に向けた自然再生型公共事業の一環として、大阪湾尼崎臨海部において大規模緑地を整備し、東京港中央防波堤内側、大阪湾堺臨海部においては大規模緑地整備の実施に向けて検討を行います。また、親水性に富む港湾緑地等の整備を引き続き行うとともに、歴史的港湾施設の保存活用と周辺の環境整備を一体的に進める「歴史的港湾環境創造事業」及び良好な港湾景観の形成を促進する「港湾景観形成モデル事業」を実施します。マリーナ、ボートパーク等を整備し、地域でさまざまな問題を発生させている放置艇の解消を進めるとともに、地方自治体や民間団体等と連携し、マリーナを拠点とした環境教育活動等の取組を推進します。
イ 漁港及び漁場
 漁港漁場整備長期計画に基づき、昭和50年代初頭の沿岸域の漁場環境に回復させることを目標として、重要な漁場であるとともに資源生産の場としての機能や水質の浄化等のさまざまな機能を有している藻場・干潟の保全・創造などの取組を推進するため、漁港区域内の水域における汚泥・ヘドロの除去・覆砂並びに藻場・干潟等の整備等を行う水域環境保全対策等を推進するほか、藻場・干潟の造成、底質改善等を行う「水産基盤整備事業」を実施します。海水交流機能を有する防波堤、水産動植物の生息、繁殖が可能な防波堤等の整備並びに砂浜の再生に資する漁港の整備など、自然調和・活用型の漁港漁場づくりを積極的に展開します。また、磯焼け海域における藻場の回復等のモデル事業の実施並びに漁港及び周辺水域の水質浄化に資する漁業集落排水施設の整備の促進を図ります。
 貝殻等の水産系副産物を増養殖場の造成に活用するための調査を行うとともに、漁港及び漁場の環境整備へ活用する「水産系副産物活用推進モデル事業」を実施します。

(6)海岸における環境の整備
 砂浜の保全・復元により生物の生育・生息地を確保しつつ、景観上もすぐれた人と海の自然のふれあいの場を整備する「海岸環境整備事業」を実施します。また、生物の生息・繁殖場所となる砂浜、干潟、磯、緑地の保全や創出を行う「エコ・コースト事業」を実施します。

(7)緑化推進運動への取組
 緑化推進連絡会議を中心に国土の緑化に関し以下のような施策を実施します。
1) 全国植樹祭等を開催する事業、青少年や都市住民による森林ボランティア活動などの森林づくりを促進する事業、学校林の活用を促進する事業等に助成し、その普及・啓発を推進します。また、巨樹、巨木林や里山林等身近な森林・樹木の適切な保全・管理のために必要な技術開発と普及啓発を推進します。さらに、「みどりの日」、「みどりの週間」(4月23日〜29日)を中心に、緑化活動等の全国的な展開を推進するほか、緑の募金及び緑と水の森林基金の助成による森林整備等への取組を推進します。
2) 都市緑化の推進に当たっては、「春季における都市緑化推進運動」期間(4〜6月)、「都市緑化月間」(10月)を中心に、その普及啓発に係る各種活動を実施するほか、緑の相談所(都市緑化植物園)、都市緑化基金の拡充強化等を図ります。
3) 「小鳥がさえずる森づくり運動」を推進するため、普及啓発活動等を実施します。

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