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第9節 

1 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

 地球環境問題に対処するため、1)国際機関の活動への支援、2)条約・議定書の国際交渉への積極的参加、3)諸外国との協力、4)開発途上地域への支援を積極的に行っています。
 また、政府一体となった地球環境保全関係施策の効果的な推進に資する観点から、関係省庁全体の地球環境保全関係予算を集計しており、平成15年度の総額は9,230億円でした。平成16年度の総額は8,334億円であり、前年度に比べ9.7%減となっています(表7-9-1)。



(1)地球環境保全に関する国際的な連携の確保
ア 多国間の枠組みによる連携
(ア)国連を通じた取組
1)国連持続可能な開発委員会(CSD)
 国連持続可能な開発委員会(CSD)第11会期が、2003年(平成15年)4月〜5月に米国・ニューヨークの国連本部にて開催されました。今回の会合では、2002年(平成14年)に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)の成果を踏まえて、CSDの今後の行動計画を主なテーマとして議論が行われました。
2)国連環境計画(UNEP)における活動
 日本は、創設当初から一貫して国連環境計画(UNEP)の管理理事国であるとともに、国連環境基金に対し、2002年(平成14年)は約410万ドルを拠出する等多大な貢献を行っています。2004年(平成16年)3月には、UNEP第8回管理理事会特別会合及び第5回グローバル閣僚級環境フォーラムが韓国・済州島で開催され、ヨハネスブルグ・サミットのフォローアップ(CSDへ向けたUNEPの貢献)や国際環境ガバナンスなどについて議論が行われました。
 2003年(平成15年)10月にはUNEP・金融イニシアティブ(FI)の金融と環境に関する国際会議が東京で開催され、経済的発展と環境保護の両立について積極的に情報交換が行われました。
 また、UNEP親善大使である加藤登紀子さんが、2003年(平成15年)5月にウズベキスタン共和国等を、9月にフィジー諸島共和国等を訪問し、草の根レベルの環境保全活動を視察するとともに関係者と交流し、広報を行うなどの活動を支援・推進しました。
 そのほか、日本に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(IETC)が実施する開発途上国等への環境上適正な技術(EST)の移転を目的とした環境保全技術データベース等の事業を支援・推進しました。
3)国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)における活動
 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)のグローバリゼーション対処委員会が2003年(平成15年)11月にタイ・バンコクにて開催され、環境分野では「環境と持続可能な開発」がテーマとして議論が行われました。
(イ)経済協力開発機構(OECD)における取組
 最近の経済協力開発機構(OECD)・環境政策委員会では、拡大生産者責任(EPR)ガイダンスマニュアル、環境アウトルック等が公表され広く活用されています。
 環境政策委員会ではこの数年、各加盟国が順次「OECD21世紀最初の10年の環境戦略」の実施について報告しており、日本は2003年(平成15年)11月の環境政策委員会で報告を行いました。
 2002年(平成14年)10月より経済審査のテーマの1つとして持続可能な開発に関する国別審査が行われており、日本は2003年(平成15年)3月に審査ミッションを受け入れ、2003年(平成15年)10月の審査会合を経て同テーマの審査を含む審査報告書が作成、出版されています。
 OECDの輸出信用グループは、輸出信用機関による環境配慮のための「環境と輸出信用に関する共通アプローチ」を作成し、一部の国を除く同グループのメンバー国は、2001年(平成13年)11月、同アプローチを2002年(平成14年)より自主的に実施することとしました。さらに、この自主的実施の経験・実績を踏まえ、2003年(平成15年)に、より環境に配慮した内容をめざした改訂作業を行い、改訂された同共通アプローチはOECD勧告として同年12月に合意されました。
(ウ)世界貿易機関(WTO)等における取組
 2001年(平成13年)11月にカタール・ドーハで開催された世界貿易機関(WTO)第4回閣僚会議で採択された閣僚宣言に基づき、WTO貿易と環境に関する委員会(CTE)では、WTOルールと多国間環境協定(MEAs)が規定する特定の貿易上の義務との関係や、環境関連の物品及びサービスの関税・非関税障壁の削減または撤廃等について、WTOドーハ開発アジェンダ交渉の下で交渉が行われています。2003年(平成15年)9月にメキシコ・カンクンで開催された第5回閣僚会議では合意は得られなかったものの、現在引き続き交渉が行われています。
 WTOにおける多国間の貿易自由化に加え、二か国間や地域ごとの自由貿易や経済連携を進める協定の締結が急速に進められています。日本は2002年(平成14年)にシンガポールと経済連携協定を締結し、2004年(平成16年)3月にはメキシコとの経済連携協定について大筋で合意、現在は韓国、ASEANなどとの間でも交渉を行っています。このような状況を踏まえ、自由貿易協定・経済連携協定と環境保全との相互支持性を向上させるための具体的手法について検討を行っています。
(エ)主要国首脳会議(G8サミット)における環境問題への取組
 2003年(平成15年)6月のフランスで開催されたエビアン・サミットでは、「持続可能な開発のための科学技術G8行動計画」が策定され、地球観測、エネルギー技術の研究・開発・普及、農業及び生物多様性、物質フロー及び資源生産性に関する作業の促進などのために、国際的な協力を推進していくことを確認しました。
(オ)G8環境大臣会合
 2003年(平成15年)4月にフランス・パリにおいて、G8環境大臣会合が開催されました。ヨハネスブルグ実施計画や第3回世界水フォーラムの閣僚宣言を踏まえた活発な議論が行われ、持続可能な生産・消費、国際環境ガバナンスなどに焦点を当てたコミュニケを採択しました。
(カ)アジア・太平洋地域における取組
1)アジア太平洋環境会議(エコアジア)
 2003年(平成15年)6月に、神奈川県葉山町において第11回アジア太平洋環境会議(エコアジア)を開催しました。同会議には、5名の環境大臣を含むアジア太平洋地域の20カ国及び12国際機関が参加し、「循環型社会実現への取組」、「持続可能な開発に関する世界首脳会議の具体的実施」をテーマとして議論が行われました。
2)アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)
 2003年(平成15年)8月に、アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)の第4回会合がモンゴル・ウランバートルで開催され、2004年(平成16年)中に取りまとめる予定の最終報告書についての議論を行いました。
3)アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)
 アジア太平洋地域の持続可能な開発の実現に向けて、各国との共働により、衛星データ等を活用した統合的モニタリング・評価体制の構築、革新的な環境戦略オプションの開発を行い、その成果をアジア太平洋地域の政策決定者に発信しています。
4)ESCAP・北東アジア環境協力高級事務レベル会議
 2004年(平成16年)3月に、ロシア・モスクワにおいて第9回ESCAP・北東アジア環境協力高級事務レベル会議が開催されました。会議では、現在実施されているプロジェクトなどについて話し合われました。
5)環日本海環境協力会議(NEAC)
 2003年(平成15年)11月に、富山県富山市において第12回環日本海環境協力会議(NEAC)が開催されました。会議では、「黄砂を取り巻く各国の現況」と題した公開シンポジウムを行うとともに、「海洋環境の保全」「循環型社会の形成」「地方公共団体を中心とした北東アジア地域の環境協力」について、幅広い観点から議論が行われました。
6)日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)
 2003年(平成15年)12月に、中国・北京市において第5回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)が開催され、気候変動問題等の地球環境問題や、黄砂等の北東アジア地域の環境問題について話し合われました。また、大臣会合に基づくプロジェクトの推進について意見交換が行われ、その成果が共同コミュニケとして取りまとめられました。
7)東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)環境大臣会合
 2003年(平成15年)12月に、東南アジア諸国連合(ASEAN)に日中韓の三カ国を加えたASEAN+3環境大臣会合の第2回会合がミャンマー・ヤンゴンで開催され、ASEAN+3の域内における環境協力の具体化に向けた意見交換が行われたほか、ASEAN+3の協力枠組を今後どう強化していくかについて議論が行われました。
8)ASEM環境大臣会合
 2003年(平成15年)10月にイタリア・レッチェにおいてアジア欧州会合(ASEM)第2回環境大臣会合が開催され、ヨハネスブルグ・サミットのフォローアップ、多国間環境問題、気候変動(地球温暖化問題)、将来のASEMにおける更なる対話と協力等について議論が行われました。
9)日本・太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議
 2003年(平成15年)5月に、日本・太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議(通称:太平洋・島サミット)が沖縄で開催され、小泉総理を始め各国首脳級の参加があり、環境セッションでは、ゴミ処理、自然環境保全、地球温暖化等について議論が行われました。
10)交通と環境に関するマニラ政策対話(Manila Policy Dialogue on Environment and Transport in the Asian Region)
 2004年(平成16年)1月、環境省はフィリピン運輸通信省と「交通と環境に関するマニラ政策対話」を共同開催し、環境面から持続可能な交通の構築に向けた国・地域レベルの戦略計画策定の必要性を認識し、各国の環境と交通に関連した問題について情報交換・意見交換を進める地域フォーラムを設立することなど「マニラ宣言」において採択しました。
(キ)世界水フォーラムのフォローアップ
 2003年(平成15年)3月、日本政府が主催した第3回世界水フォーラム閣僚級国際会議において発表された「水行動集」をフォローアップするためのウェブサイト(「PWAウェブサイトネットワーク」http://www.pwa-web.org/)を11月に本格供用しました。また、水に関する国際会議への積極的な参加及び日本提案の水行動の具体的取組に着手する等、世界的な水問題の解決に向けた国際連携に努めました。
(ク)国内における取組
1)「アジェンダ21」に基づく取組
 日本は、「アジェンダ21」行動計画に則り、持続可能な開発の達成に向けた種々の取組を行っています。また、アジェンダ21においては、その実施主体として地方公共団体の役割を期待しており、地方公共団体の取組を効果的に進めるため、ローカルアジェンダ21を策定することを求めていますが、平成15年3月1日現在、47都道府県、12政令指定都市、318市区町村で策定されています。さらに、ヨハネスブルグ・サミットでは、国際環境自治体協議会(ICLEI)などのイニシアティブにより、ローカルアジェンダ21を具体的な行動に移していくための「ローカルアクション21」を進めていくことが合意されました。
2)持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)
 持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)では、ヨハネスブルグ・サミットで合意された実施計画の我が国におけるフォローアップ等について、情報の共有及び意見交換を行いました。
イ 二国間の枠組みによる連携
(ア)環境保護協力協定に基づく取組
 米国とは、2004年(平成16年)1月、東京で第12回日米環境保護合同企画調整委員会(JPCC)を開催し、両国の環境政策、化学物質対策などについて意見交換を行いました。
 ロシアとは、2003年(平成15年)6月に、第4回日露環境保護合同委員会を開催し、両国の環境政策について意見交換を行いました。また2003〜2004年度の環境保護協力計画について議論を行いました。
 韓国とは、2003年(平成15年)7月に、第8回日韓環境保護協力合同委員会が韓国において開催され、両国の環境政策などさまざまな環境問題について話し合われたほか、継続分19件とともに、新たに4件の新規プロジェクトを実施することが決定されました。
 このほか、ドイツ及び中国と環境保護協力協定に基づく協力を進めています。
(イ)科学技術協力協定に基づく取組
 米国、カナダ、フランス等との科学技術協力協定に基づく合同委員会が開催され、環境分野における共同研究等の協力が進められています。他にも、ドイツ、ロシア、中国等と科学技術協力協定に基づく協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施しています。
(ウ)その他の取組
 2003年(平成15年)7月に小泉総理大臣とブレア首相は日英首脳会談を行った際、気候変動問題など環境問題についても意見交換をしました。両首脳は、科学面、技術面及び政策面での日英両国の一層の協力が必要であるとして、「科学技術」、「排出量削減」などの6分野において日英間の具体的な協力を明らかにした「環境問題に取り組むための日英協力」と題する共同声明を発表しました。
 1997年(平成9年)9月に当時の橋本総理と中国の李鵬総理との間で「日中環境開発モデル都市構想」と「環境情報ネットワーク整備計画」の2本柱からなる「21世紀に向けた日中環境協力」について意見の一致をみました。「日中環境開発モデル都市構想」は、重慶、貴陽及び大連をモデル都市として大気汚染対策等に集中的に円借款等を供与するもので、専門家の派遣や開発調査等も組み合わせて事業を実施しています。また、「環境情報ネットワーク整備計画」は、中国の100都市に環境情報のためのコンピュータネットワークを無償資金協力で整備する構想で、2004年(平成16年)3月までにすべての都市についてネットワークの整備が行われました。
ウ 海外広報の推進
 環境省は、日本の環境政策の紹介のための広報パンフレット「Annual Report on the Environ-ment in Japan 2003」(図でみる環境白書の英語版)等海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行っています。また、アジア太平洋地域内の各国及び各国際機関がインターネットを通じて環境情報を提供するアジア太平洋環境情報ネットワーク(エコアジア・ネット、http://www.ecoasia.org/)により、英語による環境情報の提供を行っています。

(2)開発途上地域の環境の保全
 わが国は政府開発援助(ODA)による開発途上国支援を積極的に行っていますが、ODAの原則となる「政府開発援助大綱」が、社会・経済的な状況等の変化を受けて、平成15年8月29日に、11年ぶりに改定されました。『環境』は、「重点課題」の中の「地球的規模の問題」の一つとされ、『環境と開発の両立』が、引き続き「援助実施の原則」の第一番目に位置付けられています。さらに、「公平性の確保」といった「基本方針」や、「適正な手続きの確保」といった「効果的実施のために必要な事項」の中にも、『環境』が新たに明記されるなど、重要な観点として記述されています。
 さらに、ODAを中心としたわが国の国際環境協力についての理念、基本方針及び行動計画を示すものとして、平成14年8月に「持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ(EcoISD)」が表明されています。具体的には1)人間の安全保障、2)自助努力と連帯、3)環境と開発の両立の3つを理念とし、1)環境対処能力向上、2)積極的な環境要素の取り込み、3)我が国の先導的な働きかけ、4)総合的・包括的枠組みによる協力、5)我が国の経験と科学技術の活用の5つを基本方針とし、1)地球温暖化対策、2)環境汚染対策、3)「水」問題への取組、4)自然環境保全を重点分野とする行動計画を掲げています。
ア 技術協力
 国際協力機構(JICA)を通じて、研修員の受入、環境専門家の派遣、機材供与、またそれらを組み合わせた技術協力プロジェクト(表7-9-2)、さらに開発途上国の環境保全に関する計画策定を支援するための開発調査など、開発途上国への技術協力を積極的に行っています。



イ 無償資金協力
 無償資金協力は、居住環境改善(都市の上水道整備、地方の井戸掘削など)、地球温暖化関連(エネルギー効率向上)等の各分野において実施しています(表7-9-3)。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を積極的に実施しています。



ウ 有償資金協力
 有償資金協力は経済インフラ型案件・社会インフラ型案件への援助等を通じ開発途上国が持続可能な開発を進める上で大きな効果を発揮します。環境関連分野でも同様であり、上下水道、大気汚染対策、地球温暖化対策等の事業に対し、日本は国際協力銀行(JBIC)を通じ、積極的に円借款を供与しています(表7-9-4)。



エ 国際機関を通じた協力
 各種国際機関を通じた協力は、特に二国間協力のみでは十分に対応できない地球環境保全対策、共通の取組のための指針作り、情報量の少ない国・分野への取組等を進める観点から重要です。
 日本は、UNEPの国連環境基金、UNEP国際環境技術センター技術協力信託基金等に対し拠出を行っており、また、日本が主要拠出国及び出資国となっている国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これらの機関を通じた協力も環境分野では重要になってきています。
 地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国で行う地球環境保全のためのプロジェクトに対して、主として無償資金を供与する国際的資金メカニズムです。日本は主要な資金の拠出国として、実質的な意思決定機関である評議会の場等を通じて、GEFの活動に積極的に参画しています。

(3)国際協力の円滑な実施のための国内基盤の整備
 国際会議における専門的かつ技術的議論の進展と国際世論づくりに一層貢献していくため、政府内の専門家の育成に努めるとともに、政府外の専門家の知見の活用を図るため、NGO、学術研究機関、産業界などとの連携を強めました。
 また、開発途上国に移転可能な技術、国内に蓄積されている経験等各種情報を収集・整理し、円滑な技術移転のための基盤整備を進めました。さらに、国民の理解と支持を得るための環境省ホームページを活用した広報等を行いました( 『持続可能な開発に向けた国際環境協力』http://www.env.go.jp/earth/coop/coop/index.html)。

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