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第3節 

6 社会経済の主要な分野での取組

(1)物の生産・販売・消費・廃棄
ア 全般的な取組
 環境への負荷の評価手法であるLCAを製品選択に利用できるようにするための手法についての検討を行うなど引き続き所要の調査、研究、情報提供を行いました。
 環境保全型製品の普及促進については、製品のライフサイクルの観点を盛り込んだエコマーク制度を引き続き推進するとともに、消費者及び事業者への普及啓発を図りました。
 また、容器包装廃棄物に関しては、容器包装リサイクル法が平成12年度から完全施行され、飲料用紙パック、段ボールを除く紙製容器包装及びペットボトルを除くプラスチック製容器包装が新たに対象となりました。12年5月、再生資源利用促進法の一部が改正され、13年度から識別表示が義務化されることとなりました。
 さらに、地球温暖化、廃棄物・リサイクル問題など事業者を取り巻く環境制約の高まりを受けて、事業者が行う、海外でのエネルギー起源CO2の排出抑制事業、使用済み物品等の副産物の発生の抑制や再生部品の利用を新たな政策支援として追加する等の所要の改正を盛り込んだ、「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」の改正法が第156回国会で成立し、10月1日付けで施行されました。
 産業界では、地球温暖化問題への主体的取組として、(社)日本経済団体連合会は、1997年(平成9年)6月に経済団体連合会環境自主行動計画を策定しました。本計画は、2010年の二酸化炭素排出量を1990年比±0%以下に抑制することを目標とし、これまでに大きな成果を上げてきています。また、本自主行動計画の他にも、さまざまな業種で自主的な行動計画が策定されています。政府は、関係審議会等によりその進捗状況を点検し、その実効性を確保しています。また、行動計画を策定していない業種に対し、数値目標などの具体的な行動計画の早期の策定と公表を促すこととしています。
イ 農林水産業に関する環境保全施策
 農業においては、環境保全型農業の普及・定着に資するため、新たに土づくりと化学肥料、化学農薬の使用の低減をあわせて行う持続性の高い農業生産方式の導入に率先して取り組む農業者等の活動に対する支援や、生産方式導入の拠点となる施設整備を行いました。持続性の高い農業技術の普及に資する資料の作成や生産者団体、流通・消費者団体等が一体となった普及啓発活動を行うとともに、家畜排せつ物の適正な管理と耕種農業におけるたい肥の流通・利用を促進するため、たい肥化施設等の処理施設の整備等に取り組みました。また、未利用有機性資源等の循環利用・広域流通及び都市近郊から発生する生ごみ等の都市農業における活用の促進を図るため、都道府県におけるマスタープランの策定支援、生ごみの分別収集の啓発、たい肥化施設の整備等を行いました。さらに、生産基盤等の総合的整備の際に周辺環境基盤の造成整備を進めました。
 林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を推進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び治山事業等による機能が低下した保安林の保全対策、多様な森林づくりのための適正な維持管理、二酸化炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材利用の促進に引き続き努めています。
 水産業においては、「持続的養殖生産確保法」(平成11年法律第51号)に基づき、漁協等による養殖漁場の環境保全のための措置を講じました。また、つくり育てる漁業を推進するため、沿岸域の藻場・干潟の造成、底質改善等を実施しました。また、遺伝的多様性の確保、生態系への影響等に配慮しつつ、種苗の生産、放流等を実施し、養殖漁場の環境指標の設定と簡便な測定手法の開発を実施するとともに、内水面、海面における養殖業については、養殖業由来の環境負荷を低減するための実用的技術の開発を行いました。さらに、環境保全型養殖のガイドラインの策定等を行いました。一方、漁協等による「資源管理型漁業」を一層推進することにより、各地域の多種多様な漁業実態に即した水産資源の適切な保存・管理と持続的な利用を図るための事業を実施しました。
ウ 製造業・流通等に関する環境保全施策
 製造業・流通等においては、適切な環境対策指導を行うほか、省資源・再資源化推進のための環境整備事業を行いました。また、中小企業の公害対策について、実態を把握するとともに、中小企業自身の研究開発を支援しています。
 食品産業においては、生産段階では、環境に係る情報の提供、産業廃棄物管理票制度の普及推進を行いました。流通段階では、外食産業から排出される生ごみの有効利用化等を行いました。また、容器包装リサイクル対策を行うとともに、食品廃棄物の分別や運搬を行う技術、高度再生・変換利用技術など食品の資源循環システム構築に必要な技術の開発を実施しました。さらに、食品リサイクル法の普及啓発、先進的な食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入によるリサイクルの成果の実証を図ることにより、食品リサイクルを推進しました。

(2)エネルギーの供給と消費
 環境への負荷の少ないエネルギー供給構造の形成、汚染物質排出等に係る規制的措置を適切に実施するとともに、エネルギー消費効率向上に向けた取組を進めました。
 環境への負荷の少ないエネルギー供給構造を形成するため、発電部門、都市ガス製造部門等のエネルギー転換事業部門におけるエネルギー効率の向上や、環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を積極的に進めました。具体的には、燃料電池・太陽光等の新エネルギーの低コスト化・高性能化のための技術開発・実証試験や、事業者や地方公共団体等が新エネルギー設備を設置する際の補助を通じた導入促進等の支援措置を実施しました。また、海水・河川水・下水・ごみ焼却廃熱等の未利用エネルギーやコージェネレーション排熱を活用する熱供給システムの建設に対する支援等により、未利用エネルギー等の活用を進めました。さらに、平成15年4月に電気事業者に一定割合以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付ける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号。以下「RPS法」という。)を完全施行し、電力分野における新エネルギーの導入拡大に努めました。原子力については、原子力発電所を巡る一連の不正問題を十分に踏まえ、原子力安全対策の強化を行ったほか、原子力立地の推進の観点から施設と地域の末永い共生を実現するため電源三法交付金制度を抜本的に見直し、核燃料サイクル及びバックエンド対策に係る技術の開発等を進めました。
 省エネルギー対策についても、地球温暖化対策推進大綱に基づく省エネルギー対策を着実に実施しているところです。具体的には、平成15年4月に、近年エネルギー需要の増加の著しい民生業務部門のオフィスビル対策の強化等を進めるため「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年法律第49号)を改正しました。また、アイドリングストップ車の普及促進、省エネルギー型製品の普及促進を図るための販売事業者評価制度の創設、トップランナー基準対象機器の拡大(平成15年7月にLPガス乗用自動車を追加)、高効率給湯器の導入補助事業における対象機器の追加を行いました。さらに、省エネルギー技術戦略に沿った戦略的な省エネ技術開発に対する支援、IT技術を活用したエネルギーマネジメントシステムの開発・普及、包括的な省エネルギーサービスを提供するESCO(Energy Service Company)事業の普及促進等を実施しました。
 また一方で、燃料自体の更なるクリーン化を図るため、総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会石油製品品質小委員会において自動車燃料の更なる低硫黄化の検討を行い、硫黄分10ppm以下のガソリン・軽油の全面供給時期(ガソリンは平成20年、軽油は平成19年)を決めました。
 エネルギー政策全体の基本的な方針及び今後の施策の方向性については、「エネルギー政策基本法」(平成14年法律第71号)に定められた「安定供給の確保」、「環境への適合」、及びこれらを十分に考慮した上での「市場原理の活用」の基本方針に基づき平成15年10月にエネルギー基本計画を策定しました。
 さらに、エネルギー等の特別会計のグリーン化が一層促進され、新エネルギー対策、省エネルギー対策、京都メカニズムの活用等の取組が強化されました。

(3)運輸・交通
 運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車1台ごとの排出ガス・騒音規制の強化を着実に実施しました。また、自動車NOx・PM法に基づく自動車使用の合理化等の指導を進めるとともに、冬季における高濃度の大気汚染に対応するため、入出荷貨物車台数の抑制等を内容とする「季節大気汚染対策」を実施しました。さらに、12月を「大気汚染防止推進月間」として、広く国民を対象に、公共交通機関の利用促進を訴える等大気汚染防止のための普及・啓発活動を実施しました。

ア 低公害車の導入等
 国等の各機関では、グリーン購入法に基づき低公害車の優先的な調達を推進しているところですが、特に一般公用車については平成13年5月に内閣総理大臣から、1)原則として14年度以降3年を目途にすべて低公害車に切り替えること、2)13年度においても、交換車両はすべて低公害車とする努力をすることとの指示があったことから、これを円滑に推進するため、低公害車の導入計画を公表し、これに基づいた積極的な取組を進めているところです。幹部用公用車については、14年9月末までにすべて低公害車への切替えを完了しており、国の有する一般公用車についても、平成14年度末までに約45%の低公害車の導入が進みました。
 また、低公害性の抜本的な改良を目指す燃料電池自動車、ジメチルエーテル自動車、次世代ハイブリッド自動車、高効率天然ガス自動車等の次世代低公害車の技術開発を促進するとともに、政府においても試験的市販が開始された燃料電池自動車を率先導入しました。
 また、日本全国をアイドリングストップ機能付き自動車で横断し、信号待ちや渋滞時におけるアイドリングストップの著しい省エネ効果を確認するとともに、各地におけるシンポジウムや試乗会開催のほか、交通の方法に関する教則により、アイドリングストップの普及啓発を図りました。
イ 交通管理
 道路交通公害の防止に資する以下の対策を講じました。
1) 新交通管理システム(UTMS)の一環として、交通管制システムの高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン等を通じて交通渋滞、旅行時間等の交通情報を迅速かつ的確に提供しました。また、交通公害低減システム(EPMS)を神奈川県、静岡県、兵庫県において運用しました。さらに、3メディア対応型VICS対応車載機の導入・普及等を積極的に推進しました。
2) 都市部を中心に、各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めました。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、大量公共輸送機関の利用を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システム(PTPS)の整備等を推進しました。
3) 都市内における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制の見直し、悪質・危険性、迷惑性の高い駐車違反に重点を置いた取締り、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の整備、違法駐車防止条例の制定の働きかけ等のハード・ソフト一体となった駐車対策を推進しました。
4) 大気汚染・騒音・振動等の原因ともなっている過積載運転に対しては、荷主等の背後責任追及を積極的に実施するなど、取締りを一層強化しました。
5) 道路交通情報通信システム(VICS)の推進や交通安全施設の整備等による交通流対策及び公共車両優先システム(PTPS)等の整備による公共交通機関の利用促進により、交通渋滞の緩和を図り、自動車からの人工排熱の低減を目指したヒートアイランド対策に努めました。
ウ 物流の効率化
 物流の効率化を図り、環境負荷の少ない物流体系を形成するため、平成13年7月に策定された「新総合物流施策大綱」においても、地球温暖化問題や大気汚染等の環境問題への対応が重要な課題とされています。
 環境負荷が小さく効率的な物流体系を構築するため、荷主・物流事業者等の関係者が協力して環境負荷低減策に取り組む場合に一定の効果が認められる実証実験について補助金を交付しました。
 また、静脈物流システムの構築を図るための調査検討を実施しました。
エ 公共交通機関利用の促進
 自家用自動車に比べ環境負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換を促進するため、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を行うとともに、都市鉄道についても、三大都市圏(東京、大阪、名古屋圏)の圏域における新線建設、複々線化等を進め、混雑緩和、輸送力増強、速達性の向上、都市構造・機能の再編整備への対応、空港等へのアクセス機能の強化を図っています。また、貨物線の旅客線化、既設線の延伸、駅施設や線路施設の改良などの既存ストックの高度利用を推進するとともに、鉄道駅のバリアフリー化、乗継円滑化の措置を講じることによる利用者利便の向上に加え、交通事業者が行う先進的な「広域的な公共交通利用転換に関する実証実験」等に対する支援を通じて、ICカードの導入、乗り継ぎ利便の改善等による公共交通サービスの利便性の向上による利用促進に努めています。

(4)情報通信の活用
 テレワークSOHO、テレビ会議、高度道路交通システム(ITS)、電子商取引などさまざまな情報通信システムが普及することにより、交通の代替、交通流の円滑化、生産・流通の効率化やペーパーレス化などを通じて大きな環境負荷の低減効果が期待できます。
 テレワークに関しては、総務省と厚生労働省が共同で、普及啓発を目的としたシンポジウムを行いました。また、国土交通省では、先進的なテレワークの取組状況等を把握し、課題を解決するための方策の検討を行うとともに、テレワークによる客観的な効果の把握を進め、その結果をセミナーにより広く周知する等の普及啓発活動を実施しました。

(5)戦略的環境アセスメント
 平成12年12月に閣議決定された環境基本計画において、上位計画や政策における環境配慮のあり方について、現状での課題を整理した上で、内容、手法などの具体的な検討を行うとともに、国や地方公共団体における取組の実例を積み重ね、その有効性、実効性の検証を行い、それを踏まえてガイドラインの作成を図ることが定められています。
 これを踏まえ、個別の事業の計画・実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)や政策における環境配慮の具体的なあり方についての内容、手法等の検討を進めました。

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