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第7節 

2 鳥獣の保護管理の推進

(1)鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の施行
 「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」(大正7年法律第32号)が改正され、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(平成14年法律第88号。以下「鳥獣保護法」という。)が平成15年4月に施行されました。この改正では、法律の目的に「生物多様性の確保」が新たに加わり、鳥獣の保護を通じた生物多様性の確保の方向性が示されたほか、鳥獣の保護に支障を及ぼすおそれのある猟法による鳥獣の捕獲について、区域を定めて規制する「指定猟法禁止区域」制度の導入や、狩猟等に使用される鉛製銃弾による鳥獣の鉛中毒の防止等を図るために山野への捕獲した鳥獣の放置を禁止する規定等が新たに盛り込まれています。

(2)鳥獣保護事業及び鳥獣に関する調査研究の推進
 長期的ビジョンに立った鳥獣の科学的・計画的な保護管理を促し、鳥獣保護行政の全般的ガイドラインとしてより詳細かつ具体的な内容とした鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針(平成15年4月16日から19年3月31日まで)に基づき、鳥獣保護区の指定、有害鳥獣捕獲及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進しました。
 また、鳥獣の生息状況等に関する調査として、「鳥類観測ステーション」における標識調査、ガンカモ科鳥類の生息調査等渡り鳥の生息状況調査等を実施しました。

(3)適正な狩猟と鳥獣管理
 狩猟者人口は、昭和45年度の約53万人が平成13年度には約21万人にまで減少しており、しかも高齢化がかなり進んでいるため、有害鳥獣の捕獲に当たる従事者の確保が困難な地域も見受けられます(表6-7-2)。



 適正な管理下での狩猟は、鳥獣を適正な生息数にコントロールする手段として一定の役割を果たすことから、事故防止、違法行為防止の徹底等適正な狩猟を確保するため、都道府県及び関係狩猟者団体に対し、事故及び違法行為の防止を徹底し、適正な狩猟を推進するよう助言しました。
 なお、管理された狩猟や狩猟を行い得る場を指定している猟区は、放鳥獣などにより積極的に狩猟鳥獣の保護繁殖を図る一方で、入猟日、入猟者数等を制限することにより、秩序ある管理された狩猟を実現するための制度です。

(4)農林漁業被害の防止対策
 特定鳥獣保護管理計画の策定及び実施の推進を目的として、「野生鳥獣管理適正化事業」等に要する経費を地方公共団体に補助しました。また、将来にわたる鳥獣管理体制の構築及び担い手の育成を目的として、「野生鳥獣保護管理技術者育成事業」を実施しました。
 鳥獣を適正に管理し、農林業被害を軽減する農林生態系の管理技術の開発等の試験研究、防護柵等の被害防止施設の設置、効果的な被害防止システムの整備等の対策を推進するとともに、新たに農業被害防止に必要な知識の普及を図り、鳥獣との共生にも配慮した多様な森林の整備等を実施しました。
 また、近年、トドによる漁業被害が増大しており、トドの資源に悪影響を及ぼすことなく、被害を防ぐための対策として、被害を受ける定置網の高度強化を促進しました。

(5)鳥獣の生息環境の整備
 国指定鳥獣保護区とその周辺において、人の利用の適正な誘導、鳥獣の生態等に関する普及啓発、鳥獣の生息に適した環境の保全整備を図る「野生鳥獣との共生環境整備事業」を秋田県森吉山において実施するとともに、渡り鳥の渡来地である干潟の保全と環境学習などへの活用のための拠点施設の整備を愛知県の藤前干潟において実施しました。
 渡り鳥の保護対策としては、生息状況調査を実施したほか、出水平野に集中的に飛来するナベヅル、マナヅルについて、その生息環境を改善し、周辺への農業被害を軽減するために遊休地の確保等の事業を実施しました。また、ツル類について、集中して越冬することで生じる伝染病などの発生による種の絶滅の危惧や農業被害を軽減するために、調査を実施し、分散化などについて報告書をまとめました。

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