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第6節 

2 自然的環境の整備

(1)都市における緑地の整備等
 市町村による「緑の基本計画」の策定を通じた総合的かつ計画的な緑地の保全及び緑化を推進し、公共空間における緑のストックの増加、公共公益施設等における高木植樹の推進を図りました。
 がけ崩れ対策においては、貴重な緑の空間である斜面環境・景観を保全しつつ安全度を向上するため、既存樹木を活用した緑の斜面工法による斜面整備を推進しました。
 また、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を創出するため、市街地に隣接する山麓斜面にグリーンベルトとして一連の樹林帯の形成等を実施し、無秩序な市街化の防止や都市周辺に広がる緑のビオトープ空間の創出に寄与しました。

(2)都市公園等
 安全で安心な魅力ある都市づくり、個性と工夫に満ちた地域社会の形成、少子・高齢社会への対応、循環型経済社会の構築や地球環境問題への対応に重点をおいて、都市公園等整備事業の推進を図りました。
 国営公園については、全国17か所において整備を進めました。
 また、市町村が策定する「緑の基本計画」に基づき、都市の景観形成、環境改善及び防災機能向上のため、緑化の必要性が特に高い地区において緑地の整備等を実施する「緑化重点地区総合整備事業」、工場等からの大規模な土地利用転換など自然的環境を積極的に創出すべき地域や廃棄物の埋立処分等により良好な自然的環境が消失した地域において、自然的環境の再生、多様な生物の生息生育基盤の確保等を図る「自然再生緑地整備事業」等、各種施策に応じた都市公園等の整備を推進しました。また、水と緑のネットワークの形成に資するよう関連事業と連携し、効果的な事業の展開を図りました。

(3)国民公園及び戦没者墓苑
 旧皇室苑地の皇居外苑、新宿御苑及び京都御苑は国民公園として、広く一般に利用され親しまれています。千鳥ケ淵戦没者墓苑は戦後海外各地から収集された遺族に引き渡すことのできない戦没者の遺骨が安置されています。これら公園の快適な利用に資するため、園内の清掃や、芝生、樹木の手入れを行うとともに、平成15年度においては、新宿御苑玉藻池周辺歴史的景観復元工事等を行いました。

(4)河川環境等の整備
ア 河川とダム
 河川環境に関する基礎情報の収集整備のため、河川並びにダム湖及びその周辺における生物の生息・生育状況の調査を行う「河川水辺の国勢調査」を全国の一級河川及び主要な二級河川、国が管理するダム等で実施し、その結果を河川環境データベース(http://www.mlit.go.jp/river/IDC/)として情報提供を開始しました。また、河川環境に関する専門的知識を有する地域の方々の参加を得て、きめ細かな河川環境の管理に資する「河川環境保全モニター制度」を実施しました。
 自然環境に配慮した河川管理の取組として、世界最大規模の実験河川を有する自然共生研究センターにおいて、河川湖沼の自然環境保全・復元のための研究を行いました。また、生態学観点より川のあるべき姿を探ることを目的に河川生態学研究を実施しました。
 また、河川環境管理基本計画の策定を推進し、自然環境の保全に配慮するとともに、河川の蛇行復元や、乾燥化傾向にある湿地の再生を行うなどの自然再生事業を実施し、地域住民と連携しながら、渡り鳥等の生物の良好な生息・生育環境を有する自然河川や、湿地・干潟などのウェットランドの再生を進めました。また、良好な潤いのある水辺空間の保全並びに形成等を図る「河川環境整備事業」等を実施しました。また、治水上の安全性を確保しつつ、多様な河川環境を保全し、環境を改変せざるを得ない場合でも最低限の改変にとどめ、良好な自然環境の復元が可能となるように川づくりを行う「多自然型川づくり」、河川横断施設とその周辺の改良、魚道の設置等により魚類の遡上環境の改善を行う「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」等を実施しました。また、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」に基づき、河川環境に配慮した災害復旧を実施しました。
 ダム貯水池において整地、法面保護、緑化対策等を図り、ダム湖の活用、親水性の向上を図る「ダム湖活用環境整備事業」を実施し、また、ダム下流の河川環境の回復を目的とした「ダム水環境改善事業」を実施しました。
イ 砂防設備周辺等
 土砂災害の防止の実施に当たり、生物の良好な生息・生育環境を有する渓流・里山の環境等を保全・再生するため、NPO等と連携した山腹工などにより、里地・里山などの多様な自然共生型の砂防事業を推進しました。
 また、土砂災害の防止とあわせて、すぐれた自然環境や社会的環境を持つ地域等の渓流において、自然環境との調和を図り、緑と水辺の空間等の生活環境の整備、景観・親水性の向上や生態系の回復等を図り良好な渓流環境の再生など、個々の渓流の特色を活かした砂防事業を展開しました。
 がけ崩れ対策においては、貴重な緑の空間である斜面環境・景観を保全しつつ安全度を向上するため、既存樹木を活用した緑の斜面工法による斜面整備や崩壊土砂を捕捉する緩衝樹林帯整備を推進しました。
ウ 総合的な土砂災害
 河川環境等の面から土砂移動について配慮が必要であり、山地部から海岸までの土砂の運動領域を「流砂系」という概念で捉え、ダム堆砂の進行、河床低下、海岸侵食等の土砂管理上の問題が顕在化している流砂系において、砂防、ダム、河川、海岸の各領域が連携を図り、土砂の量と質に関するモニタリング等の取組を実施しました。

(5)港湾及び漁港・漁場における環境の整備
ア 港湾
 環境と共生する港湾(エコポート)の形成を目標に、水質・底質を改善する汚泥しゅんせつや覆砂、干潟の創出、緑地の整備などを推進しました。港湾の親水性を高め快適な環境を創出し、港湾を利用する人々に憩いの場を提供するため、平成15年度は神戸港等123港において緑地等の整備、大阪港等18港において干潟等の整備を行いました。また、歴史的港湾施設の保存、活用を図るとともに、周辺の環境整備を一体的に進める「歴史的港湾環境創造事業」を実施しました。なお、13年12月に都市再生プロジェクトとして決定された「臨海部における緑の拠点の形成」については、自然と共生する社会の実現にむけた自然再生型公共事業の一環として、東京港中央防波堤内側、大阪湾堺臨海部、同尼崎臨海部での大規模緑地整備が位置付けられており、尼崎臨海部において緑地整備に着手し、東京湾及び堺臨海部においては大規模緑地開発に関する調査を行いました。
 また、自然環境の保全との調和を図りつつ、快適な環境を創造する観点から、マリーナの整備を推進しています。
イ 漁港及び漁場
 漁港漁場整備長期計画に基づき、昭和50年代初頭の沿岸域の漁場環境に回復させることを目標として、藻場・干潟の保全・創造などの取組を推進するため、漁港区域内の汚泥・ヘドロの除去覆砂並びに藻場・干潟等の整備を行う水域環境保全対策等を全国6地区で実施したほか、藻場・干潟の整備保全事業を支援するための地方財政措置を講じました。
 さらに、海水交流機能を有する防波堤等の整備、水産動植物の生息、繁殖が可能な護岸等の整備等の整備を総合的に行う「自然調和活用型漁港漁場づくり推進事業」を全国47地区で実施しました。また、漁村の生活排水対策として漁業集落排水施設整備を全国124地区で実施しました。貝殻等の水産系副産物を漁港及び漁場の環境整備へ活用する「水産系副産物活用推進モデル事業」を全国2地区で実施しました。

(6)海岸における環境の整備
 多様な海洋性レクリエーション需要の増大に伴う海浜利用の進展に対処するとともに、快適で潤いのある海岸環境の保全と創出を図るため、砂浜の保全・復元により生物の生育・生息地を確保しつつ、景観上もすぐれた人と海の自然のふれあいの場を整備する「海岸環境整備事業」を平成15年度は、全国202か所において実施しました。

(7)緑化推進運動への取組
 緑化推進連絡会議を中心に国土の緑化に関し、全国的な幅広い緑化推進運動の展開を図っているところであり、「平成15年度緑化推進運動の実施計画」を取りまとめ、以下のような施策を実施し、運動の一層の展開と定着化を図りました。
1) 全国植樹祭等を開催する事業、森林ボランティアなどの森林づくりを促進する事業、学校林の活用を促進する事業等に助成し、その普及・啓発を推進しました。また、巨樹・巨木林や里山林等身近な森林・樹木の適切な保全・管理のために必要な技術開発と普及啓発を促進しました。さらに、「みどりの日」、「みどりの週間」(4月23日〜29日)を中心に緑化活動等の全国的な展開を推進したほか、緑の募金及び緑と水の森林基金の助成による森林整備等への取組を推進しました。
2) 都市緑化の推進に当たっては、「春季における都市緑化推進運動」期間(4〜6月)、「都市緑化月間」(10月)を中心に、その普及啓発に係る各種活動を実施したほか、緑の相談所(都市緑化植物園)、都市緑化基金の拡充強化等を図りました。
3) 身近な場所に実のなる木など野鳥の好む樹木等を保全又は植栽し、野鳥の観察のための施設の整備により、野鳥の生息に適した環境の創出と野鳥に親しむ場の整備を図る「小鳥がさえずる森づくり運動」を推進しました。

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