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第5節 

2 移動発生源対策

(1)自動車排出ガス対策
 大都市地域では、自動車保有台数の増加に伴う走行量の大幅な伸びなどにより、自動車排出ガスに起因する二酸化窒素、浮遊粒子状物質等による大気汚染は依然として厳しい状況であり、自動車排出ガス対策が求められています。
ア 自動車単体対策と燃料対策
 新車の排出ガスについては、昭和48年以降、大気汚染防止法に基づく規制を逐次強化し、自動車からの大気汚染物質の排出量を大幅に削減してきています(図2-5-7図2-5-8)。また、自動車の燃料の品質を確保することは、自動車側の対策と同様、自動車排出ガスによる大気汚染防止に必要な対策の一つであり、大気汚染防止法に基づき燃料中の硫黄分を大幅に低減させる等、逐次規制を強化してきています(図2-5-9)。







 特に、平成8年5月以降は、中央環境審議会で今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について継続的に審議が行われてきており、15年6月には二輪車及び特殊自動車の規制強化に関する第六次答申が、15年7月には燃料品質規制の強化に関する第七次答申が取りまとめられました(表2-5-2表2-5-3図2-5-10)。







 これら答申を踏まえ、平成15年8月には自動車排出ガスの悪化を防止する観点からガソリン中の含酸素率を燃料規制項目に追加する(表2-5-4)など、順次必要な制度を整備しています。



 また、大気環境の改善には使用過程車の排出ガス低減も重要であることから、事業者や地方公共団体によるディーゼル微粒子除去装置(DPF・酸化触媒)の装着について補助を行い、普及を促進しています。
 なお、第七次答申で取りまとめられた平成19年から軽油中の硫黄分の10ppm化が図られることを前提に、平成17年に実施される新長期規制以降の排出ガス低減目標値及びその達成時期について、技術的な評価を踏まえ可能な限り早期に結論を得るべく検討が開始されています。
イ 大都市地域における自動車排出ガス対策
 自動車交通量が多く交通渋滞が著しい大都市地域を中心とした、厳しい大気汚染状況に対応するため、関係省庁が連携して総合的な取組を行っています。なかでも平成13年6月に改正された自動車NOx・PM法(図2-5-11)に基づいて、15年7月から16年3月にかけて、関係8都府県により総量削減計画が策定されました。また、14年10月から開始された、同法による車種規制の円滑な施行を図るため、自動車取得税等の軽減措置の拡充や、担保要件の緩和を含む政府系金融機関による低利融資等の普及支援策を講じています。




(2)低公害車の普及促進
 平成13年7月に策定された「低公害車開発普及アクションプラン」に基づき、電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車及び低燃費かつ低排出ガス認定車を実用段階にある低公害車として位置付け、22年度までのできるだけ早い時期に1,000万台以上の普及を目指すこととしています。15年9月末現在での低公害車(軽自動車等を除く)の普及台数は、全国で約575万台です。
 また、次世代低公害車の本命と目される燃料電池自動車については、平成14年5月に、経済産業省、国土交通省及び環境省の副大臣で組織する「副大臣会議燃料電池プロジェクトチーム」が報告書を公表し、その中で、燃料電池自動車の実用化・普及を加速化させるため、戦略的技術開発、規制の再点検等の施策の強化・拡充等の提言を行いました。また、14年12月には、市販第1号となる燃料電池自動車を政府公用車として5台導入し、15年12月現在で8台導入しています。
ア 普及促進のための補助施策等
 自動車税のグリーン化、低公害車の取得に関する自動車取得税の軽減措置、所得税・法人税についての特別償却又は税額控除措置を講じています。また、地方公共団体や民間事業者による低公害車導入に対し、各種補助を行っています。
 また、低公害車普及のためのインフラ整備については、国による設置費用の一部補助と燃料等供給設備に係る固定資産税等の軽減措置を実施しており、平成14年度末までに258か所の燃料等供給施設(エコ・ステーション)が設置されています。
イ 政府による低公害車の導入
 国の各機関においても「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)に基づき、一般公用車への低公害車の導入が進められており、平成15年3月末現在で、3,147台(一般公用車のうち45%)が低公害車に切り替えられています。計画では、16年度末までにすべての一般公用車を低公害車に切り替える予定です。

(3)交通流対策
ア 交通流の分散・円滑化施策
 バイパス、環状道路をはじめとする道路網の体系的整備、交差点及び踏切道の改良を推進しました。平成15年度には、ETCの整備・普及を促進し、主に料金所の渋滞解消並びに料金所周辺の環境改善を図りました。また、VICSの情報提供エリアのさらなる拡大及び道路交通情報提供の内容・精度の改善・充実に努めたほか、信号機の高度化、公共車両優先システム(PTPS)の整備、総合的な駐車対策等により、環境改善を図りました。環境ロードプライシング施策を試行し、住宅地域の沿道環境の改善を図りました。
イ 交通量の抑制・低減施策
 「新総合物流施策大綱」等に基づき、共同輸配送の推進や物流拠点の整備等を行いました。都市における公共交通機関の整備やサービス・利便性の向上、さらに約180箇所の交通結節点の整備を進め、公共交通機関の利用促進を図りました。交通需要マネジメント施策の推進を図り、地域における自動車交通の調整、交通サービスの改善等を行う実証実験に対して、渋滞緩和・環境対策上等の有効性等が見込まれるものについては認定し、事業費の一部を補助しました。

(4)微小粒子状物質に関する検討
 近年、SPMの中でも微小粒子状物質(PM2.5)と健康影響との関連が懸念されつつあることから、PM2.5の測定法について調査・検討を実施しました。さらに、PM2.5の健康影響の評価を進めるため疫学調査や実測調査、動物実験等を含む微小粒子状物質等暴露影響調査を実施しました。また、ディーゼル排気粒子(DEP)については引き続き実測調査を実施しました。さらに、粒径がおおむね50nm以下の極微小粒子(環境ナノ粒子)についても生体影響が懸念されていることから、動物実験等の調査を開始しました。

(5)船舶・航空機・建設機械の排出ガス対策
 船舶からの排出ガスについては、国際的動向を踏まえ、排出削減技術の動向等を把握して排出削減手法等を検討しており、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案」を第159回国会に提出したところです。
 航空機からの排出ガスについては、国際民間航空機関(ICAO)の排出基準を踏まえ、「航空法」(昭和27年法律第231号)により、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等について基準が定められ規制されていますが、平成20年以降に開発されるエンジンについては、日本も参加しているICAO航空機環境保全委員会(CAEP)において窒素酸化物の排出基準の強化を図ることが合意されました。こうした国際的動向を踏まえつつ、空港周辺の環境保全のための対策について調査検討を行っているところです。
 建設工事に伴う排出ガスについては、公共事業を中心に窒素酸化物等を低減している排出ガス対策型建設機械の使用を推進するとともに、排出ガスをさらに低減した建設機械の開発を促進しています。

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