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第3節 

2 地球温暖化対策

 二酸化炭素は、人間活動のあらゆる局面から生じるものであり、このため、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠です。また、地球温暖化対策を推進するに当たっては、環境と経済の両立に資する仕組みを整備・構築していく必要があります。
 平成15年度に政府が国内で講じた主な施策は次のとおりです。

(1)エネルギー起源二酸化炭素の排出抑制対策
ア エネルギー需要面の対策について
 経団連環境自主行動計画に基づく、産業界における省エネルギー・二酸化炭素排出削減のための対策の進捗状況について、関係審議会においてその内容の聴取を行い、フォローアップを実施しました。
 また、トップランナー対象機器として除外されている品目(ガスオーブン等)を対象に追加するための検討を行ったほか、特定建築物の新築・増改築時の省エネルギー措置の届出を義務付けた「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年法律第49号)の改正(平成14年6月)について、着実に運用を行いました。
 さらに、クリーンエネルギー自動車を含む低公害車の開発・普及の促進を図るため、民間事業者等に対する購入補助を実施したほか、自動車税のグリーン化、低公害車を取得した場合の自動車取得税の軽減措置等の支援等を実施しました。交通流対策としては、高度道路交通システム(ITS)の推進等を行いました。物流の効率化については、モーダルシフト関連施策の推進を含め、環境負荷が小さく効率的な物流体系の構築に取り組みました。その他、公共交通機関の利用促進のため、鉄道新線・新交通システムの整備等を図りました。
イ エネルギー供給面の対策について
 電気事業者に販売電力量に応じて一定割合の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付ける、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号。以下「RPS法」という。)について全面施行しました。

(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の排出抑制対策
 廃棄物の減量・再資源化、ごみ焼却余熱・下水排熱等の有効利用を図るため、新世代下水道支援事業制度リサイクル推進事業未利用エネルギー活用型及びごみ焼却発電施設整備事業に対し引き続き国庫補助等を行いました。

(3)代替フロン等3ガスの排出抑制対策の推進
 代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)については、11分野22事業者団体が策定している産業界の行動計画の進捗状況のフォローアップを行いました。また、新規代替物質の研究開発等を行いました。さらに、「特定家庭用機器再商品化法」(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)及び「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(平成13年法律第64号。以下「フロン回収破壊法」という。)が制定され、HFC等フロン類の回収・破壊の制度が整備されています(図1-3-1)。




(4)革新的技術開発
 温室効果ガスの排出抑制のためのより高度な新エネルギー技術や省エネルギー技術、水素製造技術、二酸化炭素の固定化・有効利用等の革新的技術開発について、引き続き積極的に推進しました。

(5)国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動の推進
ア 国及び地方公共団体による取組
 平成14年7月、地球温暖化対策推進法に基づき、「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」を閣議決定しました。この計画は政府自らが率先して、温室効果ガスの排出抑制等に取り組むことで、地球温暖化対策への取組姿勢をアピールするものであり、同計画において、政府は自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスを18年度までに13年度比で7%削減することを目標としています。
 平成14年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は、197万トン-CO2(基準年度値の0.4%増)となりました(表1-3-1)。



 地球温暖化対策推進法においては、地域レベルでの取組を推進するため、1)地方公共団体の事務・事業に係る実行計画の策定義務付け、2)区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策の策定に努めること、3)地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての都道府県地球温暖化防止活動推進センター(都道府県センター)を指定できること、4)地方公共団体、都道府県センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等からなる地球温暖化対策地域協議会を組織できることによる、パートナーシップによる地域ぐるみの取組の推進、等を図ることとしています。
 平成15年度においては、全都道府県において実行計画が策定されたほか、14年の法律改正を踏まえ、NPO法人が都道府県センターとして指定される等、地域レベルの取組が着実に進んでいます。
イ 地球温暖化防止に向けての国民運動の展開
 国民一人ひとりの地球温暖化防止のためのライフスタイルを見直していく取組の一環として、第4回環の国くらし会議(平成15年5月)、第5回環の国くらし会議(平成16年1月)を開催し、各界のオピニオンリーダーである会議メンバーから国民一人ひとりの自発的な取組を促すメッセージを発信するとともに、各種メディアを使用した普及啓発を行いました。
 地球温暖化対策を周知・普及するため、12月の地球温暖化防止月間に、地球温暖化防止活動環境大臣表彰の実施や、地球温暖化対策地域推進全国大会の開催等、集中的に広報活動を行いました。また、全国地球温暖化防止活動推進センター(全国センター)において、国民の地球温暖化防止に向けた取組を支援しました。

(6)温室効果ガス吸収源対策の推進
 温室効果ガス吸収源対策の推進を図るため、二酸化炭素吸収源である森林の適切な整備・保全等を推進しました。また、地球温暖化対策推進大綱で目標とされた森林による吸収量3.9%の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進、国民参加の森林づくり等の総合的な取組を内容とする「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」を展開しました。

(7)国内排出量取引
 国内排出量取引制度については、知見や経験の蓄積に努め、これを踏まえて、京都メカニズムを活用するために必要となる制度のあり方等について、引き続き検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講じることとなります。
 平成15年度においては、現在の国内制度を前提にCDM/JIプロジェクトにより取得したクレジット(排出削減量)を国内で取引するための基盤整備のための試行事業や、必要とされた場合に備えた排出量の算定・検証、削減目標の設定等に係る技術的な知見を集積するための試行事業を行いました。

(8)税、課徴金等の経済的手法
 税、課徴金等の経済的手法については、第7章第3節参照

(9)排出量・吸収量算定のための国内制度の整備
 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関して、平成15年10月に条約事務局から派遣される専門家による訪問審査を受け入れ、インベントリの整備体制や算定方法の改善について検討しました。

(10)観測・調査研究の推進
 地球温暖化に係る不確実性を低減させ、科学的知見を踏まえた一層適切な対策を講じるため、引き続き、現象解明、将来予測、影響評価及び対策に関する研究、温室効果ガスの観測並びに人工衛星等を用いた観測技術の開発を実施しました。また、地球環境研究総合推進費等を活用し、これらの調査研究等の推進を図りました。

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