前のページ 次のページ

第3節 

2 日本発の国際標準を作る動き

 日本としてもISO/IEC等への対応として、幅広い分野での取組を進めています。中でも環境分野において、積極的に進めているものがあります。
 具体的には、日本の標準化機関である日本工業標準調査会(JISC)が、「環境JISの策定促進のアクションプログラム」に基づき、環境JISの策定を進めるとともに、ISO、IEC等への国際規格提案に積極的に取り組んでいます。
 これらの環境関連の分野の例を見てみましょう。

(1)光触媒空気浄化性能試験
 平成4年にファインセラミックスに関する国際標準化を目的としたISOの専門委員会が設立され、日本が幹事国となりました。ファインセラミックスは、光触媒技術にも利用されており、平成15年10月に「光触媒空気浄化性能試験方法の国際標準化活動に着手すべき」との日本提案が委員会で採択されました。これは、光触媒材料上に既知濃度の窒素酸化物(NOx)混入空気を流し、NOxがどのくらい除去されるかを測定する試験方法を規定したものです。
 また、国際標準化活動と並行して日本工業規格(JIS)「ファインセラミックス―光触媒材料の空気浄化性能試験方法―第1部:窒素酸化物の除去性能」が平成16年1月に制定されました。

(2)燃料電池
 平成15年に米国は「水素経済のための国際パートナーシップ(IPHE)」の設立を発表し、水素・燃料電池に係る技術開発に力を入れている国・機関に参加を呼びかけました。IPHEは、水素・燃料電池に係る技術開発、基準・標準化、情報交換等を促進するための国際協力枠組みの構築を目指すものです。平成15年11月に米国で開催された閣僚会議では、IPHEの枠組文書を発行するとともに、同枠組みの下に設置された2つの委員会のうち、全体の企画運営を担当する運営委員会の副議長を日本が務めることとなりました。今後、日本は、燃料電池に関する優れた技術力を活かし、産官学の連携により戦略的に研究開発等を進めると同時に、積極的に燃料電池の基準・標準化の検討に関与していくことが必要です。

(3)今後の環境分野における国際標準化の取組
 総合科学技術会議は、平成15年6月に「知的財産戦略について―研究開発・知的戦略・標準化戦略の一体的推進及び大学等の知的財産活動の活性化のために―(意見)」を提言しました。特に産学官による戦略的な国際標準化活動の強化を進めることが重要であると提言しました。
 また、(社)日本経済団体連合会では、平成16年1月に「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」を公表しました。官民一体となった国際標準化への取組が急務であると提言しています。その他、企業の果たすべき役割、重点分野における戦略的国際標準化活動の推進についても考え方を示しており、環境の重要分野の例として、燃料電池等を挙げています。
 環境面での日本の技術水準は、世界でも最先端のものが多くあります。今後、産業界、行政、大学等が協力して、日本発の環境標準を提案し、国際合意の形成に能動的に関与し、貢献していく必要があります。こうした国際標準の策定の場に、日本が戦略的に人的資源を投入することは、日本発で環境と経済が好循環する世界市場を作り出すためにも重要です。

前のページ 次のページ