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第1節 

1 くらしの環境革命を目指して

 近年、心豊かで質の高いくらしを求め、くらしを見直すいくつもの芽を見ることができます。

(1)自然とのふれあいを求めて
 人工物に囲まれた生活を送る人が多い現在、多くの人がもっと自然とふれあうことを求めています。世論調査で「自然とふれあう機会をもっと増やしたいと思うか」という問いに対し、「増やしたいと思う」と答えた人は、全体の72.8%でした(図3-1-1)。



 「自然保護が必要な理由」として「自然は人間の心にやすらぎやうるおいを与えてくれるから」と考える人や、「子供たちの健全な成長や自然を学ぶ場として大切だから」と考える人が多いという結果が出ています(図3-1-2)。



 現在住んでいるところより、生活が便利なところを望んでいるか、自然環境に恵まれたところを望んでいるかという調査結果では、自然環境に恵まれたところを望む人(43.7%)が、生活が便利になることを望んでいる人(35.5%)より多く、前回調査(平成6年)より増加しています(図3-1-3)。



 自然に囲まれて、景色の美しさ、木々や花の香り、鳥や風の音、森の静けさなどを感じることは、都会の便利さより魅力的に考える人もいるでしょう。今後、情報通信を活用した在宅勤務等が普及することにより、都会から離れても不便さを感じずに、田舎で仕事に取り組めるようになることも期待されます。
 
(2)環境の心とわざとの融合による相乗効果
 、第1章で見てきた優れた「環境のわざ」を活用することにより、これまでの生活の質(便利さ、快適さ)は維持しながら、環境に配慮する可能性が開けてきます。また、一人ひとりが第2章で見てきた「環境の心」を持ち、積極的に環境に配慮することで、物量の多さ、便利さや快適さのみを無制限に追求するくらしから脱却することができます。そして、「環境のわざ」と「環境の心」が結びつくことにより、より相乗的な環境保全効果が期待できる新しいライフスタイルが生まれます。
 第2章で見てきたように、「日常生活が環境に及ぼす影響」についての関心は高く、多くの人が「日常生活が環境に及ぼす影響」の情報を求めています。これらの情報が「わざ」と「心」の橋渡しをして、日常生活での環境配慮に役立ちます。
 例えば、家電製品の「環境のわざ」が進展しても、消費者が「環境の心」を持ってこのわざを使わなければ、環境保全効果は期待できません。そこで、家庭での使用電力量から環境負荷を表示することにより環境保全行動を促すシステムがあります。しかし、このシステムだけでは時間が経過するにつれて、環境保全効果が薄れてくる傾向にあります。そのため、消し忘れを防止したり、普段の生活習慣に合わせて電源等を自動的に制御することにより省エネルギーと快適性を同時に追求するシステムが開発されています。

コラム 情報が省エネをもたらす
1)省エネナビ
 省エネナビは、家庭での使用電力から省エネ効果が一目でわかるように金額に換算して表示する機器システムのことで、測定器と表示器から構成されています。測定器から1分ごとに送信される消費電力データを料金に換算して表示し、各家庭で決めた目標に対する使用量の割合を知らせます。目標を超えると省エネ度インジケーターや警報ブザーで知らせてくれます。家庭用以外にも、オフィス用の省エネナビもあります。(財)省エネルギーセンターの家庭用のモニターでは、1年平均で約13%の低減効果がありました。

2)家庭用エネルギーマネジメントシステム(HEMS)
 HEMSは、家庭内における電化製品を最適制御することにより、省エネルギーと快適性を追求した住環境制御システムです。具体的には、人感センサーによって消し忘れを防ぎ、システムに学習能力を付与することにより家庭内の使用状況に応じた最適の電源や温度設定の制御等を行うものです。現在、導入に向けた研究が進められています。またIT技術を活用することによりネットワークで結び、省エネナビ同様にエネルギー使用量を表示することで、意識啓発につなげることもできます。地球温暖化大綱においては、2010年までに全家庭の30%以上にHEMSを導入することを目標にしています。また、業務用ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)もあります。

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