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第2節 

2 環境に配慮した投資

 日本の個人金融資産は平成15年末で約1,410兆円余りであり、これが銀行や保険会社、証券会社等を通じて投資資金となっていますが、近年の環境保全に対する個人意識の高まりを受け、環境面に配慮した金融商品が注目されています。

(1)社会的責任投資(SRI)とエコファンド
 収益面といった財務的観点のみならず、環境問題や社会問題に前向きに取り組む事業者へ投資することを社会的責任投資と呼びます。社会的責任投資のうち特に環境面に着目し、環境配慮に優れていたり、優れた環境パフォーマンスを上げている事業者に積極的に投資しようとする投資信託が、エコファンドと呼ばれます。エコファンドは多くの国で、事業者の環境に配慮した事業活動の促進材料となっています。投資対象となる企業を選定する観点から、企業の環境配慮の取組状況を勘案するためには、事業者の環境情報の開示が特に重要で、環境情報を開示するツールとして環境報告書や環境会計が活用されています。
 社会的責任投資という考え方は欧米では早くから登場しており、1990年代に入り環境面での評価もこれに加わるようになりました。米国では、社会的責任投資全体での2003年における資産残高は約237兆円(Social Investment Forum,2003 Trends Reportをもとに、仮換算レート:1ドル110円で試算したもの。)となっています。一方日本では、1999年に社会的責任投資の一つであるエコファンドが初めて発売されるなど、社会的責任投資の歴史は欧米に比べると浅く、エコファンドの資産残高は一時2,000億円を超える規模にまで拡大しましたが、その後は、株式市場の低迷等も重なり、現在1,000億円を下回る金額で推移しています。

(2) 個人投資家に対する普及に向けて
 「社会的責任投資に関する日米英3か国比較調査報告書」(環境省、平成15年度)では、日本と米国、英国を含めた3か国の個人投資家に対して社会的責任投資への認知度や意識について以下の比較研究を行っています。
 企業の社会的責任について「関心がある層」については米国、英国に比べて日本が高く、また証券投資をする際に企業の社会的責任を考慮に入れて投資判断を行うべきと考える人は、日本は米国、英国と同じ割合を占めています(図2-2-5図2-2-6)。その一方で、「既に購入している層」は日本では全体のわずか0.4%にとどまっており、個人投資家の低い購買率が課題といわれているほかの2国ですら、日本の5〜10倍となっています。このことから、社会的責任投資を活発にしていくこととする場合は、「関心がある層」を、いかにして実際の購買行動に結びつけるかが課題といえます。





 日本では、社会的責任投資に「関心がある層」の3分の2以上が、また「関心がない層」の半数以上が、エコファンドなどについての情報不足を訴えています(図2-2-7)。今後、情報不足を解消して実際の購買行動へと結びつけるためには、社会的責任投資の内容や考え方の広報、運用報告書の工夫、社会的責任投資に携わる販売員の教育や研修等が有効と考えられます。


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