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第7節 

1 調査研究及び監視・観測等の充実

(1)研究開発の総合的推進
 平成14年6月に総合科学技術会議によって決定された「平成15年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」の中では、環境分野については、地球温暖化研究、ゴミゼロ型・資源循環型技術研究、自然共生型流域圏・都市再生技術研究、化学物質リスク総合管理技術研究及び地球規模水循環変動研究の5課題に対して、特に重点化することとしています。
 この方針の下、環境分野については、以下の課題を含む研究開発関連施策を展開します。

 ア 地球温暖化研究
 地球環境研究総合推進費(環境省)、環境負荷低減型燃料転換技術開発費補助金(経済産業省)、温室効果気体観測技術衛星(GOSAT)(文部科学省)、地球シミュレータ計画推進(文部科学省)、地球環境変動が水資源に与える影響評価及び対策技術・手法開発(国土交通省)

 イ ゴミゼロ型・資源循環型技術研究
 一般・産業廃棄物・バイオマスの複合処理・再資源化プロジェクト(文部科学省)、農林水産バイオリサイクル研究(農林水産省)、廃棄物処理等科学研究費補助金(環境省)

 ウ 自然共生型流域圏・都市再生技術研究
 重要生態系監視地域モニタリング推進事業(環境省)、自然共生型国土基盤整備技術の開発(国土交通省)、流域圏における水循環・農林水産生態系の自然共生型管理技術の開発(農林水産省)

 エ 化学物質リスク総合管理技術研究
 化学物質リスク評価・管理技術の高度化(厚生労働省)、ナノテクノロジーを活用した環境技術開発推進事業(環境省)、河川等環境中における化学物質リスクの評価に関する研究(国土交通省)

 オ 地球規模水循環変動研究
 地球規模水循環変動が食料生産に及ぼす影響の評価と対策シナリオの策定(農林水産省)、地球規模水循環に対応する水管理技術に関する研究(国土交通省)
 総合科学技術会議はリーダーシップを発揮しつつ、関連府省との連携のもと、これら課題を中心とした環境分野の研究開発をシナリオ主導型のイニシアティブとして推進していきます。

(2)環境省関連試験研究機関の整備と研究の推進
 ア 独立行政法人国立環境研究所
 中期計画に基づき、重点研究分野を中心に、重点特別研究プロジェクト、政策対応型調査・研究、基盤的調査・研究、知的研究基盤の整備等の環境研究を推進していきます。また、環境情報の提供を進めていきます。

 イ 国立水俣病総合研究センター
 国立水俣病総合研究センターにおいては、水銀汚染問題に関するわが国の経験の蓄積を活用し、国際共同研究等の国際協力に貢献していくなど本章第10節1(1)イ(イ)に掲げた施策を進めていくこととしています。

(3)公害防止等に関する調査研究の推進
 環境省に一括計上する平成15年度の関係行政機関の試験研究機関(国立機関及び独立行政法人)の地球環境保全等に関する研究のうち、公害の防止等に関する各府省の試験研究費は、総額16億4,490万円であり、8省庁25試験研究機関等において、環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現、自然と人間との共生の確保等環境基本計画に定める長期的な目標の達成に資するため、環境の現状の的確な把握、環境汚染による環境変化の機構解明、環境汚染の未然防止、汚染された環境の修復等環境研究技術の幅広い領域にわたり、69の試験研究課題を実施します。
その内容は次のとおりです。

 ア 大気環境の保全に資するための研究
 各種発生源からの窒素酸化物、ベンゼン等大気汚染物質排出抑制技術の開発等に関する7課題の研究を継続して実施するほか、自動車排ガス現場計測用超音波流量計の実用化に関する研究を新たに実施します。

 イ 水環境の保全に資するための研究
 排水対策技術、モニタリング技術、地下水浄化技術等に関する9課題の研究を継続して実施するほか、内湾窒素循環過程における干潟・浅海域−湾央域生態系の相互作用の解明に関する研究を新たに実施します。

 ウ 土壌環境の保全に資するための研究
 汚染土壌の修復技術、リスク評価・管理等に関する3課題の研究を継続して実施します。

 エ 循環型社会形成に資するための研究
 廃棄物の処理技術、再利用技術の開発等に関する5課題の研究を継続して実施します。

 オ 生物多様性の保全に資するための研究
 わが国における生物多様性の保護・管理等に関する7課題の研究を継続して実施するほか、海外から導入する農業用昆虫類の希少種、在来種等への影響評価手法と導入指針の作成に関する研究等新たに4課題の研究を実施します。

 カ 都市・生活環境の保全に資するための研究
 都市における総合的な環境保全を図るため、騒音及び悪臭の発生源対策技術等に関する4課題の研究を継続して実施するほか、GISを用いた騒音被害軽減のための交通管理支援システムに関する研究等新たに3課題の研究を実施します。

 キ 環境の監視、観測及び影響の予測評価技術の充実に資するための研究
 測定技術の精度向上及び信頼性の確保、測定対象の特性に見合った新たな計測技術の開発等に関する5課題の研究を継続して実施するほか、目視判定等の利用による高感度水質計測技術の簡素化に関する研究を新たに実施します。

 ク 化学物質等の環境リスク対策に資するための研究
 化学物質等のリスク評価、評価手法の開発等に関する12課題の研究を継続して実施するほか、環境中の酸化ストレス誘起性化学物質が免疫系に与える影響に関する研究等新たに2課題の研究を実施します。
 また地域における環境問題について地方公共団体と国が共同で研究を実施する地域密着型環境研究として、ノリ加工用海水の浄化再生に関する研究等3課題の研究を継続して実施するほか、ガス状ほう素化合物による大気汚染監視測定技術及び除外技術の開発等新たに2課題の研究を実施します。

(4)地球環境研究に関する調査研究等の推進
 地球環境保全のための科学的基盤づくりを進め、国際的取組に積極的に貢献するため、平成15年度においても「地球環境保全調査研究等総合推進計画」を策定し、調査研究、観測・監視等の総合的な実施体制を確保します。さらに、総合科学技術会議の地球温暖化研究イニシアティブに基づき、地球温暖化の現状把握と今後予想される自然や社会・経済の影響、それらに的確に対応するための各種技術や方策について、政府一体となって戦略的・集中的に調査研究を行います。
 「地球環境研究総合推進費」については、予算額約30億円を計上し、引き続き学際的、国際的、省際的な観点から地球環境研究の総合的な推進を図ります。
 また、「地球環境保全試験研究費」においては、引き続き地球温暖化の防止に関する研究の中でも、特に政府としての推進・調整が重要である関係行政機関の試験研究機関又は関係行政機関の行う研究を、政府として強力かつ効果的に進めます。
 「地球環境戦略研究機関」(IGES)においては、第1期戦略研究プロジェクトの成果を踏まえ、気候変動や都市環境管理などのテーマに引き続き取り組むとともに、平成13年度からの第2期戦略研究計画に基づき新たに環境と経済などのプロジェクトを開始し、アジア・太平洋地域を中心とする国際的連携の下で21世紀の持続可能な社会の実現のための戦略研究を推進していきます。

(5)地球環境に関する観測・監視
 観測・監視については、世界気象機関(WMO)の全球大気監視(GAW)計画の一環として、温室効果ガス、CFC、オゾン層、有害紫外線等の定常観測を引き続き実施するとともに、日本周辺及び西太平洋海域における洋上大気・海水中の二酸化炭素等の定期観測、オゾンレーザーレーダーを用いたオゾンの高度分布の測定及びエーロゾルライダーを用いたエーロゾルの高度分布の測定を継続します。さらに、黄砂に関する情報を発表する体制を整えます。
 また、平成14年12月に打ち上げたオゾン層破壊の現象解明や気候変動の実態把握への貢献が期待される環境観測技術衛星(みどりII)の定常運用を行うとともに、平成16年度打上げ予定の陸域観測技術衛星(ALOS)の開発、さらには温室効果気体の観測等を目的とした衛星(GOSAT)の開発研究等、人工衛星による観測・監視手法等の開発利用を一層推進します。さらに、海洋地球研究船「みらい」等を用いた観測研究、観測技術の研究開発を引き続き推進するとともに、深海地球ドリリング計画を推進し、地球規模の諸現象の解明・予測等の研究開発を推進します。
 さらに、第45次南極地域観測隊が昭和基地を中心に、海洋、気象、電離層等の定常的な観測のほか、地球規模の気候変動の解明を目的とした地球規模のモニタリング、研究観測等を実施します。
 また、全国の気象官署における観測開始以降の観測資料の利用を促進するなど、地球温暖化の状況等に関する調査研究を推進し、地球温暖化予測の精度向上を図ります。また、GPS装置を備えた検潮所に精密型水位計を整備して地球温暖化に伴う海面水位上昇の監視体制を強化し、海面水位監視情報の提供業務に着手します。

(6)廃棄物処理等科学研究の推進
 廃棄物に係る諸問題の解決とともに循環型社会の構築を推進するため、平成15年度においても、総合科学技術会議の「ごみゼロ型・資源循環型技術研究イニシャティブ」に基づき、競争的資金を活用し広く課題を募集し、研究事業及び技術開発事業を実施します。
 研究については、「廃棄物処理に伴う有害化学物質対策研究」「廃棄物適正処理研究」「循環型社会構築技術研究」の分野において、社会的必要性が高く独創的な研究を、技術開発については、「廃棄物適正処理技術」「廃棄物リサイクル技術」「循環型設計・生産技術」の分野において、実用性、経済性が見込まれる次世代を担う廃棄物処理等技術の開発を図ります。

(7)基礎的・基盤的研究の推進
 環境技術開発等推進費による「基礎研究開発課題」及び「自然共生型流域圏・都市再生技術研究課題」に対して引き続き助成を行うことにより、環境技術の開発・普及の促進を図ります。

(8)環境保全に関するその他の試験研究
 環境保全に関する試験研究では、ほかにも下記のようなものがあります。
 電子デバイス製造プロセスで使用するエッチングガス(PFC)の代替ガス・システム及び代替プロセスの開発、地球上の二酸化炭素の分布を調査する広域環境影響モニタリング調査等を実施するほか、温室効果ガスの固定化・有効利用・処分技術の研究開発として、二酸化炭素の海洋隔離に伴う環境影響予測技術の開発、二酸化炭素の地中貯留技術の開発、二酸化炭素から次世代の液体燃料であるメタノールを合成する技術の開発、エネルギー効率が高く、オゾン層を破壊せず、地球温暖化効果の小さい新規フロン代替物質の省エネルギーな合成技術の開発、二酸化炭素や環境負荷物質の排出の少ない環境調和型生産技術の研究開発、バイオテクノロジーを利用した植物による原料生産技術を確立するための研究開発等を引き続き実施します。
 また、環境への負荷が小さく、新たな海洋空間の創造が可能な超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)に関する研究開発、窒素酸化物を大幅に削減できる環境低負荷型舶用推進プラント(スーパーマリンガスタービン)の実用化を促進していきます。さらに、同ガスタービンを搭載し、環境的にも経済的にもすぐれた次世代内航船(スーパーエコシップ)の研究開発を引き続き実施するほか、外航海運分野からの環境負荷(バラスト水問題*、温室効果ガス問題)の低減と採算性を両立した低環境負荷型外航船(グリーンシップ)の研究開発を実施します。
 油流出の際、精度の高い漂流予測が必要であることから、漂流予測手法の高度化を図るための研究・開発を引き続き行います。
 また、自然環境に配慮した河川管理の取組の一つとして、岐阜県の木曽川三派川地区に設置した世界最大規模の実験河川を有する自然共生研究センターにおいて、河川湖沼の自然環境保全・復元のための基礎的・応用的研究を行います。
 さらに、生態学的観点より河川を理解し、川のあるべき姿を探ることを目的として河川生態学術研究を実施します。
 循環型社会及び安全な環境の形成のための建築・都市基盤整備技術の開発、シックハウス対策技術の開発、自然共生型国土基盤整備技術の開発、地球温暖化に対応した国土保全支援システムに関する研究等を引き続き実施するとともに、河川等環境中における化学物質リスクの評価に関する研究や建設分野における混合廃棄物について発生抑制、収集・集積、加工・処理、流通及び再生資材活用の資源循環を推進するための技術体系や普及基盤の開発のために建設廃棄物の合理的な再資源化技術に関する研究等に着手します。
 環境負荷を低減し、持続的農業を推進するための革新的技術の開発、家畜排せつ物や食品廃棄物等の有機性資源のリサイクル技術の開発、地球温暖化が農林水産業に与える影響の評価や二酸化炭素、メタン等の温室効果ガスの排出削減・固定化技術の開発と化石燃料代替エネルギーとしてバイオマスを用いた新エネルギー生産技術の開発、流域圏における水・物質循環の機構及び農林水産生態系の機構を解明し、流域圏環境を総合的に管理する手法の開発、野生鳥獣による農林業被害を軽減する管理技術の開発等を実施するとともに、農林水産生態系におけるカドミウム、ダイオキシン等の有害化学物質についての動態把握と生物・生態系への影響評価、分解・無毒化技術の実証研究等を通じたリスク低減技術の開発、地球規模水循環変動が食料生産に及ぼす影響の評価と対策シナリオの策定に関する研究開発に着手します。
 高度電磁波利用技術に関する国際共同研究、衛星搭載センサによるグローバル計測技術、環境情報の高度利用技術の研究開発等、電磁波を利用した地球環境計測技術に関する開発・調査研究を実施します。
 また、地球規模の高度海洋監視システムの構築を目指すARGO計画を引き続き推進するとともに、二酸化炭素等の温室効果ガスの直接観測を可能とする成層圏プラットフォームの研究開発を推進します。
 さらに、地球規模の複雑な諸現象を忠実に再現することを目指した超高速コンピュータ「地球シミュレータ」の運用を引き続き行い、地球温暖化予測研究等の推進を図ります。
 異常気象や地球温暖化に伴う水資源利用可能量や、降水量のパターンの変動に対応するため、水資源利用可能量の変化、ダム等の機能への影響、水需給バランス等への影響等をさまざまな気候変動パターンに応じて予測するシステムの技術開発を行うとともに、これらの影響を回避・最小化するための対策手法・技術の開発を行います。
 東京都と神奈川県の都県境付近をモデル地区として、交通流データと大気汚染データをリアルタイムで交通管制センターに集約し、その相関関係を体系的に分析するとともに、信号制御の高度化、交通情報板を用いたう回誘導、都県境を越える信号制御の連動等により地区全体の交通公害を低減する「環境対応型交通管制モデル事業」を引き続き推進します。
 昨年度に引き続き、国際共同研究を行い、各研究テーマについて年度内に最終的な成果を得る予定です。

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