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第2節 

8 社会経済の主要な分野における各主体の役割

(1)物の生産・販売・消費・廃棄
 ア 全般的な施策
 事業活動への環境配慮の織り込みを深めるため、環境マネジメントシステムや環境会計の導入、環境パフォーマンス評価、ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施についての検討を行うなど、引き続き調査研究と情報提供を行います。
 環境保全型製品の普及促進については、製品のライフサイクルの観点を盛り込んだエコマーク制度について、製品の環境情報を消費者に提供することも含め、引き続き推進します。
 また、ISOにおける標準化等国際的動向を踏まえつつ、製品の定量的な環境負荷に関する情報を提供する環境ラベルのあり方について、引き続き検討を行います。
 廃棄物・リサイクル対策については、廃棄物の発生抑制、適正なリサイクル及び適正処理を進めます。

 イ 農林水産業における環境保全施策
 農業の持続的な発展を図るためには、農業に本来備わっている自然循環機能の維持増進により、環境と調和のとれた農業生産の確保を図ることが重要であるため、「持続性の高い農業生産方式」の導入を推進し、導入を図ろうとする農業者に対し金融・税制上の支援や技術の普及に資する資料の作成を行います。また、土壌中の有機物の蓄積によるCO2の排出抑制や、効率的な土づくり、消費者・食品産業との連携による安全でおいしい農産物の供給等の推進と持続性の高い農業生産方式の導入の促進を図るため、関係者からなる協議会の開催、たい肥・稲わら利用等の技術実証、たい肥施設の整備を推進します。
 林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化防止対策の推進を図るため、育成複層林施業等の森林整備を促進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び多様な森林づくりのための適正な維持管理に努めるほか、二酸化炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材の利用を促進します。このため、木材利用推進関係省庁連絡会議の場等を通じて、木材の利用の可能なところは例えば擬木に代えて木材を積極的に利用するなど、関係省庁の連携を強化し、木材利用の促進を図ります。
 水産業においては、持続的養殖生産確保法に基づく漁協等による漁場改善計画策定のための取組を促進します。また、つくり育てる漁業を推進するため、「海の畑づくり」として、沿岸域の藻場・干潟の造成、底質改善等を実施、養殖漁場の環境指標の設定と簡便な測定手法の開発を実施するとともに残餌を最小化する効率的な給餌システムの開発を行います。さらに、環境保全型養殖のガイドラインの策定等を行うとともに、環境に負荷を与えない陸上における閉鎖循環式の養殖技術の開発を行います。一方、「資源管理型漁業」を一層推進することにより、各地域の漁業実態に即した資源管理の実践の成果がより漁業経営に反映する取組を計画的かつ効果的に展開していくための事業を実施します。

 ウ 製造業における環境保全施策
 製造業においては、適切な環境対策指導を行うほか、省資源・再資源化推進のための環境整備事業を行います。中小企業の公害対策について、実態を把握するとともに、中小企業自身の研究開発を支援します。
 食品産業においては、生産段階では、環境に係る情報の提供、産業廃棄物管理票制度の普及を推進します。流通段階では、飲食店等の食品廃棄物から製造される肥飼料等の特性と効果的利用法を把握するための検討、消費者のリサイクル意識を向上させるための外食事業者の活動支援を行います。消費段階では、家庭から発生する廃食用油の効率的な回収システムを構築します。
 また、消費者の環境に配慮した食行動への取組促進のための、食生活指針の普及・啓発を行います。
 さらに、これら各段階を通じ、共通的、基盤的対策として、容器包装廃棄物リサイクル対策を行うとともに、食品廃棄物の分別や運搬を回収技術、高度再生・変換利用技術など食品の資源循環システム構築に必要な技術の開発を実施します。
 上記に加え、平成13年5月に施行された食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律に基づく、生産・流通・消費を通じた食品循環資源の再生利用等の推進に向け、同法やすぐれた取組事例等に関する普及啓発、民間の技術開発の支援、すぐれた食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入を図り、リサイクルの成果の実証を図ることにより、そのリサイクルを推進していきます。

(2)エネルギーの供給と消費
 経済活動のあらゆる局面がエネルギーに関係しており、その供給から消費の過程で各種の環境への負荷を発生することから、環境への負荷の少ないエネルギー供給構造の形成、エネルギー消費効率向上に向けた取組を進めるとともに、大気汚染防止法等に基づいた汚染物質排出等に係る規制的措置を適切に実施します。
 環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を図るとともに、2010年度における新エネルギーの導入目標(原油換算で1,910万kl)を達成するため、バイオマス、太陽光発電等新エネルギーの技術開発・導入促進及び環境整備を積極的に推進します。また、燃料電池及び水素エネルギー利用に関する実用化に向けた施策の強化・拡充を行います。さらに、平成15年4月1日より「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」が完全施行され、電気事業者に一定割合以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用の義務が始まるのを受け、引き続き、法の適切な措置を図ります。また、安全性の確保を大前提として、原子力発電を推進することをエネルギー政策の観点のみならず、地球温暖化対策の観点からも重要な課題と位置付け、今後、2010年度までの間に原子力発電電力量を2000年度と比較して約3割増加させることを目指し、原子力発電所の新増設が必要です。このことから、安全対策・防災対策の充実に努めるとともに、原子力発電施設及び核燃料サイクル関連施設の立地を促進するため実効性の高い地域振興策を講じ、核燃料サイクル及びバックエンド対策に係る技術の開発等を進めます。
 今後も引き続き地球温暖化対策推進大綱に基づき、現行の省エネルギー対策及び追加対策(原油換算約5,700万kl)の着実な達成に向けて取り組んでいきます。具体的には、現行の対策に加え、改正省エネ法の着実な実施、高効率給湯器の導入補助事業における対象機器の追加、省エネ機器の販売促進を図るための販売事業者対策の強化、省エネルギー技術戦略に沿った戦略的な省エネ技術開発に対する支援等を新たに実施していきます。
 さらなる二酸化炭素排出量削減のための対策が必要であることを踏まえ、電力等の燃料転換等を促進するため、老朽石炭火力発電所の高効率LNGコンバインド−サイクル発電への転換、石炭等を燃料とする産業用ボイラー等における天然ガスへの燃料転換等を支援する施策を実施します。
 サマータイム制度の導入に関しては、平成11年5月に「地球環境と夏時間を考える国民会議」の報告書において、「サマータイム制度の導入を図るべき」との結論を得たことを受け、国民世論の合意形成のための広報活動を引き続き展開します。

(3)運輸・交通
 交通に係る環境への負荷を低減するためには、交錯輸送の排除や輸送効率の向上など交通需要そのものを軽減又は平準化することに努めるとともに、自動車構造の改善、道路交通管理、道路構造、物流の効率化等の面から環境の保全に関する施策を総合的に推進する必要があります。そのため、以下の対策を実施します。
 地方公共団体や民間事業者が低公害車を導入する際の補助や公害健康被害の補償等に関する法律(公健法)の基金等による助成、新たに超低PM排出ディーゼル認定車に対する自動車取得税の軽減措置を設けるなどの自動車税のグリーン化等の税制上の特例措置を通じて、低公害車のさらなる普及促進を図ります。さらに、地方運輸局単位に官民で構成したエコ・トラック推進協議会による民間活力を通じた低公害トラックの導入促進等を図ります。
 アイドリングストップ機能付き自動車を導入する者に対し、通常車両との差額の一部を補助する制度を導入します。さらに、全国各地での講習会・試乗会の実施、モニターの募集、レンタカーへの導入等、アイドリングストップに対する国民各層への総合的な普及啓発を図っていきます。
 また、次世代低公害車の本命と目されている燃料電池自動車について、わが国において世界に先駆けた早期実用化を図るため、燃料供給から自動車走行まで一貫した大規模な公道走行実証試験を首都圏で実施、燃料電池自動車を大量生産するために必要となる型式指定が取得可能となるよう安全・環境に関する技術基準を整備するために必要な試験を実施するほか、高効率燃料電池システムの実用化技術開発や、標準基準の整備に向けた研究開発を行います。
 加えて、産官学の適切な連携により、現行の大型車に代替するジメチルエーテル自動車や次世代ハイブリッド自動車、高効率天然ガス自動車等の技術開発を促進するほか、燃料の種類によらず、排出ガス性能基準により低公害性を評価する低排出ガス車の認定制度を実施し、低公害車のさらなる普及促進を図ります。
 平成15年度より、運輸分野におけるCO2排出量削減の達成に資するための、公共交通への利用転換を促進するために、交通事業者が行う先進的な利便性向上策に係る実験に対して支援します。
 また、自動車からのNOx、SPM、CO2等の排気量は、発進・停止回数の増加や低速走行に伴い増加するとされており、渋滞時にはこれらの大気汚染物質、温室効果ガスが大量に排出されることとなるため、交通の円滑化及び交通需要の軽減、平準化は、大気汚染・地球温暖化防止のために有効な対策と位置付けられています。
 信号機、交通管制センター、光ビーコン等の交通安全施設は、「20世紀の負の遺産」である渋滞の解消に極めて高い効果を発揮することから、信号機の設置・改良、交通管制システムの高度化等を推進し、交通の円滑化を図ります。また、この一環として光ビーコンを用いた個々の車両と交通管制システムとの双方向通信により、ドライバーに対してリアルタイムの交通情報を提供するとともに、交通の流れを積極的に管理し、「安全・快適にして環境にやさしい交通社会」の実現を目指す新交通管理システム(UTMS)を推進します。具体的には、そのサブシステムであるバス優先信号制御やバス専用・優先レーンの設置等によりバスの定時性、利便性の向上を図る公共車両優先システム(PTPS)等の一層の整備を推進します。さらに、道路交通情報を車載機へリアルタイムに提供する道路交通情報通信システム(VICS)については、平成14年度までに全国において運用を開始しており、引き続き情報提供エリアの拡大、コンテンツの高度化等を図るとともに、3メディア対応型VICS対応車載機の導入・普及等を積極的に推進します。
 また、VICSなどのメディアで運転者に渋滞情報、交通規制情報等の道路交通情報を提供するとともに、道路交通情報提供事業に係る環境整備を図ることにより、交通流・量を現実の交通状況に応じて適正に配分、誘導するなどして、大気汚染・地球温暖化の防止を図ります。
 ETCについては、平成15年度には基本的に全ての料金所に整備を推進します。
 さらに、違法駐車は、幹線道路等における渋滞を悪化させる要因となっていることから、駐車規制の見直し、指導取締り、違法駐車抑止システム・駐車誘導システム等の整備、違法駐車防止条例の制定の働き掛け等のハード・ソフト一体となった駐車対策を推進します。
 このほか、自動車交通需要を軽減、平準化する交通需要マネジメント(TDM)、客待ちや貨物の積卸し等のため自動車を継続的に停止させるときのアイドリングストップに関する広報・啓発等を推進するとともに、交通事故が多発している住居系地区や商業系地区を「あんしん歩行エリア」として指定の上、信号機、光ビーコン等の交通安全施設等を重点的に整備し、生活道路における通過交通の進入抑制や速度抑制、幹線道路における交通流円滑化等を推進します。
 また、道路交通騒音対策、振動対策等の観点から、通過車両の走行速度を低下させ、エンジン音等を低く抑えるための最高速度規制や、相対的にエンジン音等の大きい大型車を沿道から遠ざけるための中央寄り車線規制等の交通規制、著しい騒音等を生じさせている速度超過車両や消音器等の不法改造車両の取締り等の対策を推進します。
 環境負荷の低減を促進する荷主や物流事業者を支援するために、モーダルシフト等への取組に対して平成14年度から実証実験として補助を実施しましたが、平成15年度においても「環境負荷の少ない物流体系の構築に向けた実証実験」として、さらに多くの取組に対しても補助して行く予定です。
 また、規制の見直し、利便性向上、多目的国際ターミナル等交通基盤の整備を通じて物流効率化を一層推進します。同様に大気汚染等の環境問題への対応では、排出ガス規制の強化、低公害車の開発・普及、環状道路整備等の交通容量の拡充に加え、TDM施策等による都市内交通の円滑化や環状道路周辺等への物流拠点の立地促進を行います。

(4)その他
 ア 余暇活動
 観光・余暇活動における自然とのふれあいを推進するため、国立・国定公園などの自然公園や、長距離自然歩道などの身近な自然が残されている地域等において、自然環境等に配慮しつつ国民が多様な自然体験ができるよう自然学習や自然探勝のフィールドの整備を促進するとともに、これに携わる人材の育成やプログラムの充実を図ります。

 イ 情報通信の活用
 情報通信の活用は、交通との代替や交通流の円滑化、生産・流通活動の効率化を通じて環境への負荷の低減や循環型の経済社会システムの構築に資することが期待されています。
 そこで、情報通信を活用した新しい働き方であるテレワーク・SOHOを推進するため、普及を促進する情報通信システムの開発や調査研究、先進的な団体等の表彰やシンポジウム、サテライトセミナーの開催による周知啓発の支援等を実施します。
 また、女性や高齢者等がテレワークを気軽に実施することができる環境を整備するとともに、テレワーク普及促進に先進的な都市を国が支援する「モデル都市制度」を創設するための検討を行います。

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