4 海洋環境の保全
平成8年6月にわが国が締結を行った「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)は、第12部海洋環境の保護及び保全において、いずれの国も海洋環境を保護し及び保全する義務を有すると定めており、このような条約の趣旨を踏まえ、海洋生態系の保全を含めた海洋環境保全のための施策の充実強化を図ります。
(1)未然防止対策
未然防止対策としては、日本に寄港する船舶に対して立入検査を行い、SOLAS条約やMARPOL条約等の基準を満たしているかどうかを確認するポートステートコントロール(PSC)の強化を行っていきます。また、昨年末に発生したプレステージ号事故の教訓を踏まえ、船舶からの油流出事故を防止するための国際的な規制のあり方を検討することが必要との認識から、IMO(国際海事機関)を通じて積極的な国際的対応を図っていくこととしています。
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(海防法)に基づき、船舶によって、ばら積み輸送される未査定液体物質の査定等を行います。また、漂流・漂着するプラスチック類の実態調査等を踏まえ、発生源対策を図ります。
また、近年における海洋環境問題が主として日常生活に伴う環境への負荷によって生じるものであることから年2回の「海洋環境保全推進週間」等を利用して、海事、漁業関係者のみならず広く一般市民に対し、海洋環境保全思想の普及啓発に努めるとともに、海洋環境保全講習会等を通じて、関係者に対する指導を引き続き実施します。
巡視船艇・航空機の効率的な運用等により厳重な監視取締りを行うとともに、監視取締用資器材の整備等、監視取締体制の充実強化を図ります。さらに、船舶の不法投棄については、「廃船指導票」を貼付することにより、投棄者自らによる適正処分の促進を図ります。
また、座礁・沈船による漁場環境や漁業への影響及び過去の事故の解決事例等について実態調査を行います。
さらに、良好な漁場環境の維持・保全を図るため、廃棄物の回収、除去等を行う水域環境美化活動推進事業に助成します。さらに、良好な漁場環境の保全を図ることを目的とした漁民の森づくりの活動に助成します。
(2)排出油等防除体制の整備
環境保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、1)情報収集・提供システムの整備、2)関係地方公共団体、環境NGO等に対する研修・訓練の実施、3)傷病鳥獣の適切な救護体制の整備、4)油処理剤等の海洋環境への影響調査等を推進します。
また、重油流出事故等の状況把握のための衛星データ利用研究を、宇宙開発事業団において実施します。
大規模石油災害時に災害関係者の要請に応じ油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行います。
また、漁場保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、1)油防除・回収資機材の整備、2)関係都道府県等に対する汚染防止機材の整備への助成、3)防除指導者の育成のための講習会及び実地訓練等への助成、4)流出油が海洋生態系に及ぼす長期的影響調査を行います。
最近におけるタンカーの大規模油流出事故を契機とし、国際的な安全・環境基準を満たさないいわゆるサブスタンダード船の排除が世界的に喫緊の課題となっています。
この課題に対応するため、平成14年1月に東京において開催された「交通に関する大臣会合」の結果を受け、今後は、これに基づきサブスタンダード船の排除に向けた国際的な協調・連携を進めていくこととしています。
また、海上における油等の排出事故に対処するため、巡視船艇・航空機の常時出動体制の確保及び防除資機材の充実を図るとともに機動防除隊の業務執行体制の強化、海上災害防止センターへの指導、排出油防除に関する協議会等の組織化・広域化の推進及びこれらの協議会との連携の下に行う各種訓練等の内容の充実を図ることにより、官民一体となった排出油防除体制の充実を図ります。また、マリンレジャーの活発な相模湾に整備した次世代型海流監視システムにより、漂流予測体制の強化を引き続き図ります。さらに、沿岸域における情報整備として「沿岸海域環境保全情報」の整備を引き続き行い、データベースの情報の充実を図ります。
油等の海上浮遊物の防除活動に資するため、一週間程度の長期にわたる漂流予測情報の精度向上を図っていきます。
(3)赤潮防止対策
赤潮防止対策としては、ヘテロカプサ等有害プランクトンにより引き起こされる赤潮に対して、漁業被害の防止のための技術開発、ケイ藻赤潮の予察技術開発、各閉鎖性海域の特徴を踏まえた赤潮被害防止対策確立のための調査、赤潮防除に関する手法の検証及び開発・普及の推進等を行うヘテロカプサ赤潮等緊急対策事業等を実施するとともに、赤潮発生状況等の調査等について助成します。
(4)漁業被害救済対策
原因者不明の油濁事故に対処するため、(財)漁場油濁被害救済基金の救済事業等に助成を行います。また、漁業共済制度において養殖共済の赤潮特約に係る純共済掛金について助成を行います。