8 社会経済の主要な分野における各主体の役割
(1)物の生産・販売・消費・廃棄
ア 全般的な取組
環境への負荷の評価手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)を製品選択に利用できるようにするための手法についての検討を行うなど引き続き所要の調査、研究、情報提供を行いました。
環境保全型製品の普及促進については、製品のライフサイクルの観点を盛り込んだエコマーク制度を引き続き推進するとともに、消費者及び事業者への普及啓発を図りました。
また、容器包装廃棄物に関しては、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)が平成12年度から完全施行され、飲料用紙パック、段ボールを除く紙製容器包装及びペットボトルを除くプラスチック製容器包装が新たに対象となりました。平成12年5月、再生資源の利用の促進に関する法律(再生資源利用促進法 平成3年法律第48号 事業活動における再生資源の利用を促進することを目的としている。)の一部が改正され、平成13年度から識別表示が義務化されることとなりました。
また、産業界では、地球温暖化問題への主体的取組として、経済団体連合会は、1997年6月に経済団体連合会環境自主行動計画を策定しました。本計画は、2010年の二酸化炭素排出量を1990年比±0%以下に抑制することを目標とし、これまでに大きな成果を上げてきています。また、本自主行動計画の他にも、さまざまな業種で自主的な行動計画が策定されています。政府は、関係審議会等によりその進捗状況を点検し、その実効性を確保しています。また、行動計画を策定していない業種に対し、数値目標などの具体的な行動計画の早期の策定と公表を促すこととしています。
イ 農林水産業に関する環境保全施策
農業においては、環境と調和した生産が可能であるという農業本来の特質の発揮を通じた環境保全型農業の普及・定着に資するため、新たに土づくりと化学肥料、化学農薬の使用の低減をあわせて行う持続性の高い農業生産方式の導入に率先して取り組む農業者等の活動に対する支援や、生産方式導入の拠点となる施設整備を行うほか、技術の普及に資する資料の作成や生産者団体、流通・消費者団体等が一体となった普及啓発活動を行うとともに、家畜排せつ物の適正な処理と耕種農業におけるたい肥の流通・利用を促進するため、たい肥化施設等の処理施設の整備、関係者からなる協議会の開催等に取り組みました。また、未利用有機性資源等の循環利用・広域流通及び都市近郊から発生する生ゴミ等の都市農業における活用の促進を図るため、食品産業、耕種農業、畜産業等の関係者からなる協議会の開催、都道府県におけるマスタープランの策定支援、生ゴミの分別収集の啓発、たい肥化施設の整備等を行いました。さらに、生産基盤等の総合的整備の際に周辺環境基盤の造成整備を進めました。
林業においては、持続可能な森林経営及び地球温暖化対策の推進を図るため、造林、保育、間伐等の森林整備を推進するとともに、計画的な保安林の指定の推進及び、多様な森林づくりのための適正な維持管理、二酸化炭素の貯蔵庫となるなどの特徴を有する木材利用の促進に引き続き努めています。
水産業においては、「持続的養殖生産確保法」に基づき、漁協等による養殖漁場の環境保全のための措置を講じました。また、つくり育てる漁業を推進するため、「海の畑づくり」として、沿岸域の藻場・干潟の造成、底質改善等を実施するとともに、放流魚介類により自然界に生息する魚介類の遺伝的悪影響を生じさせないよう生態系保全型種苗生産技術開発事業を実施し、養殖漁場の環境指標の設定と簡便な測定手法の開発を実施するとともに内水面、海面における養殖業については、低コストで効果的な養殖場の環境改善システムの開発を行いました。さらに、環境保全型養殖のガイドラインの策定等を行うとともに、環境に負荷を与えない陸上における閉鎖循環式の養殖技術の開発を行いました。一方、「資源管理型漁業」を一層推進することにより、各地域の漁業実態に即した資源管理の実践の成果がより漁業経営に反映する取組を計画的かつ効果的に展開していくための事業を実施しました。
ウ 製造業に関する環境保全施策
製造業においては、適切な環境対策指導を行うほか、省資源・再資源化推進のための環境整備事業を行いました。また、中小企業の公害対策について、実態を把握するとともに、中小企業自身の研究開発を支援しています。
食品産業においては、生産段階では、環境に係る情報の提供、産業廃棄物管理票制度の普及推進を行いました。流通段階では、外食産業から排出される生ゴミの有効利用化等を行いました。消費段階では、家庭から発生する廃食用油を回収するリサイクルシステムの普及モデル事業等を行いました。
また、消費者の環境に配慮した食行動への取組促進のため、食生活指針の普及・啓発を行いました。
さらに、これら各段階を通じ、共通的、基盤的対策として、容器包装廃棄物リサイクル対策を行うとともに、食品廃棄物の発生抑制・廃棄物の高度利用、環境負荷の総合的な低減等に関する技術、食品製造工程における省エネルギー化技術等の開発を実施しました。
上記に加え、平成13年5月に施行された食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律に基づく、生産・流通・消費を通じた食品循環資源の再生利用等の推進に向け、同法の普及啓発、先進的な食品リサイクルシステムの構築及び食品リサイクル施設の導入によるリサイクルの成果の実証を図ることにより、食品リサイクルを推進しました。
(2)エネルギーの供給と消費
経済活動のあらゆる局面がエネルギーに関係しており、その供給から消費の過程で各種の環境への負荷を発生することから、地球温暖化防止行動計画、地球温暖化対策推進大綱、地球温暖化対策の推進に関する法律、石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律、石油代替エネルギーの供給目標、エネルギーの使用の合理化に関する法律、大気汚染防止法等に基づき、環境への負荷の少ないエネルギー供給構造の形成、汚染物質排出等に係る規制的措置を適切に実施するとともに、エネルギー消費効率向上に向けた取組を進めました。
環境への負荷の少ないエネルギー供給構造を形成するため、発電部門、都市ガス製造部門等のエネルギー転換事業部門におけるエネルギー効率の向上や、環境への負荷の少ない新エネルギーの導入拡大を積極的に進めました。具体的には平成14年1月の政令改正により、バイオマス及び雪氷のエネルギー利用を新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法上の新エネルギーとして明確に位置付け、国の支援等の対象とするとともに、燃料電池・太陽光等の新エネルギーの低コスト化・高性能化のための技術開発・実証試験や、事業者や地方公共団体等が新エネルギー設備を設置する際の補助を通じた導入促進等の支援措置を実施しました。また、海水・河川水・下水・ごみ焼却廃熱等の未利用エネルギーやコージェネレーション排熱を活用する熱供給システムの建設に対する支援等により未利用エネルギーの活用を進めました。さらに、平成14年6月に電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法を公布しました。原子力については、原子力発電所を巡る一連の不正問題を十分に踏まえ、原子力安全対策の強化を行ったほか、原子力立地の推進の観点から施設と地域の末永い共生を実現するため電源三法交付金制度を抜本的に見直し、核燃料サイクル及びバックエンド対策に係る技術の開発等を進めました。
省エネルギー対策についても、地球温暖化対策推進大綱に提示されている現行及び今後の省エネルギー対策(原油換算約5,700万kl)を着実に実施しているところです。具体的には、省エネ法の改正(近年エネルギー需要の増加の著しい民生業務部門のオフィスビル対策の強化等)、省エネルギー技術戦略(エネルギー需要側の課題を克服し、省エネ技術の開発・導入を進めていく指針)の策定、トップランナー基準対象機器の拡大(ガス・石油機器等7品目を追加)、高効率給湯器の普及促進、IT技術を活用したエネルギーマネジメントシステムの普及促進、省エネをビジネスとするESCO(Energy Service Company)事業の普及促進等を実施しました。
(3)運輸・交通
運輸・交通分野における環境保全対策については、自動車1台ごとの排出ガス・騒音規制の強化を着実に実施しました。また、自動車NOx・PM法に基づく自動車使用の合理化等の指導を適切に進めるとともに、冬季における高濃度の大気汚染に対応するため、入出荷貨物車台数の抑制等を内容とする「季節大気汚染対策」を実施しているほか、12月を「大気汚染防止推進月間」として、広く国民を対象に、公共交通機関の利用促進を訴える等大気汚染防止のための普及・啓発活動を実施しました。
ア 低公害車の導入等
国等の各機関では、グリーン購入法に基づき低公害車の優先的な調達を推進しているところですが、特に一般公用車については平成13年5月に内閣総理大臣から、1)原則として平成14年度以降3年を目途にすべて低公害車に切り替えること、2)平成13年度においても、交換車両はすべて低公害車とする努力をすることとの指示があったことから、これを円滑に推進するため、低公害車の導入計画を公表し、これに基づいた積極的な取組を進めているところです。特に、大臣、副大臣などの幹部用公用車については、平成14年9月末までにすべて低公害車への切替えを完了しました。
また、低公害性の抜本的な改良を目指す燃料電池自動車、ジメチルエーテル自動車、次世代ハイブリッド自動車、高効率天然ガス自動車等の次世代低公害車の技術開発を促進するとともに、政府においても試験的市販が開始された燃料電池自動車を率先導入しました。
また、日本全国をアイドリングストップ機能付き自動車で横断し、信号待ちや渋滞時におけるアイドリングストップの著しい省エネ効果を確認するとともに、各地でシンポジウムや試乗会等を開催することにより、アイドリングストップの普及啓発を図りました。
イ 交通管理
安全で円滑な交通流を形成し、維持することは、自動車交通に起因する大気汚染・騒音・振動等の低減を図る上で重要なことであり、道路交通公害の防止に資する以下の対策を講じました。
1) 新交通管理システム(UTMS)の一環として、交通管制システムの高度化等により、交差点における発進・停止回数を減少させるとともに、光ビーコン等を通じて交通渋滞情報、旅行時間情報等のリアルタイムな交通情報を迅速かつ的確に提供することにより、交通流の分散・誘導を行い、大気汚染の原因である窒素酸化物(NOx)・浮遊粒子状物質(SPM)や地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)等の排出量の抑制、騒音・振動等の低減を図りました。また、交通公害低減システム(EPMS)*を神奈川県、静岡県、兵庫県において運用し、交通公害の低減、二酸化炭素等の排出量の抑制を推進しました。さらに、VICS(道路交通情報通信システム)は、平成14年度末までに全都道府県において運用が開始され情報提供エリアの拡大、情報内容・精度の改善・充実等に努めたほか、3メディア対応型VICS対応車載機の導入・普及等を積極的に推進しました。
ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)については、平成14年度末までに全国の主要な850か所の料金所においてサービスを開始したほか、普及促進を図るための割引制度を導入しました。
2) 都市部を中心に、各種交通規制を効果的に実施することにより、その環境の改善に努めました。具体的には、大型車を道路の中央寄りに走行させるための通行区分の指定を行うとともに、安全な道路交通環境を整備するためコミュニティー・ゾーン等を形成したほか、大量公共輸送機関の利用を促進し、自動車交通総量を抑制するため、バス優先・専用通行帯の指定、公共車両優先システム(PTPS)の整備等を推進しました。
3) 都市内における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し、排除するため、駐車規制の見直し、悪質・危険性、迷惑性の高い駐車違反に重点を置いた取締り、違法駐車抑止システム、駐車誘導システム等の整備、違法駐車防止条例の制定の働きかけ等の総合的な駐車対策を推進しました。
4) 大気汚染・騒音・振動等の原因ともなっている過積載運転に対しては、荷主等の背後責任追及を積極的に実施するなど、取締りを一層強化しました。
5) 地球温暖化・交通公害対策の観点から、交通の方法に関する教則に、客待ちや貨物の積卸し等のため自動車を継続的に停止させるときにアイドリング状態を避けるよう広報啓発に努めました。
ウ 物流の効率化
自動車交通に起因する環境負荷を軽減するには、自動車単体についての対策と並んで、物流の効率化を図り、環境負荷の少ない物流体系を形成することが重要です。そのため、平成13年7月に策定された「新総合物流施策大綱」におきましても、地球温暖化問題や大気汚染等の環境問題への対応が重要な課題とされています。
平成14年度より、荷主・物流事業者等の関係者が協力して海運や鉄道へのモーダルシフト等の環境負荷低減策に取り組む場合に一定の効果が認められる場合において補助金を交付することとしました。
また、都市再生プロジェクト決定を踏まえ、首都圏における環境負荷の小さい静脈物流システムの構築のための調査検討を実施しました。
エ 公共交通機関利用への転換促進
環境負荷の少ない交通体系を形成するためには、自家用自動車に比べ環境負荷の少ないバス・鉄道などの公共交通機関利用への転換を促進することが重要です。
そのため、具体的には、軌道改良・曲線改良等の幹線鉄道の高速化等を行うとともに、都市鉄道についても、三大都市圏(東京、大阪、名古屋圏)の圏域における運輸政策審議会(平成13年1月6日より、交通政策審議会へ改組)答申に基づき、新線建設、複々線化等を進め、混雑緩和、輸送力増強、速達性の向上、都市構造・機能の再編整備への対応、空港等へのアクセス機能の強化を図っています。また、貨物線の旅客線化、既設線の延伸、駅施設や老朽化した線路施設の改良などの既存ストックの高度利用を図るとともに、鉄道駅のバリアフリー化、乗継円滑化の措置を講じることにより、利用者利便の向上を図り、利用促進に努めています。
(4)その他
ア 余暇活動
余暇活動における自然とのふれあいを推進するため、自然系環境学習の普及方策について検討を行いました。
また、ビジターセンターや「ふるさといきものふれあいの里」などの自然学習の拠点や長距離自然歩道やふるさと自然のみちなど自然探勝フィールドの整備を行うとともに、これらの施設において自然解説活動に携わる人材を育成するための研修会等を実施しました。
イ 情報通信の活用
テレワーク*・SOHO*、テレビ会議、高度道路交通システム(ITS)、電子商取引などが普及することにより、交通の代替、交通流の円滑化、生産・流通の効率化やペーパーレス化などを通じて大きな環境負荷の低減効果が期待できます。
総務省では、平成10年の電気通信審議会答申に盛り込まれた政策提言の早期実現を図っています。
また、テレワークの推進のため、国土交通省、総務省、厚生労働省、経済産業省は連携して、全国的なテレワーク人口をはじめとする実態調査を行うとともに、テレワークの推進のための総合的な支援方策の検討を行いました。
国土交通省では、女性や高齢者等がテレワークを気軽に実施することができる環境を整備するとともに、エッセイコンテスト及び記念セミナーの実施により普及啓発活動を行いました。