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第6節 

2 生物多様性の保全のための取組

 生物多様性の確保に係る施策を総合的に推進していくための基本計画に当たるものとして新・生物多様性国家戦略があります。本国家戦略は、平成7年に策定された生物多様性国家戦略を全面的に見直し、平成14年3月に地球環境保全に関する関係閣僚会議で決定されました。人間生存の基盤であり、豊かな生活、文化、精神の基礎である生物多様性の保全とその持続可能な利用を目的としています。地球環境の視点から、わが国は世界の生物多様性の保全と持続可能な利用に対する責務を有しており、国内対策の展開とあわせ国際的貢献を進めることも目的です。「生存の基盤」、「生活等の基礎」の意味は、従前から言われている生物多様性がもたらす「有用性」の価値に加えて、生物多様性を尊重することが、適正な土地利用を行うことを通じてトータルで長期的な人間生活の安全性や効率性を保証することも視野においたものです。
 本国家戦略の対象範囲は、陸域のみならず海域も対象に含んだ国土全体であり、また、一体として関連する限りにおいてアジア等の諸外国も分析の対象としています。狭義の生物多様性のみではなく、広義の生物多様性、すなわち自然環境とこれらに係る施策等の全般を論じたものとなっており、わが国の自然環境施策の中長期方針をも記述しています。また、狭義の保全だけでなく、広範な分野、領域における持続可能な利用の観点も重視しており、「自然と共生する社会」を政府全体として実現することを目的とした自然の保全と再生のためのトータルプランとして位置付けられています。
 生物多様性の危機の現状やそれらに対する国民意識の向上・成熟を踏まえて、本国家戦略が示している大きな柱は、1)種の絶滅、湿地の減少、移入種問題などへの対応としての「保全の強化」、2)保全に加えて失われた自然をより積極的に再生、修復していく「自然再生」の提案、3)里地里山など多義的な空間における「持続可能な利用」、すなわち地域の生物多様性保全を進めるために、生活・生産上の必要性等と調整する社会的な仕組みや手法についてのアプローチをより積極的に進めること、の三つです。また、目標を達成するための道筋、方向性を明らかにし、実効性のある具体的施策が展開されるように、「重要地域の保全と生態的ネットワーク形成」、「里地里山の保全と持続可能な利用」、「湿原・干潟等湿地の保全」、「自然の再生・修復」、「野生生物の保護管理(移入種対策等)」、「自然環境データの整備(モニタリングサイト1000等)」などの主要テーマ別に対応の基本方針を提示しました。今後は、本国家戦略に示された基本方針や個別方針に沿って、生物多様性の保全と利用に関するさまざまな施策を推進します。

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