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第5節 むすび

 環境制約が日常生活に迫りつつあることを考えると、一人ひとりが取組の主人公である自覚を持ち、日常生活の中で、そして地域社会の中で、この困難な問題に早急に対処していくことが必要となります。恵み豊かな環境とそれに基づく私たちの安定した生活を将来に引き継ぐためには、環境配慮を織り込んだ持続可能な社会への変革が必要です。日常生活や地域など身近なところからそれぞれの主体が自発的に行う取組は、この変革の確実な第一歩となり得、この小さな第一歩が、持続可能な社会の構築に向けた大波となり、世界に広がっていくこともあり得るのです。
 他方で、こうした取組だけに頼れば社会全体が持続可能な方向へと進んでいくというわけでもありません。こうした取組を容易にする社会や経済の枠組みが、生活の基盤として形成されることが不可欠です。このため、技術の革新、市場メカニズムの変革、さらには世界全体の社会経済システムの変革を同時並行的に進めていくことも重要となります。この観点からは、特に行政や企業の取組が欠かせません。政府としても、以下の第2部に掲げるようなさまざまな施策を講じ、取組の基盤となる枠組みの創出や改善などに努めているところです。また、地域での取組は、地域という社会経済システムの直接の変革を求める行動にほかなりません。社会経済システムが持続可能なものへと変革されることにより、個々の主体の行う環境保全活動はより行いやすく、その効果もより確実なものになると同時に、取組に積極的でなかった主体も無意識のうちに環境負荷の少ない消費や生産行動を行えるようになります。変革された一つ一つの地域が広がっていくことで、人類を足元から持続可能なものにしていくことができるのです。
 いずれにしても、地球環境の将来を憂うだけでは何も状況は変わりません。連携と協働の下、各々が自らの役割として、身近なところからできることを着実にやっていく、このことが、我々が将来世代に恵み豊かな環境を引き継いでいけるということを確実に保証することになります。昨年のヨハネスブルグサミットでは、「ことを起こせ!(Making It Happen!)」というテーマの下、全世界から参加者が集いました。持続可能な社会は十分作りうるものであり、その暮らしは今よりも豊かで活き活きとしたものです。私たちも、この呼びかけを真摯に受け止め、真に豊かな生活とは何かを不断に問いかけつつ具体的な行動を開始し、持続可能な社会の構築という「ことを起こしていく」必要があります。

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