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第2節 

2 日常生活における環境負荷の低減と具体的な効果

 これまで見てきたように、私たちの日常生活のあらゆる場面からの環境負荷が、今日の環境問題の原因となっていることを考えると、私たちは、日常生活の中で意識的に環境に配慮した行動をとっていく必要があります。ここでは、日常生活における環境に配慮した行動にはどのようなものがあるのか紹介するとともに、その効果について見ていきます。

(1)日常生活のさまざまな場面における環境配慮行動
 私たちの日常生活において行える環境配慮行動にはどのようなものがあるでしょうか。平成14年8月に第2回「環の国くらし会議」から提案された取組なども踏まえつつ、さまざまな場面における環境配慮行動を見ていきます。

 ア 住生活
 日常生活を営むあらゆる場面でエネルギーや資源を消費しています。エネルギーの消費を少なくするために、例えば、適切な冷暖房温度の設定、こまめな節電等の他、長寿命で省エネルギー効果が高い電球形蛍光ランプに取り替えるといった取組があります。
 また、資源を無駄にしないように、お風呂の残り湯を洗濯に使うこと、エコバッグを持ち歩くこと等によるごみの減量やリサイクルに向けた取組があります。
 さらに、太陽光発電、太陽熱利用、高効率な断熱材、屋上緑化、雨水利用といった技術を有効に活用したエコ住宅も提案されています。

 イ 衣生活
 私たちが普段身につけている衣服については、夏期のノーネクタイなど季節にあった服装にすること、長く着ることのできる服を選ぶこと、着なくなった服は廃棄ではなく、リユース・リサイクルに回すこと等、省エネルギー、省資源に向けた取組があります。
 また、洗濯等における洗剤を適正に使用することで、生活排水対策になります。

 ウ 食生活
 食事の場面では、地元産で旬のものを食べること、食べ残しを少なくすること、調理くずをできるだけ減らすこと等、省エネルギー、省資源に向けた取組があります。

 エ 買い物
 日常生活に必要な物を買う時にも、省エネルギー性能の高い電化製品、低燃費車・低排出車、再生紙等、環境への負荷の少ない環境配慮型製品やサービスを選択するといった取組があります。
 
 オ 交通
 家から外出する際には、アイドリングストップ(停車時エンジン停止)などエコドライブを心がけること、公共交通機関など環境負荷の少ない交通手段を利用すること、近所であれば、徒歩や自転車で移動することで、省エネルギー、大気汚染対策となります。

 カ 余暇
 余暇活動においては、エコツーリズムやグリーン・ツーリズム*、ごみ拾いや野生生物の保護などの環境ボランティア活動への参加といった、豊かな環境の保全・創造につながる取組もあります。
 ここで紹介した取組以外にも、エコファンドの購入や環境保全活動への寄付等、環境配慮行動にはさまざまなものがあります(図1-2-6)。日常生活のさまざまな場面で環境を意識し、一人ひとりの身近にできることからはじめていくことにより、日常生活からの環境負荷を低減することが可能です。



(2)一人ひとりの取組による効果
 一人ひとりの取組にはさまざまなものがあり、それぞれの取組による効果もさまざまです。例えば、効果が小さくてもわが国の全世帯で10の取組を実施すると、わが国全体で約34.7百万トンの二酸化炭素が削減され、これは京都議定書の規定による基準年の排出量の2.8%に相当し、日常生活の何気ない積み重ねが大きな効果を生み出すことになります(表1-2-1)。しかしながら、第1節3で見たように、民生(家庭)部門からの二酸化炭素排出量が増加していることを考えると、二酸化炭素の削減に向けた日常生活における取組は十分な成果を得られているとはいえず、身近にできることから取組を始めることがますます重要となっています。



コラム エコツーリズム
 近年、新しい形態の観光として、エコツーリズムが世界的に注目されています。
エコツーリズムとは、その地域の自然環境を損なうことなく、地域の自然や文化を学び、ふれあう旅行形態のことをいい、自然環境への悪影響の防止、ガイドによる質の高い自然解説の確保等の観点から、一般的に少人数で行われます。
 日本では、沖縄の西表島や小笠原諸島等で、エコツーリズム実施上のルールづくりやガイド育成のための研修会の開催等、関係者によるさまざまな取組が始まっています。このような活動は、地域の自然環境の保全と適正な利用に資するだけでなく、経済的効果が期待され、自然資源の持続可能な利用を図る有効な手段となっています。
 エコツアー(エコツーリズムの考え方に基づいて実践されるツアー)に参加することは、自然とのふれあいにより感性を培い、自然への科学的認識を深めることになり、複雑多様化する環境問題に対して的確な認識や行動を引き出すことが期待されます。


西表島でのエコツアー 西表島エコツーリズム協会(http://www10.ocn.ne.jp/~iea/top.htm)提供

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