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第6節 

1 地球温暖化の防止

(1)気候変動枠組条約に基づく取組
 気候変動枠組条約*により、わが国を始めとする先進締約国等は、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を1990年代の終わりまでに従前のレベルに戻すことが条約の目的に寄与するものであるとの認識の下、政策を採用し、措置をとり、その内容について、締約国会議へ情報(通報)を送付することが義務付けられています。

*気候変動枠組条約
地球温暖化防止に対する取組を国際的に協調して行っていくため、1992年(平成4年)5月に採択され、1994年(平成6年)3月21日に発効した。本条約は、気候系に対して危険な人為的影響を及ぼすこととならない水準において、大気中の温室効果ガス濃度を安定化することをその究極的な目的とし、締約国に温室効果ガスの排出・吸収目録の作成、温暖化対策のための国家計画の策定とその実施等の各種の義務を課している。

 1995年(平成7年)にベルリンで開催された同条約の第1回締約国会議(COP1)において、現行の条約上の規定で不十分とされた2000年以降の期間に先進締約国等が講ずべき対策やその目標について、検討するプロセスを開始することとなりました(ベルリン・マンデート)。これを受け設置されたアドホックグループにおける検討等の国際的努力の結果、1997年(平成9年)12月に京都で開催された第3回締約国会議(COP3)において、先進各国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある具体的な数量化された約束を定めた京都議定書が全会一致で採択されました。2000年(平成12年)11月にオランダのハーグで開催された第6回締約国会議(COP6)では、京都議定書の実施に必要となるルールや手続等について合意に至らなかったため、2001年(平成13年)7月にドイツのボンで再開会合が開催されました。再開会合では、京都議定書の運用ルールについての基本的な合意(ボン合意)が得られ、その後同年10〜11月にモロッコのマラケシュで開催された第7回締約国会議(COP7)において、京都議定書の具体的な運用に関する細目を定める文書が決定されました。これにより、京都議定書の2002年(平成14年)発効に向けて先進国等の京都議定書の締結が促進される見通しとなりました。
 しかしながら、世界最大の温室効果ガス排出国である米国は、京都議定書を支持しないことを表明しています。2002年(平成14年)2月14日には、ブッシュ大統領から米国の気候変動政策が発表されました。地球温暖化対策の実効性を確保するためには、すべての国が温室効果ガスの削減に努めることが必須であり、今後米国や開発途上国を含むすべての国が参加する共通のルールが構築されるよう、わが国として、引き続き最大限の努力を傾けていくこととしています。
 政府では、「温暖化対策クリーン開発メカニズム(CDM)事業調査」や、「共同実施等推進基礎調査」を実施し、有望なプロジェクトの発掘や知見の蓄積に努めています。また、アジア太平洋地域の開発途上国における温暖化対策の取組の促進を図るため、環境省では2001年(平成13年)8月に、福岡県北九州市において「第11回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を開催しました。
 さらに、わが国として、第3回締約国会議(COP3)において発表した「京都イニシアティブ」に基づき、平成10年度から5年間で3,000人の温暖化対策関連分野の途上国における人材育成(平成10年度から平成12年度の3年間で約4,600人)、最優遇条件による円借款(平成9年12月から平成13年3月までで48件、約5,800億円の供与を約束)等を実施したのをはじめ、2001年度に新設された「地球環境無償」等の政府開発援助における開発途上国の支援、関係国際機関への財政的、技術的支援を引き続き行いました。

(2)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)における検討への率先的取組
 IPCC第3次評価報告書(平成13年9月完成)並びに土地利用、土地利用の変化及び林業に関する特別報告書(平成12年5月完成)の執筆者としてわが国の専門家が参画しました。また、わが国の提案により、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためのインベントリータスクフォースの中核的機能を平成11年に地球環境戦略研究機関内に設置し、本格的な活動を開始しました。このように温暖化対策と密接に関連するIPCCの活動に対して、わが国は、各種報告書作成プロセスへの参画、資金の拠出、関連研究の実施など積極的に貢献を行っています。

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