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第1節 

1 地球環境保全に関する国際的な連携の確保

(1)多国間の枠組みによる連携
 ア ヨハネスブルグサミットに向けた取組
 1992年(平成4年)の地球サミット(国連環境開発会議)から10年後となる2002年(平成14年)8月26日〜9月4日、南アフリカのヨハネスブルグにおいて、アジェンダ21の実施状況の包括的レビューとその取組強化を目的として、「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」が開催されます。

 このサミットでは、地球サミット以降の世界におけるアジェンダ21実施の取組の成果を点検し、今後一層の努力が必要となる分野を検証するのに加え、グローバリゼーションやITの進展が持続可能な開発に及ぼす影響や、貧困と環境の関連など、地球サミット以降に生じてきた新たな課題についても議論される予定です。また、このサミットの成果としては、アジェンダ21の実施促進のための取組に関する合意文書及び各国首脳の決意を示す政治的文書が採択されるほか、各国や様々な関係主体などによる持続可能な開発促進のためのイニシアティブやパートナーシップの提案を記載する文書が作成される予定です。現在、持続可能な開発の実現に向け以下のような取組が進められています。
 (ア)地球サミット以降の世界規模の取組
  a 持続可能な開発委員会(CSD)
 地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21第38章に基づき、1992年(平成4年)の第47回国連総会における設立の決議を経て、1993年(平成5年)6月、国連経済社会理事会の下部組織としてCSDが設立されました。
 CSDはわが国を含めた国連加盟国53か国からなり、その主要目的は、1)アジェンダ21及び環境と開発の統合に関する国連の活動の実施状況の監視、2)各国がアジェンダ21を実施するために着手した活動等についてまとめたレポート等の検討、3)アジェンダ21に盛り込まれた技術移転や資金問題に関するコミットメント(約束)の実施の進捗状況のレビュー、4)リオ宣言及び森林原則声明に盛り込まれた諸原則の推進、5)アジェンダ21の実施に関する適切な勧告の経済社会理事会を通じた国連総会への提出等です。
 CSDは毎年春に会合を開催しており、2001年(平成13年)4月に開催された第9回会合では、1997年(平成9年)の国連環境開発特別総会(UNGASS)*で決定された「多年度作業計画」(表3-1-2)に従いエネルギー、大気、運輸、国際協力等をテーマに検討が行われました。

*国連環境開発特別総会(UNGASS)
アジェンダ21の実施状況の点検、評価を目的に1997年に開催され、「アジェンダ21の一層の実施のための計画」が採択されました。わが国は環境分野における国際協力を進める理念として「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」を表明しました。



  b ヨハネスブルグサミットへ向けた準備プロセス
 ヨハネスブルグサミットは準備プロセスにおいて地域レベルからの積み上げを重視していることが特徴です。アジア太平洋地域では2001年(平成13年)11月27日〜29日にプノンペン(カンボジア)で準備会合が開催され、アジア太平洋地域の重点事項と取組方針を取りまとめた文書(地域綱領)を取りまとめました。地域綱領には、省エネ・循環型社会の実現、衛星モニタリング等の科学的基盤整備、食料安全保障のための持続可能な農業、持続可能な森林経営(違法伐採対策を含む)への取組等の重要性が盛り込まれました。
 2002年(平成14年)に入ってからは世界レベルでの準備プロセスが始まっており、1月28日〜2月8日に開催された第2回準備会合においては、サミットで取り上げるべき主要テーマを整理し、各分野ごとに国際社会がとるべき行動を取りまとめた「議長ペーパー」が提示されました。今後、同ペーパーを基に合意文書の案の作成が行われる予定です。
 (イ)アジア・太平洋地域における取組
  a アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア)
 各国の環境大臣等が一堂に会して自由な意見交換を行う場を提供することにより、この地域における環境分野での協力を推進し、持続可能な開発の実現に資することを目的として、アジア・太平洋地域各国の環境大臣及び関係国際機関の代表等の参加を得て、1991年(平成3年)以来「アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア)」を開催しています。
 第10回会合(エコ・アジア2001)は、2001年(平成13年)10月13日〜14日に東京都においてGEA(地球環境行動会議)の地球環境警鐘会議と同時に開催されました。同会合では、「ヨハネスブルグサミットの準備」「気候変動」等の主要テーマに関して率直な意見交換が行われるとともに、アジア太平洋地域の持続可能な開発のため、21世紀にふさわしい新たな発展のあり方を検討するための「アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)」の設置が承認されました。また、エコ・アジアの下で1994年(平成6年)から実施されてきた「エコ・アジア長期展望プロジェクト(LTPP)」(アジア太平洋地域の政策立案者に向けて、持続可能な開発の実現のための科学的根拠の提供及び政策提言を行うことを目的として1994年〜2001年にかけてエコ・アジアのもとで実施されたプロジェクト)の最終報告を承認するとともに、その後継プロジェクトとして、「アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)」を立ち上げること、その調整機関としてエコ・アジア・パネルを設置することが承認されました。
  b アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)
 アジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)は、2001年(平成13年)10月のエコ・アジア2001において設置が承認され、10月14日には組織会合を開催して正式に発足しました。APFEDの第1回会合は2002年(平成14年)1月12日〜13日にタイのバンコクで開催され、「淡水資源」「再生可能エネルギー」「貿易」「資金」の主要テーマに関して討議を行いました。APFEDでは今後、2002年(平成14年)5月にインドネシアのジャカルタで第2回会合を開催し、ヨハネスブルグサミットへの特別提言を取りまとめるとともに、2004年(平成16年)に最終報告書を取りまとめる予定です。
  c アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト(APEIS)
 アジア太平洋地域の持続可能な開発の実現に向けて、平成13年度より、各国との共働によって、衛星データ等を活用した統合的モニタリング・評価体制の構築、その成果を利用した革新的な環境戦略オプションの提言を行うプロジェクトを実施し、各国における環境保全政策立案のための科学的基盤の整備を推進しています。 
  d ESCAP・アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議 
 国連アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、2000年(平成12年)福岡県北九州市において「第4回アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議」を開催し、都市環境の改善を目指して地域レベルでの取組を強化するとともに、自治体レベルでの都市間協力を促進するためのメカニズムとして「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ」が採択されました。2001年(平成13年)11月20日〜21日に福岡県北九州市において、「第1回クリーンな環境のための北九州イニシアティブ・ネットワーク会合」(13ヶ国20都市参加)が開催され、都市環境改善を推進する手法について議論し、情報を共有すること等を目指した「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ・ネットワーク」が正式に発足しました。 
  e ESCAP・北東アジア環境協力高級事務レベル会議
 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、アジェンダ21のフォローアップに資するものとして、北東アジア地域6か国(日本、韓国、中国、ロシア、モンゴル、北朝鮮)による地域環境協力の枠組みを作るため、1993年(平成5年)以来北東アジア環境協力高級事務レベル会議を開催しています。同会議の下に、アジア開発銀行の援助を受けつつ、大気汚染問題を中心とした4プロジェクトが推進されています。2001年(平成13年)7月に中国の北京で開かれた第7回会議では、現在進行中のプロジェクトのレビューと、新しく提案された3つのプロジェクトの素案について検討が行われました。
  f 環日本海環境協力会議
 北東アジア地域の環境問題に関する情報交換及び政策対話を行い、アジェンダ21で強調されている地域協力の促進を図るため、1992年(平成4年)より毎年開催されています。
 2001年(平成13年)10月に韓国・仁川市で開催された第10回会議では、「北東アジア地域の環境協力におけるNGOの役割」と題したNGOの公開シンポジウムを行うとともに、「統合的な沿岸域管理」、「持続可能なエネルギー政策」、「NEACの10年間の活動レビューと将来のプログラム」について、技術的問題、政策的手法、国際機関等による多国間協力の可能性等、幅広い観点から議論が行われました。
  g 日中韓3か国環境大臣会合(TEMM)
 北東アジアの中核である日本・中国・韓国の3か国の環境大臣が一堂に会し、本地域及び地球規模の環境問題に関する対話や協力関係を強化するため、1999年(平成11年)1月より毎年開催されています。
 2001年(平成13年)4月に東京で開催された第3回日中韓3か国環境大臣会合では、プロジェクトの形成及び実施、気候変動問題などの共通の関心事項などについて意見交換しました。現在、3か国の協力のもと、環境教育、環境産業、合同研修など、具体的なプロジェクトが進められています。
  h アジア欧州会合(ASEM)環境大臣会合
 2002年(平成14年)1月17日に第1回会合が北京(中国)で開催され、ASEM各国間の環境協力の推進や京都議定書の2002年中発効の重要性等を内容とする議長声明を採択しました。
  i こどもエコクラブアジア太平洋会議
 日本の「こどもエコクラブ」会員とアジア太平洋地域諸国で同様の活動を行っている子どもたちの交流と連携を図り、同地域の子どもたちによる自発的な環境保全活動を推進するとともに、日米コモンアジェンダの環境教育プロジェクトを推進するために開催しています。
 平成13年度は8月に兵庫県において開催し、8か国の子どもたちが活発な意見交換、交流等を行いました。
  j インターリンケージに関する国際賢人会議
 2001年(平成13年)9月に国連大学、環境省、外務省、グローブインターナショナルの共催により「インターリンケージに関する国際賢人会議」を開催し、持続可能な開発に関する主要な問題の相互関係や問題点と解決策について討議を行いました。
 (ウ)国内における取組
  a 「アジェンダ21」行動計画の実施
 わが国は、アジェンダ21第38章を受け、1993年(平成5年)に「『アジェンダ21』行動計画」を決定しました。
 本行動計画は、アジェンダ21の章立てに応じたプログラム分野ごとにわが国が今後実施しようとする具体的な事項を行動計画として取りまとめたものです。本行動計画に則り、持続可能な開発の達成に向けた種々の取組がなされています。
  b ローカルアジェンダ21
 アジェンダ21においては、その実施主体として地方公共団体の役割を期待しており、地方公共団体の取組を効果的に進めるため、ローカルアジェンダ21を策定することを求めています。これを受けて、1994年(平成6年)に「ローカルアジェンダ21策定に当たっての考え方」として指針を取りまとめました。また、1995年(平成7年)には、地域の環境計画づくりに当たっての配慮事項やポイントを特に重点的に取りまとめた「ローカルアジェンダ21策定ガイド」を公表しました。
 なお、都道府県及び政令指定都市を対象とした、ローカルアジェンダ21の策定状況調査では、2002年(平成14年)2月28日現在で47都道府県、12政令指定都市、184市区町村で策定済みとの回答を得ました。
  c 持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)
 「アジェンダ21」の「持続可能な開発の実現のため、各国は、政府、産業界、NGO等が連携して取組を行うための体制を整えることが必要」との要請を受けて、平成8年、「持続可能な開発のための日本評議会(JCSD)」が設立され、持続可能な開発に関して、政府、産業界、非営利組織等わが国の社会の主たる構成メンバー相互の対話を定期的に行っています。JCSDでは、わが国における持続可能な社会づくりを目指した取組事例を取りまとめたレポートをヨハネスブルグサミットに向けて発表する予定です。

 イ 国連における活動
 国連環境計画*(UNEP)では、1999年(平成11年)以降「緊急事態対応を含む情報・アセスメント」「環境関連条約との連携及び環境政策に関する手法の開発」「淡水」「技術移転と産業」「アフリカ支援」の5分野を重点事項としています。2002年(平成14年)2月には、コロンビアのカルタヘナにおいて第3回グローバル閣僚級環境フォーラムが開催され、国際環境ガバナンスやヨハネスブルクサミットへのUNEPの貢献などについて議論が行われました。

*国連環境計画(UNEP)
1972年(昭和47年)にストックホルムで開催された国連人間環境会議の結果として設立された国連機関であり、本部はケニアのナイロビに置かれている。国連諸機関が行っている環境に関する諸活動の総合的調整管理及び国連諸機関が着手していない環境問題に対する国際協力の推進を目的としている。

 UNEPに対してわが国は、創設当初から一貫して管理理事国であるとともに、国連環境基金に対し、2000年(平成12年)は約455万ドルを拠出する等多大の貢献を行ってきました。また、2000年(平成12年)10月に歌手の加藤登紀子さんがUNEP親善大使に任命され、2001年(平成13年)4月にタイとインドネシア、8月にはモンゴルを訪問し、草の根レベルの地域での活動と交流を行いました。
 UNEP国際環境技術センター*は、開発途上国等への環境上適正な技術の移転を目的とし、淡水湖沼集水域の環境管理問題を担当する滋賀事務所と、大都市の都市環境管理問題を担当する大阪事務所とから構成され、環境保全技術に関するデータベースの整備、情報提供、研修、コンサルティング等の業務を行っています。

*UNEP国際環境技術センター
1992年(平成4年)に、日本で初めての環境関係の国連施設として開設された。

 また、国連教育科学文化機関(UNESCO)のアジア・太平洋地域教育開発計画(APEID)の下で、アジア・太平洋地域諸国の環境教育の専門家を我が国に招致してセミナーを開催する等、UNESCOと協力してアジア・太平洋地域における環境教育の充実・普及を図るとともに、UNESCOの人間と生物圏(MAB:Man and the Biosphere)計画の下で、アジア・太平洋地域における生物圏保存地域(Biosphere Reserve)のネットワークを利用し、生物多様性の保護と持続可能な活用、人材・研究機関の養成のためのセミナーの開催等を目的とする「アジア・太平洋地域地球環境共同研究事業信託基金」を拠出する等、地球環境科学事業を推進しています。

 ウ 経済協力開発機構(OECD)及び国際エネルギー機関(IEA)における活動
 OECD*の環境政策委員会*では、各加盟国政府が環境政策を企画立案する上で重要と思われる問題について検討が行われています。その結果は必要に応じて理事会においてOECD決定あるいは勧告として採択されるほか、調査、研究等の成果がレポートとして公表され広く活用されており、最近では、拡大生産者責任(EPR)ガイダンスマニュアル、環境アウトルック(OECDが今後20年間のOECD諸国の環境問題に関する予測と、主要課題に取り組むための現実的優先分野をまとめた報告書)等が公表され活用されています。

*OECD
先進工業国間の経済に関する国際協力機関であり、2000年(平成12年)10月現在30か国が加盟している。最高意思決定機関は理事会であり、毎年1回閣僚レベルの閣僚理事会が開催される。

*環境政策委員会
1960年代末の全世界的な環境問題への関心の高まりを反映し、1970年(昭和45年)7月環境委員会が設置され、1992年(平成4年)3月には、一部改組の上、環境政策委員会へと名称が変更された。

 近年は、環境問題が横断的に取り上げられてきており、環境政策委員会と他の各委員会との合同の作業として「貿易と環境」、「税と環境」、「農業と環境」に関する合同専門家会合等が設置されるなど、分野横断的な検討が増加しています。環境政策委員会は、おおむね5年に1度閣僚レベルの会議を開催しており、2001年(平成13年)の第7回環境政策委員会閣僚会議(OECD環境大臣会合)では、OECD加盟国における21世紀最初の10年間の環境政策の方向性を定めるとともに、OECDの活動指針となる「環境戦略」が採択されました。また、2001年(平成13年)のOECD閣僚理事会では、初めて、環境担当閣僚が参加して「持続可能な開発」に関する議論が行われ、採択されたコミュニケにも「持続可能な開発」に関する方針が盛り込まれました。
 さらに、2002年(平成14年)1月には、わが国の環境政策の取組状況についてOECD加盟各国が参加するOECD環境政策委員会・環境保全成果作業部会による審査が行われ、審査報告書のうち「結論及び勧告」は、審査後にOECD事務局より公表されました(報告書本体は本年5月に公表予定)。今回の審査では、前回平成5年の審査後のわが国の環境行政の進展を対象に、「環境管理」、「持続可能な開発に向けて」及び「国際的な環境協力」の3つの項目に分けて行われ、1990年代における政策の進展が大いに評価された上で、経済的手法や費用効果分析が不十分である等の横断的事項に加えて大気、水、廃棄物、自然、化学物質対策、温暖化対策等の個別分野について指摘がなされるとともに、合計60項目の勧告が承認されました。
 また、OECDの輸出信用グループは、輸出信用機関による環境配慮のための「環境と輸出信用に関する共通アプローチ」を作成し、一部の国を除く同グループのメンバー国は、2001年(平成13年)11月、同アプローチを2002年(平成14年)より自主的に実施することとしました。
 IEAでは、先進国間で共通に取り得る費用効果にすぐれた温室効果ガス排出抑制や吸収源強化のための政策・措置について分析・評価が進められています。気候変動技術イニシアティブについて、CTI議長国であるわが国のリーダーシップの下、国際協力による技術の開発・普及と長期的視点に立った革新的技術の具体化を進めています。

 エ 世界貿易機関(WTO)における取組
 (ア)WTO貿易と環境に関する委員会(CTE)の取組
 環境問題への関心の高まりに伴い、1995年(平成7年)WTOは貿易と環境に関する委員会(CTE)を設置しました。以来、CTEは環境と貿易に関する国際的な議論の中心的なフォーラムであり、毎年3〜5回のペースで会合が開催され、「多国間環境協定による環境目的の貿易措置とWTOとの関係」などの項目について検討が行われてきました。
 (イ)WTO多角的貿易交渉を巡る動き
 2001年(平成13年)11月にカタールのドーハで開催されたWTO第4回閣僚会議において、1995年(平成7年)のWTO設立後初の多角的貿易交渉を開始することを内容とする閣僚宣言が採択されました。閣僚宣言に基づき、今後「貿易と環境」に関しては、多国間環境協定(MEAs)とWTO協定との関係の明確化などについて交渉することとなりました。

 オ 主要国首脳会議(サミット)における環境問題への取組
 1981年(昭和56年)のオタワサミット以来、経済宣言において環境問題が取り上げられてきていますが、特に1989年(平成元年)のアルシュ・サミット以降地球環境問題が重要な課題として位置付けられていることが大きな特色です。
 2001年(平成13年)7月のジェノヴァ・サミットでは、温室効果ガス排出削減という共通の目標を達成するため、G8として集中的に協力していくというメッセージが出されました。
 また、1992年(平成4年)来(1993年(平成5年)を除く)サミットに先立ち、メンバー国の環境大臣によるG8環境大臣会合が開かれています。2001年(平ャ13年)3月にイタリア・トリエステにおいて「気候変動」「ヨハネスブルグサミットに向けた持続可能な開発」「環境と健康」等の国際社会が直面する主要な環境問題について議論が行われ、その成果がコミュニケとして取りまとめられました。
 また、本会合後、10月にイタリアのスポレトにおいて開催されたG8環境未来フォーラム(EFF)では、気候変動対策の応用研究及び技術、経済メカニズム等について議論されました。

(2)2国間の枠組みによる連携
 ア 環境保護協力協定に基づく取組
 (ア)米国
 1975年(昭和50年)に日米環境保護協力協定が締結されて以来、同協定に基づき広範な環境問題を討議するため、閣僚レベルによる合同企画調整委員会を過去11回開催しています。同協定に基づき、現在17のプロジェクトが設置されており、情報交換、会議の開催、専門家の交流が進められています。
 (イ)ドイツ
 1997年(平成9年)に締結された日独環境保護協力協定においては、地球温暖化の防止、オゾン層の保護や砂漠化の防止などの分野について、政策、法令及び技術についての情報等の交換を通じて、日独両政府は環境の保護の分野における協力を発展させることとしています。
 (ウ)ロシア
 1991年(平成3年)4月に締結された日ソ環境保護協力協定に基づく第3回日露環境保護合同委員会が2001年(平成13年)12月に東京で開催され、両国の環境問題並びに地球温暖化問題、ヨハネスブルグサミット、NOWPAP(北西太平洋地域海行動計画)等について意見交換が行われました。また、二国間協力案件として、13のプロジェクトから成る日露環境保護協力計画が作成されています。
 (エ)中国
 1994年(平成6年)3月に締結された日中環境保護協力協定に基づく第5回日中環境保護合同委員会が、1999年(平成11年)11月に中国・北京で開催され、ダイオキシンの汚染状況の解明等に関する調査研究等の15件のプロジェクトを共同で実施することとしたところであり、現在、これに基づきプロジェクトが進められています。
 (オ)韓国
 1993年(平成5年)6月に締結された日韓環境保護協力協定に基づく第7回日韓環境保護協力合同委員会が、2001年(平成13年)12月に東京で開催され、日韓両国の環境政策並びに21世紀における北東アジア地域及び地球規模での環境問題に関する両国の協力のあり方について率直な意見交換が行われました。また、北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送と酸性沈着の観測に関する研究等の23件の共同プロジェクトを継続するとともに、新しく4件の共同プロジェクトを実施することについて協議を行いました。

 イ 科学技術協力協定に基づく取組
 (ア)米国
 1988年(昭和63年)6月に締結された日米科学技術協力協定の下、閣僚級の合同高級委員会がこれまで8回開催されました。同協定の附属書Iにおいては、7つの主要協力分野が挙げられており、このうち「地球科学及び地球環境」分野においては、共同研究等を行っています。
 (イ)カナダ
 1986年(昭和61年)に締結された日加科学技術協力協定に基づき、これまで合同委員会が7回開催され、環境分野における協力が進められています。同協定の下に「北太平洋における地球科学・環境パネル」が設置され、第3回会合が2000年(平成12年)6月に開催されるなど、協力が進められています。
 (ウ)英国
 1994年(平成6年)6月に締結された日英科学技術協力協定に基づき、第4回合同委員会が2002年(平成14年)2月に開催されました。同協定の締結により、これまでの科学技術協力に基づく研究協力等がより一層推進されることとなりました。
 (エ)ドイツ
 1974年(昭和49年)に締結された日独科学技術協力協定に基づき、「環境保護技術パネル」が設置され、1976年(昭和51年)以来17回パネル会合が開催されるなど協力が行われています。第18回パネル会合は2001年(平成13年)10月に日本で開催され、協力プロジェクトについて意見交換が行われました。
 (オ)ロシア
 2000年(平成12年)9月のプーチン大統領訪日の際に締結された日露科学技術協力協定に基づき、日露科学技術協力委員会第7回会合が2001年(平成13年)10月に東京で開催されました。現在、同協定に基づき、「バイカル国際生態学研究センターにおける国際共同研究」等のテーマについて日露科学技術協力が進められています。
 (カ)その他
 上記のほか、フランス、イタリア、オーストラリア、インド、イスラエル等と、科学技術協力協定に基づく協力プロジェクトを通じ、環境分野の国際協力を実施しています。

 ウ その他の活動
 (ア)コモン・アジェンダ*
 1993年(平成5年)に行われた日米首脳会談は、環境問題等の21世紀の課題に対処する方策を模索する場として「日米コモン・アジェンダ」を打ち出し、その枠組みの中で地球環境の保護については、定期的協議のための「次官級フォーラム(環境政策対話)の創設」及び「保全政策」、「環境関連開発援助」等の7つの分野が合意されました。
 以来、現在までに10回の全体会合が開催されており、環境をはじめとする協力分野について協議が行われました。また、環境政策対話が8回開催され、地球環境問題を中心に協議が行われました。

*コモン・アジェンダ
地球的展望に立った協力のための共通課題

 (イ)天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)
 UJNRは1964年(昭和39年)に設置され、以降、16回の会合が開催されました。
 (ウ)日・EU環境ハイレベル会合
 1991年(平成3年)7月に出された日・EC共同宣言において、環境分野における日本とEC間の協力の必要性が強調されました。これを受けて、平成4年以降8回の会合が開催されました。
 (エ)日加環境政策協議
 1995年(平成7年)8月にカナダから、両国間の環境政策対話の場の設置について提案がなされたことを受けて、1996年(平成8年)3月、第1回日加環境政策協議がヴァンクーバーで開催されました。第2回会合は、1998年(平成10年)9月に東京で開催され、両国の環境政策の現状や気候変動問題等について意見交換等が行われました。
 (オ)日豪環境政策協議
 1999年(平成11年)4月に豪から、環境問題に関する日本と豪の定期的対話の創設の提案があり、第1回会合が、1999年(平成11年)9月東京で開催されました。第2回協議は2001年(平成13年)8月にキャンベラで開催され、気候変動、化学物質、渡り性水鳥保全戦略、ヨハネスブルグサミット、海洋管理政策等について、意見交換を行いました。
 (カ)21世紀に向けた日中環境協力
 これまで、日中間においては「日中環境協力総合フォーラム」をはじめ、環境分野に関する政策対話を進めてきたところですが、1997年(平成9年)9月に橋本総理(当時)が訪中時に李鵬総理(当時)と「環境開発モデル都市構想」と「環境情報ネットワーク整備」の2本柱からなる「21世紀に向けた日中環境協力」について意見の一致をみました。「環境開発モデル都市構想」は、重慶、貴陽及び大連をモデル都市として大気汚染対策等に集中的に円借款等を供与するもので、2000年(平成12年)3月に、第1回目の円借款供与(99年度分、約160億円)、さらに、2001年(平成13年)3月には、第2回目の円借款供与(2000年度分、約150億円)に関する交換公文が結ばれました。また、「環境情報ネットワーク整備」は、中国の100都市に環境情報のためのコンピュータネットワークを無償資金協力で整備する構想で、2000年(平成12年)3月に、39都市について無償資金協力に関する交換公文が結ばれ、2001年(平成13年)6月には、残る61都市について交換公文が結ばれました。

(3)海外広報等の推進
 わが国が、深刻な公害問題を克服する過程で得た豊富な経験や環境分野での知見を国際社会に提供すること、とりわけ日本が地球環境問題に積極的に取り組んでいることを国際社会に伝えることは、わが国が国際社会において責任ある役割を果たす上で重要です。
 このため、環境省は、日本の環境政策の紹介のための広報パンフレット「Japan Environment Quarterly」や「Quality of the Environment in Japan 2001 (図でみる環境白書の英語版)」等海外広報資料の作成・配布やインターネットを通じた海外広報を行っています。

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