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第5節 

5 農薬のリスク対策

(1)農薬の環境影響の現状
 戦後の農薬使用の増加に伴い、BHC、DDT、ディルドリン、有機水銀剤等による食物及び環境の汚染が社会問題化しましたが、昭和46年以降農薬取締法の改正等による使用規制の強化及び科学技術の進展による毒性の低い農薬の開発により、毒性及び残留性の高い農薬は、使用されなくなったり登録が失効し、残留性の高い農薬による環境汚染の問題は少なくなってきています。
 また、昭和63年頃から農薬による水質汚濁が社会問題化しましたが、平成2年5月に定められた「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」の着実な運用、平成5年12月の中央環境審議会答申「水道利用に配慮した公共用水域の水質保全対策のあり方について」に沿った各種対策の推進等により、現在農薬による水質汚濁問題は改善されつつあります。さらに、農薬の使用状況等の変化に対応するため、平成13年12月には「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」の対象農薬を10農薬追加し、さらなる水質汚濁の防止に努めました。
 しかし、本来、農薬の使用は生理活性を有する物質を環境中に放出するものであり、今後とも、人体や環境に悪影響を及ぼすことのないよう、安全性を評価し、適正に管理していく必要があります。

(2)農薬の環境リスク対策の推進
 国内で販売される農薬については、その使用による人体や環境への悪影響を未然に防止するため、農薬取締法により毒性、残留性等についての審査を経て登録を受けなければならないこととされており、毒性、残留性に関し登録を保留するかどうかの基準として、1)作物残留に係るもの、2)土壌残留に係るもの、3)水産動植物に対する毒性に係るもの及び4)水質汚濁に係るものについて設定しています。このうち、平成14年3月現在、作物残留に係る基準は370農薬について、水質汚濁に係る基準は128農薬について、それぞれに個別に基準値を設定しています。その他の土壌残留に係る基準及び水産動植物に対する毒性に係る基準については各農薬に共通の基準を設定しています。
 登録された農薬についても、その残留性からみて、使用方法などによっては、これが原因となって人畜に被害を生ずるおそれのある場合などには、作物残留性農薬、土壌残留性農薬又は水質汚濁性農薬に指定し、その使用の規制を行っています。作物残留性農薬等に指定された農薬その他の規制を受けている農薬は表1-5-8に示すとおりです。



 その他、農薬リスク総合評価システムの確立・推進、農薬の作物残留、水質汚濁、大気中への拡散等環境中等での残留実態についての調査及び農薬の生態影響等についての調査研究を実施しました。

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