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第3節 

4 閉鎖性水域における水環境の保全

(1)海域
 総量規制の対象の水域(東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海)においては、当該水域に係る水質、発生負荷量及び削減対策状況等について総合的な調査・解析を行っています。また、瀬戸内海では、赤潮発生機構の解明及び富栄養化対策の検討等のための調査を行いました。
 有明海においては、水質及び発生負荷量等について調査・解析を行うとともに、平成12年度に深刻なノリ不作が生じるなど有明海の環境悪化が懸念されていることから、有明海の海域環境の改善を目的とした総合的な調査を実施しました。

(2)湖沼
 湖沼の水質保全については、水質汚濁防止法に加えて湖沼水質保全特別措置法によって対策が講じられています。この法律は、湖沼の水質保全を図るため、水質環境基準の確保の緊要な湖沼を指定して、当該湖沼につき湖沼水質保全計画を策定し、下水道整備等の水質保全に資する事業、各種汚濁源に対する規制等の措置、さらには湖辺の自然環境の保護等の対策を総合的・計画的に推進しようとするものです。指定湖沼は10湖沼あり、霞ヶ浦、印旛沼、手賀沼、琵琶湖及び児島湖について、第4期湖沼水質保全計画を策定しました。湖沼水質保全計画の概要は表1-3-7のとおりです。



 また、水田や都市域等非特定汚染源から発生する汚濁負荷に関する実証調査、健全な水循環の回復や水生植物による水質浄化の検討調査等、湖沼の汚濁機構解明や水環境保全のための調査を実施しました。

(3)閉鎖性海域における総量規制
 広域的な閉鎖性海域については、水質汚濁防止法において、当該水域への汚濁負荷量を全体的に削減しようとする水質総量規制の制度が設けられており、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海について化学的酸素要求量(COD)、窒素含有量及びりん含有量を指定項目として、平成16年度を目標年度とした第5次水質総量規制を実施することとしました。
 第5次水質総量規制に係る総量削減基本方針では目標年度における発生源(生活系、産業系、その他系)別の削減目標量等について定められており、平成11年度の負荷量に対し、CODについては東京湾で8%、伊勢湾で8%、瀬戸内海で6%、3水域全体では7%の削減を図ることとなっています。窒素含有量については東京湾で2%、伊勢湾で4%、瀬戸内海で5%、3水域全体では4%の削減を図ることとなっています。りん含有量については東京湾で9%、伊勢湾で8%、瀬戸内海で6%、3水域全体では7%の削減を図ることとなっています(図1-3-14)。その達成のため、下水道整備の促進を図るとともに、地域の実情に応じ、合併処理浄化槽、農業集落排水施設、コミュニティ・プラント等の整備等の生活排水対策、工場等の総量規制基準の強化等の産業排水対策、合流式下水道の改善等その他の諸対策を総合的に推進しました。



(4)富栄養化対策
 富栄養化*に伴う赤潮等の現象がみられるところがあり、水質保全上問題となっています。

*富栄養化
元来は、湖沼が、長い年月の間に流域からの栄養塩類の供給を受けて生物生産の高い富栄養湖に移り変わっていく現象を指すものであったが、近年、人口、産業の集中等により、湖沼に加えて東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の閉鎖性海域においても窒素、りん等の栄養塩類の流入により、藻類等が増殖繁茂することに伴い、その水質が累進的に悪化することをいう。

 このような富栄養化に伴う障害の発生にかんがみ、その原因物質である窒素及びりんについて、次のような施策が講じられています。
 湖沼の窒素及びりんに係る環境基準については、琵琶湖(2水域)等合計48水域(44湖沼)について類型指定が行われています。また、窒素及びりんに係る排水基準については、現在、りん規制対象湖沼は1,200、窒素規制対象湖沼は201となっています。このほか、琵琶湖や霞ヶ浦等の10指定湖沼については、湖沼水質保全特別措置法に基づき窒素・りんに係る汚濁負荷量規制が実施されています(釜房ダム貯水池及び野尻湖についてはりんのみ)。
 海域の窒素及びりんに係る排水基準については、閉鎖性が高く富栄養化のおそれのある海域に適用することとされており、現在、88の海域とこれに流入する公共用水域に排水する特定事業場を対象として、排水規制を実施しています。また、海域における全窒素及び全りんの環境基準については、上記の閉鎖性海域を対象に類型指定の作業が国及び都道府県において行われているところであり、51海域が指定されています。

(5)瀬戸内海の環境保全
 瀬戸内海は、すぐれた自然の景勝地、貴重な漁業資源の宝庫であるという恵まれた自然条件を有する反面、周辺に産業及び人口が集中した閉鎖性水域であることから瀬戸内海環境保全特別措置法によって、総合的な施策が進められてきています。
 瀬戸内海環境保全特別措置法等に基づき瀬戸内海関係13府県の区域において講じられた環境保全対策の概要は次のとおりです。

 ア 府県計画の推進
 関係府県知事は、瀬戸内海の環境の保全に関し実施すべき施策を定めた府県計画に基づいた各種環境保全対策を実施しています。

 イ 特定施設の設置等の許可
 特定施設の設置等については許可制が採られており、平成12年度の設置許可件数は349件、変更許可件数は438件でした。

 ウ 水質総量規制の推進
 平成13年度から、平成16年度を目標年度とする第5次の水質総量規制を実施することとしました(本節4(3)参照)。

 エ 自然海浜の保全
 瀬戸内海沿岸の関係11府県は、海水浴、潮干狩り等海洋性レクリエーションの場として利用されている自然海浜を保全するため、自然海浜保全地区条例等を制定しており、平成13年12月末までに91地区の自然海浜保全地区を指定しています。

 オ 埋立てに当たっての環境保全上の配慮
 瀬戸内海における公有水面埋立ての免許又は承認に当たって、関係府県知事は、瀬戸内海の特殊性に十分配慮しなければならないとされています。瀬戸内海環境保全臨時措置法施行以降平成13年11月1日までの間に約4,600件、約12,700ha(うち平成12年11月2日以降の1年間に76件、398.2ha)の埋立ての免許又は承認がなされています。

(6)閉鎖性水域の浄化対策
 水質悪化が著しい湖沼においては、底泥からの栄養塩類の溶出等を抑制するため、底泥しゅんせつを実施するとともに、湖沼に流入する汚濁負荷の削減を図るため、流入河川において直接浄化施設の整備を実施しました。
 港湾及び周辺海域の環境保全のため、平成13年度には港湾公害防止対策事業(有機汚泥等のしゅんせつ等)を東京港等5港で行ったほか、港湾区域外の一般海域における浮遊ごみ・油の回収事業を行いました。
 さらに、閉鎖性が強くヘドロの堆積した海域の環境改善を目的として海域環境創造事業(覆砂、干潟や海浜整備)を三河湾、瀬戸内海の2海域及び大阪港等17港において実施しました。

(7)大都市圏の「海」の再生
 都市再生プロジェクト(第3次決定)を受け、水質汚濁が慢性化している大都市圏の海の再生を図るため、先行的に東京湾奥部について、関係行政機関からなる東京湾再生推進会議を設置しました。平成14年2月に第1回目の会議を開催し、その水質改善のための行動計画の策定に着手しました。

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