前のページ 次のページ

第1節 

3 オゾン層保護対策

(1)国際的取組とオゾン層保護法
 オゾン層の破壊を防止するために、「オゾン層の保護のためのウィーン条約*」が1985年(昭和60年)3月に、また「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が1987年(昭和62年)9月にそれぞれ採択されました。わが国においてもこれらを的確かつ円滑に実施するため、1988年(昭和63年)5月に「オゾン層保護法*」を制定するとともに(図1-1-11)、同年9月に条約及び議定書を締結しました。

*オゾン層の保護のためのウィーン条約
オゾン層の保護のため国連環境計画(UNEP)を中心として国際的な対策の枠組みが検討され、採択された条約。ウィーン条約と略称される。国際的に協調してオゾン層やオゾン層を破壊する物質について研究を進めること、各国が適切と考える対策を行うこと等を定めている。1988年9月に発効し、2000年12月現在175か国と1経済機関(EC)が加入している。

*オゾン層保護法
「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」昭和63年5月20日法律第53号


 しかし、その後の科学的知見の集積により、従来のCFC等の規制ではオゾン層の適正な保護に不十分であることが分かり、1990年(平成2年)、1992年(平成4年)、1995年(平成7年)、1997年(平成9年)及び1999年(平成11年)の5度にわたって、議定書の改正等による規制強化が図られました。現在の規制スケジュールは表1-1-1のとおりです。
 わが国では、オゾン層保護法等に基づき、次のような施策を実施してきています。



 ア CFC等の製造等の規制
 オゾン層保護法では、モントリオール議定書に基づく規制対象物質*を「特定物質」として、製造規制等の実施により、モントリオール議定書の規制スケジュールに即して生産量及び消費量(=生産量+輸入量−輸出量)の段階的削減を行っています。この結果、ハロンについては1993年(平成5年)末をもって、CFC、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタン及びHBFCについては1995年(平成7年)末をもって、生産等が全廃されています。他のオゾン層破壊物質についても、HCFCについては2019年(平成31年)末をもって、臭化メチルについては2004年(平成16年)末をもって、検疫用途等を除き、その生産等が全廃されることとなっています。

*モントリオール議定書に基づく規制対象物質
CFC、ハロン、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタン、HCFC、HBFC(ハイドロブロモフルオロカーボン)及び臭化メチル

 イ CFC等の排出抑制・使用合理化
 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、そのための「特定物質の排出抑制・使用合理化指針」(環境庁・通商産業省告示)を昭和64年に告示し、逐次改正するとともに、その周知普及を図っています。

 ウ 国家ハロンマネンジメント戦略
 1998年(平成10年)に開催されたモントリオール議定書第10回締約国会合において、先進国は2000年7月末までに、「国家ハロンマネンジメント戦略」を策定し、UNEPのオゾン事務局に提出することが決定されたため、関係省庁で検討を行い、当該戦略を平成12年7月末に提出しました。

 エ 国家CFC管理戦略
 1999年(平成11年)に開催されたモントリオール議定書第11回締約国会合において、先進国は2001年7月末までに、「国家CFC管理戦略」を策定し、UNEPのオゾン事務局に提出することが決定されたため、関係省庁で検討を行い、当該戦略を平成13年7月末に提出しました。

(2)CFC等の回収・再利用・破壊の促進
 CFC等の主要なオゾン層破壊物質の生産は、平成7年末をもってすでに全廃されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされた形で存在しているCFC等が相当量残されており、オゾン層保護を一層推進するためには、こうしたCFC等の回収・再利用・破壊を促進することが現在の課題となっています。
 わが国では、関係省庁からなる「オゾン層保護対策推進会議」において、平成7年6月にCFC等の回収等の促進方策を取りまとめ、さらに平成9年9月にCFC等回収等の一層の促進方策を取りまとめました。本取りまとめにおいては、家庭用冷蔵庫だけでなく、カーエアコン、業務用冷凍空調機器に関しても破壊のための回収を行うこととするとともに、それぞれの機器ごとに、関係者が協力して回収等を行うための関係者の立場に応じた具体的な役割分担を含めた回収の仕組みについて考え方を示しています。これらを踏まえて、これら機器のメーカー、ユーザー事業者、整備業者等を所管する府省においては、所管する業界団体等に対して、CFC等回収等の一層の促進に取り組むよう要請を行いました。これらの取組の状況については、オゾン層保護対策推進会議においてフォローアップを実施しています。
 環境省においては、本取りまとめに基づき、CFC等の破壊技術確立のためのモデル事業等を実施するとともに、フロン巡回回収システムモデル事業など、フロン回収等普及促進事業を行い、関係府省、地方公共団体と連携して実効ある対策を積極的に展開しています。
 これまでのCFC等回収システム構築のための取組状況は以下のとおりです。

 ア 地域におけるフロン回収等推進協議会
 ・地域におけるCFC等回収システムの構築と運用、関係者のコンセンサスの形成。
 ・運搬・保管体制整備、回収協力店制度、CFC等回収済ステッカー事業等の実施。
 ・すべての都道府県・政令指定都市において協議会を設置(平成11年8月)。

 イ カーエアコンの関係業界
 ・平成10年1月より1都3県にて収集・運搬・移充填に係るシステムの運営を開始。
 ・システム運営上の問題点等を検証・改善しつつ、平成10年10月までに全国展開。

 ウ 業務用冷凍空調機器の関係業界
 ・全国30地域に、「冷媒回収促進センター」を設置。
 ・回収された冷媒の管理・運搬実務を行う「回収冷媒管理センター」(107か所)を設置(平成13年9月末現在)。
 ・冷媒回収装置の性能試験方法を制定し、能力表示を統一(平成12年6月)。

 エ 家庭用冷蔵庫の関係地方公共団体及び業界
 ・家庭用冷蔵庫からのCFC等の回収等に取り組んでいる地方公共団体数は、平成11年度末では2,732市区町村であったものが、平成12年度末には2,747市区町村(全体の85%)となるなど地方公共団体によるCFC等の回収は着実に進展。
 ・家電リサイクル法*に基づき、平成13年4月より家電メーカー等が素材のリサイクルとあわせて家庭用冷蔵庫、ルームエアコンのフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収を実施している。

*家電リサイクル法
「特定家庭用機器再商品化法」平成10年6月5日法律第97号

 さらに、CFC等の一層の回収率向上のため、平成13年6月には、議員立法により「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法*)」が制定され、これにより、業務用冷凍空調機器*については、平成14年4月から、また、カーエアコンについては、平成14年10月31日までの政令で定める日から、これら機器が廃棄される際のフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収・破壊等が義務付けられることになりました。なお、この法律は温暖化防止をも目的とし、HFCも対象としています。

*フロン回収破壊法
「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」平成13年6月22日法律第64号

*業務用冷凍空調機器
フロン類が充てんされている業務用のエアコンディショナー並びに冷蔵機器及び冷凍機器(自動販売機を含む。)



 一方、CFC等の破壊処理について、平成11年3月に「CFC破壊処理ガイドライン」(平成8年5月策定)を改訂するとともに、家庭用冷蔵庫の断熱材及び建築用断熱材のCFCについて破壊処理技術の実証を行うため、平成13年度、全国2つの地方公共団体に委託して破壊モデル事業を実施しました(表1-1-3)。



 フロン破壊処理施設は、平成12年度末で53施設あり、平成12年度のフロン破壊処理量は1,130トンと平成11年度の1,004トンに比べ126トン増加しました。また、フロン再生施設は平成12年度末で4施設あり、フロンの再生量は138トンでした。

(3)CFC等の排出抑制、使用合理化への支援対策等
 CFC等の代替品を使用する洗浄設備、冷凍冷蔵関連装置及びフロン回収・破壊設備等については、法人税及び所得税についての特別償却等の税制上の措置を講ずるとともに、これらの関係設備について日本開発銀行(平成11年10月より日本政策投資銀行)等による低利融資等の金融上の措置を実施しています。

(4)オゾン層の破壊に係る観測・監視、調査研究の推進
 オゾン層の適正な保護を図るため、オゾンゾンデ、オゾン分光光度計、オゾンレーザーレーダー、人工衛星に搭載した観測機器等を用いてオゾン層及びその破壊関連物質の観測・監視を行うとともに、オゾン層破壊機構の解明及びモデル化に関する研究、オゾン層破壊により生ずる影響に関する研究等を実施しています。

前のページ 次のページ