前のページ 次のページ

第4節 

3 終わりに

 これまでみたきたように、わが国を含めた世界の社会経済システムの基盤となる環境は、多くの分野でより一層深刻な状況にあります。こうした状況に対し、企業や市民の取組が徐々に浸透し、経済成長以上に環境負荷を低減させるという環境効率性の向上が図られてきていることは事実ですが、本節の冒頭でみたように、環境負荷の総量を一定の範囲にとどめるためには、今日の大量生産・大量消費・大量廃棄の考え方に基づく社会経済システムそのものを根本的に見直し、経済の成熟化を伴いながら、資源とエネルギーの大量消費に依存しない新しい段階の社会への移行を目指さなければなりません。
 迫り来る環境制約に関するデータを眺めると、そこに至る道程には困難なものがあるかもしれませんが、国民の価値観、企業の行動、地域での取組の中には、新しい持続可能な社会経済システムへの移行を思わせる予兆を見出すことができ、市民、企業、政府等の各主体が、一体となって検討していく中で、新たな社会経済システムへの道のりが示されることになると考えます。
 地球サミットから10年を迎えた本年、ヨハネスブルグサミットが開催され、持続可能な発展の持つ意味について改めて議論が行われることとなりますが、私たちはこの機会をとらえ、現在享受している恵み豊かな環境とそれに基づく安定した経済社会が、未来永劫、私たちの子孫に引き継がれていくためには、現在どのような選択を行い、第一歩を踏み出す必要があるのかじっくりと考え、将来のために、環境の視点から社会の構造改革を進めていく必要があります。

前のページ 次のページ