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第3節 

4 環境分野における国際貢献

 わが国がこれまで経験してきた公害・環境対策の実績を活かすため、また、世界の環境と経済に与えている影響の大きさにかんがみ、環境分野における国際貢献を積極的に展開していくことが期待されています。

(1)開発途上国に対する環境協力の意義
 経済成長と環境負荷の関係を分析すると、経済成長初期においては環境負荷は小さく、経済成長の進展にしたがって環境負荷を増大させ、一定程度の成長段階に至った後には、環境対策の進展により環境負荷が低減していくという研究があり、このような逆U字型のカーブは、環境クズネッツ曲線と呼ばれています(図3-3-2)。持続可能な開発を達成するためには、低開発国が先進国と同様の発展経路をたどるのではなく、環境負荷のピークを下げ、逆U字型の曲線のふくらみをできるだけなだらかなものとすることが極めて効果的です。そのためには、開発途上国自身が環境対策に積極的に取り組む必要があるとともに、開発途上国が「後発性の利益」をも得ることができるよう、すでに対策の知見を有する先進国としては、途上国の自助努力に対して積極的な協力を展開することが重要です。



(2)アジア地域における政府開発援助等を通じた貢献
 アジア地域は、今後急速な人口の増加と経済発展が予想されており、その結果、各国における環境汚染や越境汚染の拡大等により環境負荷が高まり、そのことがひいては地域社会の不安定要因となることが危惧されています(図3-3-3)(図3-3-4)。わが国は近年、食料、資源、製品等のアジア地域からの輸入量を増加させており、環境保全の観点のみならず社会・経済の安定の観点からも、アジアとの共生が不可欠であり、地理的歴史的に深い関係を有するアジア太平洋地域におけるわが国の環境分野における貢献が非常に重要なものとなっています。





 わが国は、政府開発援助(ODA)の約30%を環境案件に充て、環境分野の政府開発援助(環境ODA)に積極的に取り組んでおり、特にアジア地域において重点的に展開しています(図3-3-5)。このほかにも、アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア)、ESCAP・アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議、環日本海環境協力会議、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク、日中韓三か国環境大臣会合等の地域内の環境協力について積極的にリーダーシップを発揮し、その推進を図ってきました。これらの取組は、一部の国のみならず、参加国すべてに利益をもたらすものであり、アジア地域における環境・社会・経済の安定性の確保に資するものとなります。




「インドネシア生物多様性保全計画」国際協力事業団 提供

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