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第1節 

1 意識の変化と行動の変化

 近年、日常生活における市民の関心は、食品の安全性等への関心と合わせて、環境問題への関心が年々高まっており(図2-1-1)、こうした市民の意識の変化が商品の購買行動に影響を与えはじめるとともに、企業の活動に対する関心の高まりにつながっています。



(1)購買行動に関する意識の変化
 従来、消費者の商品購入時における意思決定は、主に品質と価格に基づき行われるといわれてきましたが、近年は、品質と価格以外にも環境への配慮という新しい判断材料が加わってきています。
 「環境保全に配慮した商品の広告表示に関する実態調査報告書」(公正取引委員会事務総局、平成13年3月)によれば、実際に商品を購入する際に環境保全に配慮した商品であるかどうかをどの程度考慮するかとの質問に対して、「価格や品質・機能に関係なく、環境保全に配慮した商品を購入する」と「品質が劣っていても許容できる範囲であれば、環境保全に配慮した商品を購入する」との回答は合わせて約4割を占めており、「価格や品質が同程度であれば、環境保全に配慮した商品を選ぶ」との回答まで含めれば、約95%の消費者モニターが環境保全に配慮した商品を選ぶと回答しています(図2-1-2)。



 また、「循環型社会の形成に関する世論調査」(内閣府、平成13年7月)によると、「環境にやさしい製品が一般の製品と比べて割高な場合、一般の製品より何%高程度までであれば、あなたは環境にやさしい製品を購入すると思いますか」という問いに対し、「5%高程度」から「40%高以上」と回答したものを合わせると、約7割を占めています(図2-1-3)。



 以上のように、環境保全に配慮した商品かどうかが、消費者の商品選択において重要な要素として浸透してきているとともに、環境配慮型製品が、一般製品と比べて割高でも受け入れられる状況になってきていることが分かります。

(2)グリーン購入の進展
 日々の買い物で環境への配慮を大切にして商品や店を選び、地球環境を大切にする心豊かな暮らしを創っていこうとする人々はグリーンコンシューマーとも呼ばれていますが(表2-1-1)、消費者が環境に配慮して買い物をするということは、その商品を売っている店を選ぶことであり、商品を製造するメーカーを選ぶことでもあります。こうした行動が積み重なることにより、商店やメーカーの行動を変え、最終的には社会経済システムを環境に配慮したものへと変えていくことが可能になります。



 また、環境配慮型製品は何なのか、どこで買えるのか知りたいという消費者のニーズの高まりに対応し、市場に供給される製品・サービスの中から環境負荷が少ないものを優先的に購入するというグリーン購入の動きを支援するため、グリーン購入ネットワーク(GPN)による商品の環境情報、グリーンコンシューマー全国ネットワークによる「全国ス−パー・生協・コンビニ エコロジー度チェック」などさまざまな取組も始まっています。
 こうした消費者の行動の変化は市場にも変化を及ぼしており、第6回グリーン購入アンケート調査結果報告(グリーン購入ネットワーク(GPN)平成13年度)によれば、グリーン購入の主要な対象となっている15の商品分野について、環境配慮型製品の総販売額に占める割合は、全体で30%を占めるまでに至っています(図2-1-4)。



(3)市民が企業に求める社会的役割の変化
 これまでは、市民が企業を評価するに当たって、製品やサービスについて「より良いものをより安く」提供しているのかといった評価が中心だったといわれています。しかし、近年は、環境保全意識の変化も背景として、市民が求める企業の社会的役割に変化が起こっています。
 「国民生活モニター調査」(内閣府、平成13年9月実施)によれば、企業の社会的役割として、3分の2の回答者が「環境保護」を挙げています(図2-1-5)。また、同調査では、今後企業が社会的信用を得るためにさらに力を入れるべきものとして、回答者の7割が「環境保護」を挙げています。市民の環境に対する関心は、企業に対しても環境問題への対応を求めていることを示しています(図2-1-6)。





(4)環境の観点からの企業評価の動き
 このような市民の関心を背景として、どの企業がどの程度環境を考慮した経営を行っているのか、外部から評価しようとする動きがあります。その中には、企業が作成する優れた環境報告書*を表彰するものや、企業の優れた環境保全のための取組を表彰するものなど、企業を環境の視点から評価し、ランク付けを行っているものがあります(表2-1-2)。最近では、環境経営の格付を行う組織として環境経営格付機構も発足しています。また、さまざまな就職情報誌に各企業の環境経営度に関する情報が盛り込まれる等、学生が就職活動を行う際、企業を選ぶ観点に環境が考慮されるようになってきました。

*環境報告書
企業等の事業者が、最高経営者の緒言、環境保全に関する方針・目標・行動計画、環境マネジメントに関する状況(環境マネジメントシステム・環境会計・法規制遵守・環境適合設計その他)及び環境負荷の低減に向けた取組等について取りまとめ、一般に公表するもの



 このように、市民の環境への関心の高まりは商品の購買行動に変化を与えるだけでなく、企業の行動変化の背景にもなり、環境保全型商品の普及等、実際の市場を変える動きにつながっているということができます。

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