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第5節 

3 酸性雨の防止

 酸性雨問題に関しては、北米やヨーロッパでは湖沼や森林等の生態系あるいは遺跡等の建造物などへの影響が早くから問題となり、1979年(昭和54年)に締結された「長距離越境大気汚染条約(ウィーン条約)」に基づき国際的取組が進められてきました。
 東アジア地域においても、各国の経済発展に伴い硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量が増大し、酸性雨問題が現実のものとなりつつあることから、酸性雨による悪影響の未然防止のための国際的取組を進めることが急務となっています。
 このため、「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想*」を提唱し、東アジア各国及び関係国際機関の専門家の参加による、東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合の開催など、その実現に向けて努力してきました。
 1998年(平成10年)の第1回政府間会合では、ネットワークの具体的な活動内容である「ネットワークの設計」についての検討が行われ、ネットワークの試行稼働を実施すること、試行稼働期間中のモニタリングデータの集約・解析・保管、精度保証・精度管理等を行う暫定ネットワークセンターとして、財団法人日本環境衛生センター・酸性雨研究センター(新潟県)を指定すること、暫定事務局を環境省に置くこと等が取りまとめられました。これを受けて1998年(平成10年)4月から実施されている試行稼働には、10か国(中国、インドネシア、日本、韓国、マレイシア、モンゴル、フィリピン、ロシア、タイ、ベトナム)が参加しており、参加各国がそれぞれ国内モニタリング計画に基づいて設置した計38か所のモニタリング地点において、ガイドライン・技術マニュアル等に基づく酸性雨モニタリングが実施されました。
 さらに、引き続き精度管理プログラム、研修プログラム等を実施しました。2000年(平成12年)7・8月には第3回暫定科学諮問グループ(ISAG)会合及び第5回政府間作業グループ(WG)会合を、2000年(平成12年)10月には第6回WG会合を開催し、ネットワークの試行稼働を評価するとともに、試行稼働における酸性雨モニタリング状況報告書を取りまとめました。また、2000年(平成12年)10月には第2回政府間会合を開催し、ネットワークの本格稼働の実施に係る「共同声明」の採択、モニタリングガイドライン・技術マニュアル等技術文書の承認するとともに、ネットワーク本格稼動における事務局として国連環境計画(UNEP)アジア太平洋環境評価プログラム事務所を、またネットワークセンターとして(財)日本環境衛生センター・酸性雨研究センターをそれぞれ指定しました。これを受け、東アジア酸性雨モニタリングネットワークは参加10か国において2001年(平成13年)1月から本格稼働を開始しています。

*東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想
東アジア地域における地域協同の取組の第一歩として、東アジアにおける酸性雨問題の状況に関する共通の理解を形成すること、酸性雨による環境への悪影響を防止もしくは減少させるために、地方・国・地域レベルの意思決定に有益な情報を提供すること等を目的として酸性雨モニタリングのネットワークを設立することを目指すもの

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