1 調査研究及び監視・観測等の充実
(1)環境省試験研究機関の整備と研究の推進
国立水俣病総合研究センター
国立水俣病総合研究センターにおいては、水銀汚染問題に関するわが国の経験の蓄積を活用し、国際共同研究等の国際協力に貢献していくなど本章第8節1(1)イ(イ)に掲げた施策を進めていくこととしています。
(2)公害防止等に関する調査研究の推進
環境省に一括計上する平成13年度の関係行政機関の試験研究機関(国立機関及び独立行政法人)の地球環境保全等に関する研究のうち、公害の防止等に関する各府省の試験研究費は、総額19億173万円であり、8省庁25試験研究機関等において、公害防止技術の開発、環境汚染の生体に及ぼす影響の把握、環境汚染メカニズムの解明、自然環境の管理手法の開発等環境研究技術の幅広い領域にわたり、92の試験研究課題を実施します。
平成13年度には、環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現、自然と人間との共生の確保等環境基本計画に定める長期的な目標の達成に資するため、環境の現状の的確な把握、環境汚染による環境変化の機構の解明、環境汚染の未然防止、汚染された環境の修復等について、幅広い分野の調査研究を実施することとしています。
平成13年度において編成する総合研究プロジェクトの数は9で、その内容は次のとおりです。
ア 大気環境の保全に関する総合研究
各種発生源からの窒素酸化物、ベンゼン等大気汚染物質排出抑制技術の開発等に関する13課題の研究を継続して実施するほか、軽油の脱硫に関する研究等新たに3課題の研究を実施します。
イ 排水処理の高度化に関する総合研究
産業排水等の物理化学的及び生物学的処理技術等に関する7課題の研究を継続して実施するほか、有機塩素化合物等有害化学物質の排出抑制に関する研究を新たに実施します。
ウ 海洋環境の保全に関する総合研究
海洋における汚染現象の解明、汚染防止及び浄化技術等に関する7課題の研究を継続して実施するほか、流出油等の海産生物に対する有害性に関する研究等新たに2課題の研究を実施します。
エ 陸水系の水環境の保全に関する総合研究
河川、湖沼、地下水等の陸水系における汚染現象の解明、汚染防止及び浄化技術の開発等に関する6課題の研究を継続して実施するほか、エコ・アドバンスト技術による高効率環境修復・保全システムに関する研究を新たに実施します。
オ 廃棄物の処理と資源化技術に関する総合研究
廃棄物の処理技術、再利用技術の開発等に関する10課題の研究を継続して実施するほか、発火・爆発性廃棄物の安全処理に関する研究等新たに3課題の研究を実施します。
カ 自然環境の管理及び保全に関する総合研究
自然環境への影響評価、自然環境の保護・管理等に関する9課題の研究を継続して実施するほか、屋久島森林生態系における固有樹種と遺伝子多様性の保全に関する研究を新たに実施します。
キ 都市・生活環境の保全に関する総合研究
都市における総合的な環境保全を図るため、騒音及び悪臭の発生源対策技術等に関する4課題の研究を継続して実施するほか、生態系の観点からみた下水再生システムのあり方に関する研究を新たに実施します。
ク 環境汚染物質に係る計測技術の高度化に関する総合研究
測定技術の精度向上及び信頼性の確保、測定対象の特性に見合った新たな計測技術の開発等に関する6課題の研究を継続して実施します。
ケ 環境汚染物質の環境リスクの評価、管理に関する総合研究
環境汚染物質のリスク評価、評価手法の開発等に関する11課題の研究を継続して実施するほか、廃棄物の熱処理における臭素化ダイオキシン類の長期的管理方策に関する研究等新たに4課題の研究を実施します。
また地域における環境問題について地方公共団体と国が共同で研究を実施する地域密着型環境研究として、生物間相互作用を考慮した適切な湖沼利用と総合的な湖沼保全を目指す基礎的研究を継続して実施するほか、ノリ加工用海水の浄化再生に関する研究を新たに実施します。
(3)地球環境研究に関する調査研究等の推進
地球環境保全のための科学的基盤づくりを進め、国際的取組に積極的に貢献するため、平成13年度においても「地球環境保全調査研究等総合推進計画」を策定し、調査研究、観測・監視等の総合的な実施体制を確保します。
「地球環境研究総合推進費」については、予算額26億5千万円を計上し、引き続き学際的、国際的、省際的な観点から地球環境研究の総合的な推進を図ります。特に気候変動枠組条約京都議定書の内容を踏まえた温暖化防止に資する研究等、各分野における施策立案の科学的基盤となるような研究を一層推進します。
平成13年度からは、「地球環境保全試験研究費」が創設され、地球温暖化の防止に関する研究の中でも、特に政府としての推進・調整が重要である関係行政機関の試験研究機関又は関係行政機関の行う研究を、政府として強力かつ効果的に進めます。
また、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)については、平成13年3月に済州島(韓国)で開催された第6回政府間会合における決定に基づき、平成11年に神戸市内に開設されたAPNセンターを中核として、地域内研究活動の支援等の充実・強化を図ります。
また、「地球環境戦略研究機関」(IGES)においては、第1期戦略研究プロジェクトの成果を踏まえ、気候変動や都市環境管理などのテーマに引き続き取り組むとともに、平成13年度からの第2期戦略研究計画に基づき新たに環境と経済などのプロジェクトを開始し、アジア・太平洋地域を中心とする国際的連携の下で21世紀の持続可能な社会の実現のための戦略研究を推進していきます。
(4)地球環境に関する観測・監視
観測・監視については、世界気象機関(WMO)の全球大気監視(GAW)計画の一環としての温室効果ガス、CFC、オゾン層、有害紫外線等の定常観測を引き続き実施するとともに、日本周辺、西太平洋海域における洋上大気及び海水中の二酸化炭素等の定期観測、オゾンレーザーレーダーを用いたオゾンの高度分布の測定を継続します。
また、平成13年度に打ち上げ予定の環境観測技術衛星(ADEOS-II)に搭載する成層圏オゾン層等観測機器の最終試験及び打ち上げ後の機能確認を行うとともに、温室効果ガスの観測を主目的とするセンサー(SOFIS)の開発研究を進める等人工衛星による観測・監視手法等の開発利用を一層推進します。さらに、「みらい」等の海洋観測船等を整備・拡充するとともに、地球深部探査船等の深海地球ドリトリング計画を推進することにより、地球規模の諸現象の解明・予測等の研究開発を推進します。
また、地球温暖化に伴う全球的な気候変動の予測を行い、その結果を「地球温暖化予測情報」として公表します。
(5)環境基本計画推進調査
環境基本計画推進調査は、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築するという環境基本計画の目標を実現するための課題に関し、調査研究を実施するものです。
環境省に一括計上された平成13年度の環境基本計画推進調査予算は1億5,000万円であり、平成12年度からの継続調査を含め、幅広い調査研究を実施します。
(6)環境保全に関するその他の試験研究
環境保全に関する試験研究では、他にも下記のようなものがあります。
CO2削減・固定化等に関する各種の技術情報や動向について広く調査し、分類、体系化、評価を行い、「技術知識ベース」の形成を図り、特に重点的な技術開発を促進すべき分野や、その開発の推進の方向性を提示します。
PFC等の地球温暖化ガスの代替ガス・システム及び代替プロセスの研究開発を行うエネルギー技術総合研究開発、地球上の二酸化炭素の分布を調査する広域環境影響モニタリング調査等を実施するほか、温室効果ガスの固定化・有効利用・処分技術の研究開発として、二酸化炭素の海洋隔離に伴う環境影響予測技術の開発、二酸化炭素の地中貯留技術の開発、二酸化炭素から次世代の液体燃料であるメタノールを合成する技術の開発、エネルギー効率が高く、オゾン層を破壊せず、地球温暖化効果の小さい特性を備えたCFC等の新規代替物質の技術開発、二酸化炭素や環境負荷物質の排出の少ない環境調和型生産技術の研究開発、バイオテクノロジーを利用した植物による原料生産技術を確立するための研究開発等を引き続き実施します。
また、環境への負荷が小さく、新たな海洋空間の創造が可能な超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)に関する研究開発、窒素酸化物を大幅に削減できる環境低負荷型舶用推進プラント(スーパーマリンガスタービン)の研究開発、荒天下で高粘度油を回収できる荒天対応型大型油回収装置等の研究開発、二酸化炭素の海底貯留法に関する研究を引き続き実施します。
油流出の際、精度の高い漂流予測が必要であることから、漂流予測手法の高度化を図るための研究・開発を引き続き行います。
木質複合建築構造技術の開発、先端技術を活用した国土管理技術の開発、シックハウス対策技術の開発等を引き続き実施するとともに、エネルギー資源の自立循環型住宅・都市基盤整備支援システムの開発等に着手します。
持続的農業を推進するための革新的技術開発を総合的に行う研究、農林水産生態系における内分泌かく乱物質の動態と農林水産生物への作用機構の解明及び影響防止技術の開発、農林水産生態系の持つ自然循環機能の高度な利用技術の開発、有機性資源の革新的適正処理及びリサイクル技術の開発等を引き続き実施するとともに、農林業に由来する廃棄物からのバイオマスエネルギー実用化技術の開発、野生鳥獣を適正に管理し、農林業被害を軽減する農林生態系管理技術の開発等を新たに開始します。
高度電磁波利用技術に関する国際共同研究、衛星搭載センサによるグローバル計測技術、環境情報の高度利用技術の研究開発等、電磁波を利用した地球環境計測技術に関する開発・調査研究を実施します。
また、全球的地球環境変動を総合的に観測・把握してその知見を活用し、「気候予知」など高精度な地球環境変動予測の実現を図ることは、地球規模の諸問題の解決に不可欠という認識の下、「全球的地球環境総合診断プロジェクト」に着手します。具体的には、地球の7割を占めるにもかかわらず従来、陸域に比べ情報が不足していた海洋の観測を飛躍的に向上させるため、海洋自動観測フロート約3千個を世界中に展開し、地球規模の高度海洋監視システムの構築を目指すARGO計画を推進するとともに、二酸化炭素等の温室効果気体の直接観測を可能とする成層圏プラットフォームの研究開発を推進します。
さらに、地球規模の複雑な諸現象を忠実に再現することを目指した超高速計算機システム「地球シミュレータ」の開発を引き続き推進します。