8 砂漠化への対処
(1)問題の概要
砂漠化*というと、一般には土地の乾燥化のみが考えられがちですが、土壌の浸食や塩性化、自然植生の種類の減少なども砂漠化現象の中に含まれます。
1991年(平成3年)のUNEPの砂漠化の現状等に関する調査によれば、砂漠化の影響を受けている土地の面積は、地球上の全陸地の約4分の1、耕作可能な乾燥地域の約70%に当たる約36億haに達し、世界人口の約6分の1、約9億人がその影響を受けています(図5-5-3)。
こうした砂漠化の原因は、干ばつなどの自然的な原因のほか、草地の能力を超えた家畜の放牧、土地の能力を無視した過度の耕作、薪炭材の過剰な採取、不適切な灌漑による農地への塩分の集積などが考えられます。その背景には、開発途上国の貧困、人口増加、対外債務の増加、貿易条件の悪化など社会的、経済的要因があり、砂漠化問題の解決を困難にしています。
*砂漠化
「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための国連条約(砂漠化対処条約)」の第1条において「乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域におけるさまざまな要因(気候変動及び人間の活動を含む。)に起因する土地の劣化」であると定義されている。
(2)対策
砂漠化対処に関する国際的な取組としては、1960年代末から70年代初頭のアフリカ・サヘル地域での大干ばつを背景とした、国連砂漠化防止会議(UNCOD)の開催、80年代の国連環境計画(UNEP)を中心とする取組がなされましたが、十分な成果をあげるにいたりませんでした。1992年(平成4年)の地球サミットにおいて採択されたアジェンダ21を受けて、砂漠化対処条約策定のための政府間交渉委員会(INCD)が設立され、第5回会合において、砂漠化対処条約(本体及び4地域実施附属書)が「条約発効までの暫定措置に関する決議」及び「アフリカに対する緊急行動に関する決議」の二つの決議とともに採択され1996年(平成8年)12月26日に発効しました。
わが国については、12月10日(寄託後90日目)に発効しました。
平成12年には第4回締約国会議が開催され、条約の効果的な実施のための措置等が検討されるとともに並行して開催された科学技術委員会第4回会合では、早期警戒体制、砂漠化の監視及び評価に関する基準・指標、砂漠化に対処するための伝統的知識、専門家名簿の管理等について議論が行われました。
また、条約に基づくアジア地域の取組として、砂漠化対処のためのネットワークづくり(テーマ別プログラムネットワーク(TPN))の検討が進められ、1999年(平成11年)には「砂漠化のモニタリング及び評価に関するネットワーク」(TPN1)が立ち上げられました。これを受けて2000年(平成12年)に東京で、砂漠化のモニタリングと評価に関する科学技術面での協力の推進を目的として、「TPN1ワークショップ」を開催し、アジア14か国、国際機関等から専門家及び政策担当者約70名が出席しました。
わが国としては、アジア地域における砂漠化対処への貢献と科学技術委員会への支援を念頭に置いた砂漠化防止対策推進支援調査を行ったほか、政府レベルでは、2国間、多国間援助を通じた砂漠化関連プロジェクトの実施、西アフリカサヘル地域における地下水の有効利用を中心とする持続可能なコミュニティ形成を図るための調査、ニジェール河流域における砂漠化に対処するための農業開発等の調査、砂漠化の評価と防止技術に関する総合的研究が行われています。
民間レベルでは、緑のサヘルなどのNGOがアフリカ、中国等で砂漠化対処活動を実施しており、これらの活動に対して支援を行いました。