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第1節 

2 環境保全の具体的行動の促進

(1)事業者による自主的な環境保全活動の促進
 今日の環境問題は、通常の事業活動や日常生活に起因する部分が大きく、その解決のためには、事業者は、規制の遵守や問題への事務的対応にとどまらず、予防的な観点から、環境への負荷の低減等の取組を積極的に行うことが求められます。そして、自主的な環境保全活動を効果的かつ確実に進めるためには、情報開示を進め、透明性・公平性を確保することが必要であり、それらの手法として、環境報告書や環境会計を作成・導入する取組が広がってきています。
 このような事業者による自主的な環境保全活動を促進するため、環境省では、環境報告書に関し、環境報告書ガイドライン(2000年度版)を取りまとめ、発表しました。また、環境会計に関して、環境保全対策に係る投資・費用(環境保全コスト)とそれに対応する効果を把握、分析、公表するための総合的な枠組みを示した環境会計ガイドライン(2000年版)を策定するとともに、環境会計情報の集計を容易にするソフトウェアを提供する環境会計支援システムを構築しました。
 また、事業活動に伴う環境への負荷やそれに係る対策の成果(環境パフォーマンス)を的確に把握し、評価していくことが重要との観点から、環境パフォーマンス指標についての検討を行い、2000年度報告として公表しました。
 また、ISO14001とその国際一致規格であるJISQ14001についての情報提供等を行うとともに、中小企業への環境マネジメントシステムの普及を図るため、環境マネジメントシステム構築融資制度により、事業者のISO14001認証取得及びそれに伴う環境対策投資を支援したほか、中小企業総合事業団による全国各地での講習会開催、システム構築事例収集の作成等を行いました。なお、環境マネジメントシステム審査登録件数は、平成13年2月末現在での国内件数は5,585件となり、世界でトップの件数を維持しています。
 これらのほか、「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用の促進に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」に基づく支援措置など、環境保全に関する各種の金融・税制上の特例措置を講じました。
 環境省においては、いわゆるエコビジネスについて、市場規模及び雇用規模の推計を行いました。その結果、エコビジネスの市場規模は平成9年で24兆7000億円、平成22年で40兆1000億円(年平均伸び率3.7%)、雇用規模は平成9年で69万5000人、平成22年で86万7000人と推計されました。

(2)環境保全型製品・サービスの利用促進
 社会経済システムを環境への負荷の少ないものに変えていくためには、製品・サービスの消費に当たっても環境への負荷を考慮した行動をとることが重要です。このため環境基本法においても、環境への負荷の低減に資する製品等の普及促進を行うことが、国の重要な施策として位置付けられています。
 環境への負荷の少ない製品等の普及を図るためには、製品等に関する環境への評価手法を確立していくことが重要です。このため、製品等による環境への負荷を原料調達、生産、消費・使用、廃棄という一連のプロセスにおいて定量的、科学的、客観的に把握・評価する手法(ライフサイクルアセスメント:LCA)について、関係省庁間及び産学官の連携の下に、データベースの構築や環境影響評価(インパクト評価)手法の検討などの各種調査研究、情報提供等を行いました。
 環境保全に資する製品の普及促進のため、環境省では、平成元年よりエコマーク制度の指導育成を行ってきており、平成12年12月末現在、エコマーク対象商品類型数は68、認定商品数は4,235となっています。
 さらに、日本のエコマーク、アメリカのグリーンシールなどの世界のエコラベルの実施機関が情報交換、基準の国際調和に向けた検討等のために結成した「世界エコラベリングネットワーク」に対し、支援を行いました。
 また、経済産業省においても、平成7年度から国際エネルギースタープログラム制度を実施しているほか、平成12年度からは省エネラベリング制度が制定され5品目のカタログなどに表示を行っています。
 また、わが国におけるグリーン購入(環境への負荷が少ない商品やサービスを優先して購入すること)の取組を促進するため、企業・行政・消費者によって平成8年2月に設立された「グリーン購入ネットワーク」に対し、引き続き支援を行っています。

(3)民間団体等による環境保全のための活動の推進
 近年、欧米諸国を中心として、民間団体による地球環境保全のための様々な活動が活発となっています。わが国においても、国内の環境保全にとどまらず、開発途上国を中心とした海外においても、植林や野生生物の保護などの環境保全活動を展開する民間団体が増えており、これらの活動に対する国民各界の関心も高まってきました。地球環境保全のためには、こうした草の根の環境協力や幅広い国民の参加による足元からの行動が極めて重要であり、特にわが国においては、自らの経済社会活動の見直し、開発途上国への支援強化の両面で民間団体(いわゆるNGO)の活動の強化が必要であることから、これらの活動を支援することが喫緊の課題となっています。
 平成12年12月に閣議決定された環境基本計画においては、各主体の自主的積極的行動のための主要な施策として、「環境保全の具体的行動の促進」を掲げ、「民間団体の活動の支援」を行っていくこととしています。
 環境省では、地域環境保全基金等による地方公共団体の環境保全活動促進施策を支援するため、関連する情報の収集、提供等を行いました。
 環境事業団は、政府の出資及び民間の出えんにより設けられた「地球環境基金」により、内外の民間団体が開発途上地域において行う植林、野生生物の保護等の活動やわが国の民間団体が国内で行う緑化、リサイクル等の活動に対する助成及び人材の育成を図る場所としての「地球環境市民大学校」等を実施しました。このうち、助成事業については、平成12年度において、各方面の民間団体から寄せられた合計822件の助成要望に対し、300件、総額約8.8億円の助成決定が行われました(表3-1-2)。
 なお、外務省のNGO事業補助金及び草の根無償資金協力、総務省の寄附金付郵便葉書等による寄附金の配分(地球環境保全活動に対する平成12年度支援実績:15団体、約0.5億円)及び国際ボランティア貯金*の寄附金の配分(同実績:17事業、約0.4億円)等においても、対象の一部として民間の団体による現地住民参加の環境保全活動が取り上げられ、支援が行われています。
 また、地域住民の参加により策定される構想に基づき、森林の整備等を実施しました。さらに、里山林や都市近郊林について、地域住民等が森林所有者と協定を締結するとともに森林整備等の保全活動を行うことを支援する「郷土の森林保全活動推進事業」を実施しました。

*国際ボランティア貯金
通常郵便貯金の税引後の受取利子の一部(寄付の割合は20%から100%までの間の10%単位で選択)を、開発途上地域の人々の福祉の向上のために寄附していただく貯金



(4)事業者における公害防止管理制度の実施の推進
 工場における公害防止体制を整備するため、特定工場において公害防止に関する業務を統括する公害防止統括者、公害防止に関して必要な専門知識及び技能を有する公害防止管理者等の選任が義務付けられており、約2万の特定工場において公害防止組織の整備が図られています。
 同法による公害防止管理者等の資格取得のために国家試験及び資格認定講習が行われ、現在までの有資格者の総数は、48万6,895人です。

 ア 公害防止管理者等国家試験
 公害防止管理者等国家試験については、昭和46年度以降毎年実施されており、平成12年度の国家試験は、平成12年9月と10月に実施し、合格者数は4,481人です。平成12年度までの合格者数は26万5,179人です。

 イ 資格認定講習
 公害防止管理者等の資格を取得するには、前述のほかに、資格認定講習を修了する方法があります。この制度は、一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者に受講させ、修了した者に、国家試験に合格した者と同一の資格を付与するものです。なお、平成11年度までの資格認定講習の修了者数は22万1,716人です。

(5)各主体のパートナーシップの下での取組の促進
 様々な立場の主体が複雑に関係している今日、持続可能な社会を実現するためには、社会を構成する各主体が相互に連携・協力して環境保全に向けて取り組むことが重要です。このため、環境省では、事業者、市民、民間団体等のあらゆる主体のパートナーシップによる取組の支援のための情報や交流機会を提供する拠点として、国連大学との共同事業として同大学本部施設内(東京)に「地球環境パートナーシッププラザ」を開設しています。また、環境保全についての助言・指導を行う人材を確保するため「環境カウンセラー登録制度」に基づき、平成12年度までに環境カウンセラー2,565名(事業者部門1,624名、市民部門941名)の登録を行い、その資質の向上と相互の情報交流の促進を目的とした研修を開催しました。

(6)環境負荷の少ないライフスタイルへの転換の促進
 地球温暖化問題をはじめとする環境問題においては、国民一人一人が排出する環境負荷物質について特に注目されており、環境負荷の少ないライフスタイルが国民に定着することが望まれています。そのため、環境省では、平成11年7月に指定された全国地球温暖化防止活動推進センターを中心に、普及啓発活動等を積極的に推進するとともに地域住民に自転車の利用を促進するなどにより温暖化防止に貢献する「地球温暖化対策地域推進モデル事業」等を全国的に展開しました。
 地球環境にやさしいライフスタイルを実現するため、「地球環境と夏時間を考える国民会議」報告書を踏まえ、普及啓発を実施しました。

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