前のページ 次のページ

第1節 

1 環境教育・環境学習の推進

(1)社会教育その他多様な場における環境教育・環境学習
 中央環境審議会が平成11年12月に取りまとめた答申「これからの環境教育・環境学習─持続可能な社会をめざして─」において指摘されているように、多様化・深刻化する環境問題に対応していくためには、国民一人一人が人間と環境との相互作用について理解と認識を深め、環境に配慮した生活・行動を行っていくことが必要であり、行政、事業者、民間団体、個人が連携を図りつつ、幼児から高齢者までのそれぞれの年齢層に対して、学校、地域、家庭、職場、野外活動の場等多様な場において、環境教育・環境学習を総合的に推進することが重要です。
 環境省では、小中学生の地域における環境活動を支援する「こどもエコクラブ*事業」を地方公共団体と連携しつつ実施し、平成12年度においては約4,300クラブ、約75,000人の小中学生に対し、環境に関するわかりやすい情報の提供や、全国交流会の実施、GLOBE計画*への参加支援等を行いました。また、「環境学習支援事業」による環境学習プログラムの整備、各種教材の作成・提供等を行ったほか、文部科学省と連携して、国立公園等で子どもたちが環境保全活動や自然活動などを行う「子どもパークレンジャー」事業を実施しました。
 さらに、体験を重視した学習機会の提供、人材育成等関連する施策の充実を図るとの観点から、新たに、地域における環境教育・環境学習システムの構築をめざす「体験的環境学習推進事業」や「シルバー層を対象とした環境教育推進検討調査」を実施しました。
 社会教育における環境保全に関する取組として、文部科学省では、環境問題等の各種の学習機会、実践活動の機会を提供するため、社会教育施設等を中心として実施する地域社会教育活動総合事業を行う市町村に対し、必要な経費の補助を行いました。また、地域で子どもを育てる環境を整備し、親や子どもたちの様々な活動を振興するための「全国子どもプラン(緊急3ヶ年戦略)」において、「子ども長期自然体験村」事業等を実施しました。さらに、大自然の中での長期キャンプ等による青少年の野外教育をモデル的に実施する事業について、都道府県に対し必要な経費の補助を行うとともに、広く野外教育の意義について啓発する「青少年の野外教育体験月間」を実施しました。また、「青少年の地域エコプログラム推進事業」を実施しました。
 国土交通省は、川を活かした環境教育の推進を図る観点から、子どもたちの水辺での遊びを支える仕組みをつくり、自然環境あふれる安全な水辺を創出する「水辺の楽校プロジェクト」を実施するとともに、環境省、文部科学省と連携し、子どもたちの体験活動の場として河川の利用を促進する「「子どもの水辺」再発見プロジェクト」を推進しました。
 農林水産省では、文部科学省との連携により子どもたちの入門的な森林体験活動を促進する「森の子くらぶ活動推進プロジェクト」を実施しました。
 また、省資源・省エネルギー国民運動の推進に当たり、関係省庁において環境問題に的確に対応し、地球環境と調和したライフスタイルの形成に資するための普及啓発等を行っており、国土交通省においては水資源問題についての啓発、経済産業省においては消費者の自主的活動の推進等を図りました。

*こどもエコクラブ
環境省提唱の子どもたちが環境に関する学習や活動を自主的に行うクラブ。各クラブは小中学生数人〜20人と大人のサポーターで構成
*GLOBE計画
1994年に米国のゴア副大統領によって提案された、「環境のための地球規模の学習及び観測プログラム(Global Learning and Observations to Benefit the Environment)」。参加国の子どもたちが観測した気象データをインターネットで送信

(2)学校教育における環境教育
 学校教育においては、環境を大切にし、より良い環境づくりや環境の保全に配慮した望ましい行動がとれる人間を育成するといった視点を重視して、従来から、児童生徒の発達段階に即して小・中・高等学校を通じて、社会科や理科、保健体育科、技術・家庭科などの教科等の中で環境に関する学習が行われています。さらに、平成10年度に改訂された新しい学習指導要領(平成14年度から実施)においても、各教科等における環境に関わる内容の一層の充実を図るとともに、体験的な学習や問題解決的な学習を重視するなど環境教育について改善・充実を図りました。
各学校では、身近な地域の環境についての学習や豊かな自然環境の中での様々な体験活動を通して、自然の大切さを学ぶ学習など各種の取組が進められており、これらの取組を支援し、環境教育の一層の振興を図るため、環境教育担当教員講習会の開催(全国2地区)、環境のための地球学習観測プログラム(GLOBE)モデル校の指定(18校)、環境データ観測・活用事業モデル校の指定(18校)、環境教育推進モデル市町村の指定(10市町)や環境学習フェアの開催などの事業を実施しました。これらの事業においても、新しい学習指導要領を視野に入れた指導方法等の研究が行われました。
 また、環境への負荷を低減するための教科書の使用、施設づくりを通じて、児童生徒の環境教育に寄与しています。平成13年度に小・中・高等学校等で使用される教科書においては、99.6%の教科書に再生紙が用いられています(表3-1-1)。さらに、公立学校において太陽光発電等環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進に関するパイロット・モデル事業(平成12年度41校指定)を実施しました。また、国立学校施設や私立高等学校等の学校施設においても環境に配慮した施設づくりとこれを活用した環境教育を行うための整備を実施しました。



(3)広報活動
 ア 一般広報
 関係機関の協力によるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等各種媒体を通じての広報活動や、広報誌「かんきょう」の配布、広報用パンフレット等の作成・配布を通じて環境保全の重要性について広く国民に訴え意識の高揚を図りました。また、報道機関に対しては、記者会見や資料配布等による発表などを通じ情報提供を行いました。

 イ 「環境月間の実施」
 環境基本法に基づき、6月5日が「環境の日」と定められています。その趣旨は、事業者及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めることにあります。
 「環境の日」を含む「環境月間」(6月)においては「循環社会 捨てずに生かす 新時代」をテーマとし、環境展「エコライフ・フェア」をはじめとする各種行事において、循環型社会の形成に重点を置いた様々な催し等を実施するとともに、地方公共団体等に対しても関連行事の実施を呼びかけ、環境問題に対する国民意識の一層の啓発を図りました。

 ウ 「環境保全功労者等表彰」の実施
 6月5日の「環境の日」には、環境保全・地域環境保全及び地域環境美化に関し特に顕著な功績のあった人等に対し、その功績をたたえるため表彰を行いました。

前のページ 次のページ