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第3節 

2 野生動植物の捕獲・譲渡の規制、生息・生育環境の整備等

(1)種の保存法に基づく各種施策の推進
 「種の保存法」に基づき、各種施策を推進しました。
 絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖事業や調査研究、普及啓発を推進するための拠点である野生生物保護センターについて、平成12年4月に「奄美野生生物保護センター」が、9月に「猛禽類保護センター」がそれぞれ開所し、8か所になりました。
 国有林野においては、希少な野生動植物の生息地又は生育地であり、自然環境の保全に配慮した管理を行う必要のある国有林の区域に、必要に応じて森林生態系保護地域、森林生物遺伝資源保存林、植物群落保護林等の保護林を設定するとともに、これらの生息・生育地の保護管理を適切に行いました。また、保護林のネットワークの形成を図るため、「緑の回廊*」を設定し、野生生物の自由な移動の場として保護するなど、より広範で効果的な森林生態系の保護に努めました。さらに、ツシマヤマネコ等の国内希少野生動植物種を対象とした保護のための巡視を実施するとともに、その生息・生育地等の維持・整備のために必要な調査を行い、調査結果に基づき、生息・生育地及びその周辺の環境の維持・整備等を図る事業を実施しました。

*緑の回廊
森林生態系保護地域を中心に他の保護林とのネットワークの形成を図るため、これらの保護林間を連結する野生動植物の移動経路のこと。野生動植物の移動経路を確保し、生息・生育地の拡大と相互交流に資することを目的として管理を行うことにより、分断化された個体群の保全と個体群の遺伝的多様性の確保、生物多様性の保全を期待している。

(2)保護増殖事業等の推進
 絶滅のおそれのある野生動植物種の保存を図るための保護増殖事業、調査等を引き続き以下のように実施しました。
 1) 平成11年1月に中国から到着したトキ1ペア(友友(ヨウヨウ)・洋洋(ヤンヤン))から、平成12年12月までに3羽のヒナ(「優優(ユウユウ)」・「新新(シンシン)」・「愛愛(アイアイ)」)が産まれ、順調に生育しています。また平成12年10月には優優のペアリング相手として中国から「美美(メイメイ)」が贈られました。佐渡トキ保護センターでは、これら6羽と日本産最後のトキである「キン」の、計7羽を飼育しています(この春の繁殖状況については、平成13年5月10日現在、友友・洋洋ペアから4羽のヒナが誕生し、優優・美美ペアから3羽のヒナが誕生しています。)。
 2) イリオモテヤマネコの生息モニタリング調査や、傷病個体のリハビリ飼育等を実施しました。
 3) ツシマヤマネコの生息地への再導入を目的とした人工繁殖が福岡市動物園にて世界で初めて成功し、1頭の子ネコが産まれました。また、生息状況のモニタリング等を実施しました。
 4) アホウドリの既存繁殖地の環境を維持改善する工事を実施するとともに、新たな繁殖地に個体群を誘致するための事業等を実施しました。
 5) タンチョウについて、冬期の給餌及び生息状況の把握のための調査モニタリング等を行いました。
 6) シマフクロウについて、巣箱の設置及び給餌事業を実施した。また、野外におけるつがい形成促進のためのリハビリ飼育や放鳥等を行いました。
 7) イヌワシについて、個体群の維持が特に困難な地区における、繁殖率の高い地域からのヒナの移入に関し検討等を行いました。
 8) 北海道の希少海鳥(エトピリカ、ウミガラス、チシマウガラス)について、生息状況把握と今後の保護増殖事業の方法についての検討等を行いました。
 9) ミヤコタナゴの生息地において、生息環境の改善、安定化のための事業を実施しました。また、生息環境の監視等を行いました。
 10) イタセンパラについて、生息状況と生息環境の調査及び生息環境の監視等を行いました。
 11) 小笠原の希少植物について、人工増殖の技術開発と自生地への再導入等を実施しました。
 12) 沖縄県北部のやんばる地域のノグチゲラについて、生息状況把握のためにモニタリング、生態・行動圏調査等を行いました。
 13) 奄美の希少鳥類(オオトラツグミ、アマミヤマシギ)について、生息状況把握のためのモニタリング等を行いました。

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