前のページ 次のページ

第1節 

3 自然とのふれあいの現状

 近年、余暇時間の増加や身近な自然の減少及び国民の環境に対する意識の向上等に伴い、自然とのふれあいへのニーズが高まっています。自然とのふれあいは、人が自然環境のもたらす恵沢を享受する基本的かつ具体的な行動であり、人々が自然を大切にする心を育み、人間性を回復するための必須条件です。
 都市などの人工的な環境で生まれ育った人々がほとんどを占める現代社会において、原野や原生的な森林などの自然性の高い地域で、豊かな自然を体験することは人間性を回復するために有効です。また、居住地から地理的にも精神的にも遠く離れた旅先でふれあう山々や海岸などの自然や風景も、人々を日常から解放し安らぎを与えてくれます。
国民がこうした豊かな自然とふれあえる場として、自然公園や温泉地等が挙げられます。

(1)自然公園
 自然公園は、自然環境の保全に資するとともに、野生体験、自然観察や野外レクリエーション等の自然とふれあう場として重要な役割を果たしています。
 自然公園には、わが国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地を指定する国立公園、国立公園に準ずるすぐれた自然の風景地を指定する国定公園、都道府県の風景を代表する風景地を指定する都道府県立自然公園があります。
 平成12年度末の自然公園の数と面積は、国立公園については28か所2,051,179ha、国定公園は55か所1,343,273ha、都道府県立自然公園は307か所1,957,360ha、面積を合計すると5,351,812haとなり、国土面積の約14%を占めています(図2-1-9図2-1-10表2-1-11)。
 また、国立・国定公園の海面の区域内において、海中の景観を維持するため、海中公園地区を指定し、必要な規制を行うとともに、その適正な利用を図っています。平成12年度末までに、国立公園に32地区、国定公園に31地区、合計63地区2,549.8haの海中公園地区が指定されています。
 最近は自然に親しむことに対する国民の欲求の高まりに対応して、自然公園を訪れる人々は増加傾向にあります(図2-1-11)。自然公園全体の利用者数を見ると、昭和50年代はおおむね横ばい状態でしたが、昭和60年代に入ってから徐々に増加傾向をたどっています。平成10年の利用者数を公園の種類別に見てみると、国立公園の利用者数が3億8,102万人、国定公園の利用者数が3億103万人、都道府県立自然公園の利用者数が2億6,466万人となっています。
 わが国は、世界でも有数の温泉国であり、温泉地は国民の保健休養地として極めて重要な役割を果たしています。平成11年度末現在、全国の温泉湧出源泉数は2万6,270か所(うち自噴源泉5,143か所、動力の装置された源泉1万2,714か所、未利用源泉8,391か所)、湧出量は1日換算約384万tに及んでいます。平成11年度の全国の温泉地における宿泊利用者数は約1億3,537万人に達しており、国民の保健休養の場としても親しまれ、自然とのふれあいの面でも大きな役割を果たしています。
 これらの温泉は、「温泉法」により保護され、その適正な利用を図ることとされているほか、温泉を掘削又は増掘する場合、動力を装置する場合には都道府県知事の許可を、温泉を公共の浴用又は飲用に供しようとする場合には都道府県知事又は保健所設置市の市長の許可を受けなければならない旨定めています。
 また、環境省では、温泉の効能や周辺の自然環境が優れ、保健休養に適した温泉地を「温泉法」に基づいて国民保養温泉地として指定しています。平成13年3月末現在、89か所、1万5,628.95haが指定され、自然ふれあい温泉センターや遊歩道の各種公共施設の整備を図っています。







前のページ 次のページ